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「同人ゲームのルールの類似性について。参考とパクリの境界線」

ボードゲーム制作サークル「さいころ結社」の朝日ねこと申します。

Board Game Design Advent Calendar2023
という、ボードゲームのデザインに関する記事を12月25日まで毎日入れ替わりで投稿するという企画の2日目を担当させていただきます。

今回は時々問題になるボードゲームのルールの類似性について僕なりの考えを話したいと思います。
わかりやすく言うと「他のゲームのルールはどのくらい参考にしていいのか?どんな事をしたらパクりって言われるのか?」という事です。
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僕たちさいころ結社のゲームマーケット2023秋の新作「姫と人狼」のルールも正体隠匿の名作「ブラッドバウンド」を参考にして作っています。

姫と人狼 https://gamemarket.jp/game/181658

ブラッドバウンド https://bodoge.hoobby.net/games/blood-bound

もちろん姫と人狼にしかない、オリジナリティやルールのアレンジはありますが、ブラッドバウンドのルールをそのまま使っている所もいくつかあります。

・攻撃をされた人が次の手番になる所
・攻撃を受けたら正体トークンを置く所
・身代わりができる所
・カードの内訳、能力など。

これらの要素は他の人から見て、ルールの盗用だと言われないようにずっと試行錯誤を重ねていました。本格的に考え始めた2年前から要素を沢山付け足したり削ったり、その結果1度は完全にオリジナルのルールの物ができました。

しかしそれは思っていたものではなく面白くありませんでした。
ブラッドバウンドを初めて遊んだ時のようなあの体験をもう一度したかったんです。

パクリ問題に関してはこれまで入念に調べていました。シャドハン、BANG!、ドブル、ハイパーロボット、タイムボム...色々と問題にあがっています。あまりにもルールそのままだと、盗用だと問題になります。
ではどこまでがセーフでどこからがアウトなのか、その考え方は以下の記事が参考になりました。
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「ボードゲームの盗作判断をめぐる4つの立場」https://tgiw.info/2021/04/plagiarism.html?amp=1
他のゲームにはない独自のメカニクスやギミックを流用していれば、たとえテーマやキャラクターが代わったとしてもプレイ感は変わらず、盗作判断は妥当と考えられる。
(「ボードゲームの盗作判断をめぐる4つの立場」より引用)
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「他のゲームにはない独自のメカニクスやギミックの流用」とは何か。最近のゲームで例に出すと、ワーリングウィッチクラフトの「作ったリソースを隣の人に渡してバーストさせる」というのは他のゲームにはない独自のシステムだと思います。そのシステムをそのまま使うと問題になるかもしれません。

ではそのゲームにしかない独自のシステムというのは今後他のゲームで使われる事はないのか。
こちらの記事では「Theマインド」と「ito」に関してこう記載されています。
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アークライト 野澤 邦仁のボードゲームを作るには Vol.02「ゲームの着想7つ道具」https://gamemakers.jp/article/2023_05_12_38799/

『ザ・マインド』最大の特徴である「話せない状況下で、どうやって意思疎通するか」という体験が、『ito』では「お題をどう例え、会話でどうすり合わせるか」
という別の体験(面白さ)に変わっています。これにより、『ito』は『ザ・マインド』とは異なる商品として成立しています。
(アークライト 野澤 邦仁のボードゲームを作るには Vol.02「ゲームの着想7つ道具」より引用)
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他のゲームにはない独自のシステムでも別の体験(面白さ)になればいいのではないか。
悩んだ末ブラッドバウンド独自のシステムに関してはそのまま使う事にしました。

姫と人狼のオリジナルの要素としては
・手札を1人で何枚も使用する事で2人~遊べる様にした。

・カードの能力や構成についてシンプルにした上でオリジナルの役職を追加

がありました。それによって少人数の場合は特にプレイ感が変わっていました。

ブラッドバウンドは
「正体のわからない中で味方を探しつつ敵のリーダーを倒すこと」が目的です。

◾︎姫と人狼はみんなと協力もしつつも
「数枚ある自分の手札でいかに戦うか」
という感じが加わります。

それでもまだオリジナルと言うには何か足りない。あと一つ何かプレイ感を変えるような強力なルールを入れられないか考えていました。

話は変わりますがずっと前から「姫と人狼」というタイトルだけは決まっていました。
しかし人狼の能力は特殊なので、この時偶数プレイの場合人狼はいなかったのです。
姫と人狼というタイトルで人狼がいないなんて変ですよね。
ブラッドバウンドでは人狼にあたる役職の異端審問官は偶数人数の時抜くカードだったのでその様にしていました。

しかしタイトル通りに偶数人数でも無理矢理人狼を入れてみたらどうか...

試してみた所これが面白かった!!とても面白かった!

◾︎「正体のわからない中で味方を探す。しかし味方の中にも裏切り者の人狼もいるかもしれない!」

これはブラッドバウンドには無い体験です。この大きな違いができた事により今回ようやく発売する事を決めました。

それでもやはりブラッドバウンドを遊んだ事のある人はブラッドバウンドのパクリだと思うかも知れません。
でも僕は姫と人狼を作って遊びたかったんです。売れたいとか稼ぎたいとか有名になりたいなんて言う気持ちはありません。もう絶版になってしまったブラッドバウンドを、大人数でないと遊べないブラッドバウンドを、何とか遊びたいという気持ちで作りました。

姫と人狼が面白いのは元になったブラッドバウンドが面白いからです。

ブラッドバウンドのゲームデザイナー、カーレ・クレンザー(Kalle Krenzer)様の作った素晴らしいシステムに敬意を表した上で、ブラッドバウンドとはまた少し違ったルールの「姫と人狼」も遊んで頂けたらとても嬉しいです。

また、ルールの類似性について自分に対しては厳しい目を向けるようにしていますが、僕自身はとても寛容です。ルールが似ていても違ったバージョンの物も遊んでみたいです。
あまり厳しく言及してしまって新しい物が産まれないのは残念だと思います。

今、久しぶりのゲーム制作がとても楽しいです。
他の出展者さんも自分の好きを詰め込んだゲームをのびのびと制作して欲しいです!
ただ、他のゲーム独自のオリジナリティ溢れるシステムを使う時は、少し注意した方がいいかもしれないという話でした。

おしまい。

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