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街にもクマは現れる!宮城県「アーバン・ベア」の出没地点を可視化しました


はじめに

こんにちは。メディア研究開発センター(M研)の石井です。
現在は主にデータジャーナリズムなどを担当しています。

メディア研究開発センターでは、自然言語処理をはじめとした人工知能研究などに取り組む一方、記者の問題意識と、M研の技術を掛け合わせた「データジャーナリズム」にも力を入れています。
今回は、その中の一つの事例として「アーバン・ベア 動くクママップ」をご紹介します。

アーバン・ベア 動くクママップ 2015年のクマ出没地点

近年、「アーバン・ベア」と呼ばれる都市型のクマによる人的被害が全国的に問題となっています。
このアプリケーションでは、11年分の宮城県のクマの出没地点を地図上に表示することで、クマの動きを分析しました。
また、人口密度を重ねて表示することで、人の住む地域にもクマが出ていることを示しています。

このプロジェクトは、朝日新聞社 仙台総局の記者と共同で進めたもので、朝日新聞デジタルに記事が出ています。こちらもぜひご覧ください(有料記事ですが、無料で読める位置にリンクがあります)。

今回の note 記事では、宮城県のクマに着目したきっかけから、アプリケーション開発の流れまでご紹介します。
朝日新聞社ならではの取り組みだと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください!

プロジェクトがはじまったきっかけ

このプロジェクトは、仙台総局の記者とのブレストの中から始まりました。

そこでは、

  • 「アーバン・ベア」と呼ばれる都市型のクマによる人的被害が全国的に問題になっていること

  • 宮城県がクマの出没地点を公開していること

などを聞きました。

そこで、まずは試しに地図上にクマの出没地点をマッピングをすることから始め、議論を重ねる中で、人口密度データとともに可視化するアプリケーションの開発がスタートしました。

データの加工

今回使用しているデータは、人口密度クマの出没地点の2つのオープンデータです。

人口密度データには、2010年、2015年、2020年のメッシュデータを使用しています。
こちらは csv でダウンロードできます。

クマの出没地点は宮城県が公開するデータを使用しています。
開発当時、2012年から2022年のデータが公開されていたので、その11年分のデータを使用しています。

こちらは Excel でダウンロードできます。
PDF じゃなくて嬉しいですね!
でも、喜ぶにはまだ早いです。
地図上にプロットするには、緯度、経度を取得する必要があります。

ここでは、宮城県が公開するデータに記載された県名、市区町村名、地区名から、国土地理院の API によってジオコーディングを行いました。
今回はひとまず、県名、市区町村名、地区名を単純に結合して出てきた地点を出没地点としました(今思うともう少し工夫ができたかなと思うポイントです)。

ジオコーディングに関してはこちらの関連記事もぜひご覧ください。
ジオコーディングの方法に関しては、今後に向けて引き続き調査していきたいと思います。

アプリケーションの開発

アプリケーションは React をベースに、Mapbox GL JS を用いて開発しました。

ベースの地図のスタイルも選ぶことができます。今回は山間部、都市部の違いがわかりやすいように、outdoors という地図スタイルを使用しました。

Mapbox outdoors のマップ

そこに、先ほど作成した人口密度のメッシュデータクマの出没地点のポイントデータを重ねて表示します。

ここで、データを Mapbox Tiling Service (MTS) にアップロードすると、Mapbox GL JS で作成したマップに、簡単に他のデータを重ねて表示することができます。
Mapbox は 公式のドキュメントも充実していて最高ですね!

あとは、少しナビゲーションを追加で作成して、完成です!

アーバン・ベア 動くクママップ 2021年のクマ出没地点

これをみると、人口が多い地域にもクマが出没していることがわかりますね。
また、記事のタイトルにもあるように、川を伝って街中へと行動範囲を広げているようにも見えます。

完成したアプリケーションは、シンプルに AWS S3 にホスティングして公開しました。

おわりに

今回の記事では、昨年公開した「アーバン・ベア 動くクママップ」をご紹介しました。

地図を用いた動的コンテンツが作れると、文字だけ、画像だけでは伝わりづらかったメッセージを伝えることができます。
ただデータをマップに落とし込むだけでなく、そこから新たな発見ができればベストですね。
今後はそのあたりも意識しながら、引き続きデータジャーナリズムにチャレンジしていければと思います。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました!
M研のデータジャーナリズムへの取り組みに、これからもぜひ注目してください!

(メディア研究開発センター・石井奏人)