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叫べ


私はどこのチームも応援していなかった


と、言えば多少の語弊はあるが
それでも間違っていない表現であると思っている。



W杯を見てバスケットボールに興味を持ち
現地観戦へ行くまでにそう時間はかからなかった
すぐに取れるチケットを取りとりあえず現地に走った

知っているのはW杯で目に入った選手の名前のみ
バスケの知識は何も無い
強いて言えばSLAM DUNKで得た知識だけで
私はB1初観戦に1人で挑んだ

結果的にものすごく楽しかった

アリーナの最寄り駅が
ホームチームのラッピングになっており
テンションが上がった
着いたらキッチンカーがおり
どれも美味しかった
アリーナに入ると既に選手が練習している
W杯で見たあの選手もいる ドキドキ

試合が始まる
次々と起こる出来事に何も追いつけない
展開が早い 気を抜くとボールを見失う
誰がどこにいるのかわからない
ただ私は知識がないので知ってる選手が
今このアリーナに1人しかいない
何も分からないので逆に見やすかったかもしれない
その選手を追っていればよかった
贔屓目無しで見てもその選手は大活躍だった

唯一知ってる選手がいたチームが勝ったこともあり
気分のいいまま試合を終えた

何も知識のない私が
これだけ楽しめたことに感動した

楽しかった また来ようと思った



ただ私はこの時
ハマった感覚はあまりなかったのだ


沼に落ちた感覚は1mmもない

好き 楽しい おもしろい また来たい

その感情に嘘は何一つないのだが
この選手のことを深く知りたい
このチームのことをもっと知りたい

そういった感情はなかった

ライトなファンとして時々
ふらっとバスケを見る人になりそうだなぁ

そんなことを考えながら帰路に着いた




初観戦の後も何度か会場に足を運んでいる

10月中旬に初観戦をし
そのあとも何試合か観戦した
千葉ジェッツ、横浜ビー・コルセアーズ、宇都宮ブレックス、アルバルク東京、等々
いろんなチームを見た いろんな選手を見た

でもこの時もまだライトなファンだった

それでもバスケを見るのは楽しかった
それでいいと思ってた
なんでも熱中しやすい自分が
ライトに長く好きでいられそうな趣味を
見つけられたと思った

悪くなかった 満足していたのだ




11/5
初めてブレックスのホームゲームを見に来た


ブレックスの試合はその前にも一度見ている
A東京のホームゲームであったため
代々木第一体育館だった
(余談だが私はこの世の体育館で1番ここがすき
12年分の思い出が詰まった場所だ)

スポーツ全般に詳しい友達が
"ブレックスは全国どこにでもファンがいる
熱心なファンが多いイメージ"
と言っていた

確かに代々木にたくさんのファンが来ていて
驚いた記憶がある
私はライトなファンなので
本気で応援してる方々との
熱の温度差に耐えられるか不安になった



結果的に私はこの日の試合を

今まででいちばん楽しかった
と試合後のinstagramに記している


何回か観戦した中で
当時1番心が動いた試合だった

前半ずっと負けており
後半でようやく追いつき追いつかれ
取って取られてのゲームが続く中
残り数秒でまた追いつかれても踏ん張り
ギリギリでブレックスの勝利

私はこの日初めて声出し応援をした
気付いたら叫んでいた
そして最後のシュートが決まった時に
ガッツポーズをして立ち上がっていた
アリーナ中が同じように歓喜で立ち上がっていた
今まで感じたことの無いアリーナの一体感


恐らく私はこの日にブレックスを好きになっていた

でもアリーナの熱に侵されただけな気もしていた
数日経てばこの気持ちも落ち着くだろうと思った
どこかで冷静な私もいた

沼に片足を突っ込んだ気はしたが
片足は地上で踏ん張っている


自分の心から目を背けた
また何かにどハマりするのが怖かったのかもしれない

目を背けながらも
楽しかったのでまた来たいなぁ
と思いながら帰路に着いた





12/20
2度目の宇都宮ブレックスのホームゲーム

私がW杯を見て気になった選手は
富樫勇樹 比江島慎のふたりだった

富樫勇樹と比江島慎がまとめて見れるこの試合
お買い得だなぁという気持ちでチケットをとった



ただ私は悩んでいた
どっちのチームを応援すれば良いのだろうか

私はふたつのチームのFCに入っていた
つまりどちらのファンでもある

ただ沼にハマったと自認してないため
どちらのファンでもないのである

富樫勇樹のファンであり
比江島慎のファンであった

だがこの時点では
千葉ジェッツのファンでなければ
宇都宮ブレックスのファンでもなかったのだ



考えるのがめんどくさくなったので
郷に入っては郷に従え
と先人の言葉を聞き
私はその日ブレックスのファンとして
日環アリーナへ足を運んだ


試合の結果は
78vs65で宇都宮ブレックスの勝利

この日の感想は
富樫勇樹が怖すぎる と
ブレックス勝ててよかった!!!
なのである

見てわかる通り
完全にブレックスファンの感想である

ただ私はこの時もまだ
宇都宮ブレックスのファンである事を
認めていないのである


郷に入っては郷に従え、を
上手く実行できたな🎶くらいのテンションだ


今考えるとなぜ未だに
ブレックスのファンになることを抗ってるのか
おもしろくなってくる
不思議な人だ





私はこのあとも色んな試合を見に行った

ウインターカップの決勝戦で泣き
琉球vsA東京、宇都宮vs長崎 等々
たくさんの面白い試合を見た

だが私はまだバスケ観戦にはハマっているが
推しのチームは見つからないなぁ、と
そんなことを呑気に考えていた


(ただこの間に小川敦也のユニを買ってるのである
いやもうブレックスをほかのチームより
ちょっと好きなことに気付いてないの私だけでは?)



来たる2月14日


街はバレンタインデーに浮き足立っていた
か、どうかは分からないが
私はこの日 運命を変えられた

いや、既に変わっていただろう運命に
やっと気付いただけなのかもしれない

それでも私はこの日を一生忘れないし
私はこの日を"私がブレックスを応援し始めた日"と呼ぶ

since.2024.02.14~

今この世で前略プロフィールが流行っていたら
確実に私はこの文言を記載しただろう
(前略プロフィール誰にも通じなそうですね)




仕事終わりに船橋アリーナへ向かった


私はこの日 ブレックスのユニを着ていた


どこのチームも応援してないと言っていた私が

郷に入っては郷に従えと言っていた私が


この日 ブレックスのユニを着ていたのだ


もうこの時点でお察しなのだが
水曜ゲームのこの試合
その前の土日に私はブレックスの試合を見ていた
その余韻を引きずっているから…と言い訳をしていた

誰に聞かれるでもない言い訳

自分自身にする言い訳

この世でいちばん無意味である


試合が始まった
絶好調のスタートダッシュ
前半を終えた時点で点差を含めて
勝利を確信していた

ハーフタイム中に
天皇杯いいチケット取りたいなぁとか
対戦相手どっちだろう……とか
完全に勝ったつもりでいた


3Q始まった瞬間
ハーフタイム中の浅はかな考えをしていた自分を
殴りたくなった


本当の試合はここからだったのだ


怒涛の追い上げ

千葉ジェッツに富樫勇樹あり

そして千葉ジェッツには富樫勇樹だけではないのだ
痛いほどよく知っている
ブレックスの試合と同じくらい
私は千葉のホームゲームに通っていた
若手からベテランまでいい選手しかいない

恐ろしかった

対戦相手として見る千葉ジェッツは
恐怖以外の何者でもなかった


この後の試合の記憶は私には無い

おそらくブレックスを応援してる人 全員
この後の記憶は無いだろう



気付いたらアリーナを去り
駅のホームに着いていた

駅のホームは真っ赤だった
勝利に喜ぶ笑顔で溢れていた

実際にはそんな事ないのかもしれないが
私にはこの時 真っ赤な笑顔しか目に入らなかった




気付いたら電車で泣いていた


泣きながら
私はinstagramを開いた


私はその時々の感情や出来事をストーリーに
文章でザッと吐き出すことを結構頻繁にやってる

日記のようなものだ


"悔しすぎる悔しすぎるまじで悔しすぎる"
"こんなに悔しいと思ってることに驚いている"
"私はブレックス推しだったんだな……"


気付くのが遅すぎる

おそらく失ってから
ものの大切さに気付くタイプなのだろう


大抵の事は気付いた時にはもう遅い


だがありがたいことに
今回は遅くないのだ

だって彼らはまだ
バスケットをしているのだから


そしてまだシーズンは終わってないのだ



何も遅くない
これからだ



私はこの日
宇都宮ブレックスのファンになった








過去について調べて
"この時好きだったら……"と思うのは
これはもうオタクの性である

だがどんだけ後悔しようがそこは覆せない

過去には戻れないし
過去の私に勧めたとて
好きになるかも分からない


私がハマったこの瞬間(とき)が
私が宇都宮ブレックスを好きになる
最速で最高の瞬間だったのだ



負け試合がなんだ

勝ったとて記憶に残らない試合なんて
この世にはきっとたくさんある




あの日のブレックスは
天皇杯準決勝で負けたという記録しか残らない

だがあの日のことを私は今後一生忘れない

あの日の彼らの悔しそうな表情を一生忘れない



だからこそ
私は彼らの笑顔が見たくて応援する


悔しい表情なんて思い出せないほど
彼らには笑顔でいてほしい
幸せでいてほしい


だからこそ勝ってほしい


応援し始めて2ヶ月のファンに出来ることなんて
何も無いのだ



だからこそ
私は時間が許す限り
彼らのいる場所に赴き
声を枯らすまで叫ぶんだ



GO! BREX!





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