MMORPGにおける狩場問題と解決策の提案

狩場問題とはすなわちプレイヤー同士の縄張り争いです。
フィールドで MOB を狩って経験値を稼いだり、レアモンスターのドロップアイテムを狙うタイプの MMORPG の場合、フィールドが有限である以上稼ぎの良いエリアは限られていますし、それぞれのエリアにしても常に希望するプレイヤー全員を受け入れられるキャパシティがあるはずもなく、人気エリアであればなおのこと狩場争いを避けて通れません。

基本的には事前調査で狩場被りがないことを確認し、バッティングしたらしたで早い者勝ちで占有権を主張して収まるものですが、世の中お行儀の良いプレイヤーばかりではありませんので、数に物を言わせての長期独占だったり乱入や割り込みなどの嫌がらせが発生する場合もあります。
それはそれで MMORPG の醍醐味のひとつと言えなくもないのですが、そうは言っても精神的モヒカン肩パッドの方でもない限り、トラブルに遭遇して良い気分になるはずもなく、狩場争いなどしないで済むならそれに越したことはありません。

近年ではその対策としてか偶々か、ID と呼ばれるインスタンスコンテンツがトレンドとなっており、プレイヤーが相互に隔離されることで獲物の奪い合いが起こらないゲームデザインが目立ちます。
残念ながら、完全に好みの問題になりますが、私が新作 MMORPG の情報を集めていてがっかりするパターンとして、「また ID か」は「またアクションか」に次いで堂々の二位です。ID は数あるコンテンツ群のひと枠の扱いであれば全然歓迎できるのですけれど、メインフィールドと断絶される構造的理由から、どうしてもゲーム内でミニゲームをさせられている感覚になるので主軸に据えられるのは嬉しくないのですよ。

そんなわけで、フィールドで黙々と雑魚を狩り続けることは一向に平気でも同じ ID を何度も周回することには苦痛を感じる私のような変人が他にどれだけいるのかわかりませんが、そんな奇特な同胞たちのために狩場問題への解決策を提案させていただきましょう。

その名もインスタンスフィールド

まあ、結局インスタンスなんですけどね。
別々の群れを一緒にしたら争いが発生すると言うのであれば、そりゃ隔離してしまうことこそが最善の解決方法ですよ。ただしこの案ではインスタンスにコンテンツとしての役割を与えないのが肝です。

あるプレイヤーがちょっとレベリングでもしようかと、仲間と連れ立って適当な狩場へ赴きました。

そこそこ美味しい定番の狩場なので、当然他のプレイヤーもいるにはいるのですが、到着してみると現地では誰も狩りをしておらず、周囲の MOB も放置されています。

それもそのはず。通常フィールドでは MOB を倒したところで経験値もドロップアイテムも手に入りません。運悪く絡まれたり、絡まれた人を助けようとしたり、護衛クエストでの安全確保だったり、ものすごく手持ち無沙汰だったなどの理由でもない限り、わざわざフィールド MOB と戦おうとするプレイヤーはいないのです。

代わりに多くのプレイヤーが集まっている一角があり、その中心には珍妙なオブジェクトが設置されていていました。オブジェクトの周りを観察していれば、突然姿を消す一団や、逆に湧いて出る一団に気づくでしょう。少し離れたところには、手持ちのアイテムを販売状態にして放置されているキャラクターもいるみたいです。

パーティリーダーがオブジェクトに近づいて登録手続きを済ませると、整理番号が発行されました。これでインスタンスフィールドへの待ち行列に並ぶことができましたので、雑談でもしながら待つことにしましょう。オブジェクトを調べれば、自分たちの待ち順もわかります。不人気な狩場であれば、いちいち待つ必要もなかったのですが、こればかりは仕方がありません。

やがて自分たちの番が回って来て、無事にインスタンスフィールドに転送されるのでした。

転送された先の景色は先ほどと変わりません。多少色味が違ったり、景色の奥に周囲を取り囲む光の壁が見えるかもしれませんし、仲間以外のプレイヤーキャラクターの姿はどこにも見あたりませんが、MOB は普通に湧いているので狩りをする分には問題はありません。
それにここで MOB を倒せば倒すほど、自分たちが所属する組織のこの一帯への支配率が上がって、通常フィールドの MOB が弱体化したり、流通網や経済へのボーナスが得られる可能性が高まるのです。

それでは制限時間もありますので、さっさと誰にも邪魔をされない狩りを始めましょう。もしうっかり全滅したら、突入してから獲得した経験値の一部を没収されて強制排出されますので、どうかくれぐれもご安全に。

インスタンスフィールドでは通常フィールドと同様に MOB が湧きます。システムのリソースの一部を占有することになるので最大で数時間程度の制限時間を設ける必要はあると思いますが、強制されたクリア目標のようなものは設定されていません。徹頭徹尾ハクスラレベリングとドロップアイテム収集のための空間になります。たまに狩りの最中に抽選 POP の NM が湧くことくらいはあるでしょうけれど。

もしかすると、何かのフラグが立っていて、突入時にいつもとは違うイベント用のインスタンスに飛ばされる事故が起きるかもしれません。あるいはシステム側の思惑とは関係なく、狩場としては人気がないのに景色だけは良いエリアのインスタンスが、身内だけのスクショ撮影会に勤しむプレイヤーで賑わうかもしれません。

結局のところ、このアイデアは純粋に狩場争いの問題を解決するためのものなので、単体では到底ゲームとして成立しません。一方で他の要素を阻害することもないので、汎用性は抜群であると言えます。また、たとえゲーム自体が過疎化してプレイヤーが激減しても、同時に生成されるインスタンスが減るだけなので、新たな問題を生み出すこともありません。

いつの日かこのアイデアを取り入れた、過度なアクション要素のないハクスラ MMORPG を遊んでみたいものです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?