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俳句の時間 2022.02.18

昨日は春の雪が一晩で48センチ積もったとか、明くる今朝はそれほど積もってなくてほっと一息とか、とにかく雪で一喜一憂する土地柄を、西から戻ってきた女がとても豊かに感じるのは、やっぱり俳句を始めたせいだろう。

意外にもよく晴れたので、昼食は母と近くのレストランに出かけた。ガレージ前の雪かきをして少し遅くなったから、時計は午後1時を回るころで、朝食から6時間以上過ぎていた。日替わり定食の葱焼売ラーメン、たらこレタスチャーハン、餃子のセットが、食品サンプルの群れとは別格の場所に置かれていた。窓際の席に案内されて、母とメニューを見ながらあれこれ迷う。五目あんかけそばにしようか、鳥の甘酢あんかけか、外食って何もしなくて楽でいいだけじゃなくて、こうして選ぶのが楽しいんだよね、などと言いながら、結局日替わり定食になった。

あれこれとラーメン選ぶ春の昼 要

そして我々は罠にかかったのだ。

日替わり定食なのになかなかやってこないので、窓際の私は雪国の空を眺めた。先ほどまでの青空があっという間に白く塗りつぶされて、今にも雪が降ってきそうだ。なんて分厚くてでかい雲なんだ。でかいというより、雲じゃない空がないじゃないか。そう思って、夏の入道雲のスケールなんて実はまだ序の口なのだと、従来の季語の解釈にコペルニクス的回転をかけて待ち続けた。あんまり空腹でひねくれていたのかもしれない。

ようやく来た日替わり定食を、母と元気よく食べ始める。ここはラーメンのうまさには定評があって、他もまあまあ安心して食べられる。伸びる前にとラーメンを平らげて、味変で餃子を一つ、たらこレタスチャーハンに差し掛かるころに、軽い溜息をついた。なんと総量の半分くらいで限界が来てしまったのだ。普段、炭水化物に炭水化物というような選択はしないのだが、空腹が判断を誤らせた。空が白い雪雲で塗りつぶされてしまったように、今日の私たちのプレートは炭水化物一色。さっきまで、全体的に塩分多めだからお新香の代わりにわらび餅ならもっと女の人が喜ぶのにね、なんて話しながらスプーンを口に運んでいたが、今は半ば感覚を閉じながら黙々と食べ続ける。塩気に飽きた口にお冷を流し込む。そうだ、日替わり定食なんて、営業の男の人が満足できる量が最低限保証されているものではないか。中老年の女が元気に平らげられるものではないのだ。

「野田ともうします。」的なとっても無駄な思考を巡らせながら何とか食後のコーヒーにたどり着き、一休みもせずに卓を立った。うちの人なら今の量楽勝やわ、と軽口をたたきながら、腹ごなしに夕食の買い出しに行き、腹ごなしに久しぶりにnoteを更新する。

ここまでお読みのあなた、とっても無駄な時間を共有してくれてありがとう。

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