無関心と無知が人を殺す

文：竹中杏菜

これから主張したいことは、
新宿駅を使う人間は想像力と優しさを持って生きろ、これに尽きます。

何様だと思うだろうし、わたし自身そう思う。
が、とりあえずお許しください。

先日、新宿駅のホームで若い男性が嘔吐し倒れていました。

まあ普通に酒飲んで吐いたのかと思うわけです。

しかし、よく見ると痙攣している。彼は微かに声を上げて泣いていて、苦しそうでした。

急いでKioskの店員さんに声をかけ、駅員さんはどこにいるか聞きました。
が、「私たちも呼んだんですが来てくれないんです。」

忙しいのはわかりますが状況が状況ですから、対応していただく為に駅員さんを探し、起こっている事態の旨をお話しすると、もう既に報告されていたようで

「どうせ酒飲みで倒れてるから大丈夫だ」と軽くあしらわれました。

同じように報告しようと近くにいた女性が、
でも痙攣してますよ！と事の重大さを伝えると、「だから今応援呼んでるから！」と怒鳴られる始末です。

いや〜〜〜〜忙しいのわかるけどその対応は完っ全に有り得ないです。信じられなさすぎて愕然としました。本気で腹が立ってしまって手が出そうになるぐらい。絶対出しませんが。

その後に応援で来た係員も急ぐ様子は勿論ありませんし(勿論ってなんぞって感じですが)、
倒れている男性を上から見て悠長に「あ〜」とか言ってるだけなんです。どうします？なんてお喋りしてるだけなんです。3人もいたのに、誰一人焦る様子なんてなかった。

駅員さんを待ってる最中も、多くの人が横を通り過ぎるなり「うわぁ」「すげえな」って露骨に嫌悪感を表す代わりに、何事もなかったかのように去っていくだけです。

私ではどうしようもありませんから、早めに対応してあげたほうがいいと思いますとお節介(いやここでは必要であったと信じたい)を言って去りました。あの男性がその後にどうなったのかわかりません。

色んな感情が入り混ざって、帰り道は悔しさと悲しさで潰れそうでした。

痙攣だって見たらわかるし、嘔吐物にも酒が含まれてない事ぐらい見れば誰だってわかる。夕方の17時前だから、時間帯から考えてお酒で潰れたとは考えにくい。

リュックは体に被さって確認できませんでしたが、ヘルプマークを付けていた可能性だってあります。

医療従事者の母曰く、脳卒中やてんかんなどの脳からの障害があった場合、嘔吐などの症状が見られるそうです。

緊急性があるかないかの判断を応援を呼ぶ係員が誤ってしまっては、その後の人命に関わります。全く冗談ではなく。

新宿駅は乗降者数世界トップのギネスを持つぐらいですから、そこで働く駅員さんが世界トップクラスに忙しいことは理解できます。日々歌舞伎町やゴールデン街で飲みつぶれたサラリーマンの介抱をしてくださっていることも容易に想像できます。

しかし世界一利用者が多い駅で、治安の決して良いとは言えない新宿駅で、毎日毎日トラブル対応に追われる駅員さんだからこそ、素人目にもわかる誤った対応をして欲しくないと思ってしまいます。

もしも近親者の身に何かあった時、人がいるからという理由で助かるなんていう見込みは全くないと、身を持って感じました。

駅員さんの対応だけでなく、通り過ぎていった人たちも嘔吐＝酔っ払いという認識を私を含めて持っていたでしょうし、その上新宿駅ですから尚更です。

しかし、です。何度も繰り返しますが、いくらその光景に慣れていても日常的にメルトダウンしてる人たちと体調不良で倒れている人の区別ぐらいつくはずです。少なからず今回に限って言えば。

駅員さんや周囲を通り過ぎていった人たち、私も含めて、もっと世界に優しくあるべきだと思いました。

優しさに"べき"なんてつけるのは押し付けがましいですが、ここでいう優しさは「アンテナを張る」ということ。

座りたそうな人（お年寄りや怪我をしている人、なんか疲れてそうな人など)に席を譲るとか、道に迷ってそうな人に声をかけるとか。

酔っ払っていたとしても、嘔吐物が喉に詰まって窒息死するケースなんてめちゃくちゃありえます。

こちら側の「困っているかもしれない」という想像力が、少しと言わず大きな助けになるかもしれません。

もし断られたらとか、怪訝な顔をされたらと考えてしまいますけど、いずれも死にゃしません。そういうのはやられた後に考えます。

それともう一つ、悔しさがありました。
実際に体調不良者を目の前にした時、助けられる術を何も持っていなかったことです。

救急救命の資格もありませんし、気道の確保の仕方も知りませんし、心肺蘇生法も正しくできる自信はありません。

ひたすら駅員さんを待つばかりで、何もできませんでした。

駅員さんを責めまくりましたが、私にも何もできなかったんですから、実際こんなこと言う資格はなかったのかもしれません。ごめんなさい。

待ってる最中に救急車を呼んでしまおうか考えましたが、駅内の管轄だから対応の仕方が変わるのかもしれないとかつまらんことを思って、何もしませんでした。

実際に電話の一本でも掛けて、駅内ですと伝えれば正しい対応を電話越しに仰ぐことだってできたはずです。
私自身に対する反省も多いです。

散々言いましたが、私を含めて社会の中にいる人たちに何かあった時、支えるのも私たちです。もし大事な人が倒れていたら助けて欲しいのと同じように、誰かが倒れていたら手を差し伸べられる社会でありたいなあと思いました。
人の命に関わる時は尚更です。

なが〜〜い割に要点の掴みづらい内容ですが、そんなことを思いました。
そして散々駅の男性の生死に言及しましたが、その後は知る由もありません。本当に今彼が健康でいることを願うばかりです。