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わたしたちが国産麻炭をつくり続ける理由

麻炭は麻処さあさが暮らす、岐阜県旧春日村で焼いています。
旧春日(かすが)村は炭焼きと薬草でなりわいをたててきた山あいの小さな地域。
麻炭やきをはじめて18年。麻炭にこめる想い、麻炭を通じて伝えたい想い、
わたしたちが麻炭焼きをつづける本当の理由をつづります。

消臭、調湿効果はもちろんのこと、磁場の調整、場の調和も高める麻炭

「麻=麻薬ではなく、地球環境を守る有用な植物」を伝えるアイテム”麻炭”

私たちが山暮らしをはじめたのは2003年。炭焼きを始めたのは山暮らしをはじめて3年後の2005年。麻炭やきをはじめて18年たちます。
はじめた当初はまだ「麻=マリファナ、麻薬」というイメージが主流だった頃。そんな中で、「愛・地球博」の開催にあたり、「麻ヘンプ」が地球を救う、地球環境を守る有用な植物であることを伝えたいという企画がもちあがりました。

これらを伝えるアイテムとして、日本の暮らしを支えてきた大切な資源である「炭」に注目をし、「麻炭」を作ることができないだろうか?そして、作るなら「国内でつくりたい」という企画でした。

私たちはすでに旧春日村に移住をしていたので、すぐに近所の古老たちに相談。
さっそく試しに焼いてみよう!ということになったのです。
フットワークの軽さ、まずは「あるもので工夫してやってみよう」という古老たちの柔軟な思考、姿勢がさあさの原点である「麻炭」を創りあげたのです。

稲刈りが終わり、冬が始まると、本格的に麻炭焼きシーズンになる

季節仕事が本来の暮らしの流れ

現在は季節に関係なく、仕事があり、仕事内容においても季節に左右されることは少ないですが、炭焼きをなりわいにしていた頃は、季節ごとに仕事がありました。
旧春日村の暮らしは、稲刈りを終えると、山にこもり炭焼きをする、という毎年のルーティンがあったのです。
わたしたちも同様、稲刈りがおわり、冬が始まると本格的な麻炭焼きシーズンが始まります。これは実は理にかなっていて、冬は雪がふったり湿度が高く、山火事の恐れが低い。逆に春や夏は乾燥し、山火事の危険性が高くなる。また、冬に炭を焼き、焼いた炭をそりにのせて山から下ろすという作業においても、雪の季節に炭焼きをする利点だったそうです。

安心なものを創りたい

原料である麻茎はもちろん日本産。無農薬、化学肥料を一切使わず、育てられた麻です。本来、麻は農薬や化学肥料を使わずに育てられる植物です。
山奥などやせた土壌のような地域では、麻が盛んに栽培されていました。旧春日村も同様で、どの家庭にも麻畑があり、春に種まきをし、夏に収穫、冬に麻糸をつくり、機織りをして、麻布を織っていたという歴史があります。
90代の古老たちは、「昔は麻畑で遊ぶとな、親に怒られたもんじゃ」と笑います。麻畑で子どもたちが遊び、麻に触れたり、ぶつかったりすることで繊維が傷つき、傷ついた部分が糸にしたとき切れやすくなるから、とお聞きしています。
それだけ、麻が身近なものだったのです。


生きるチカラ

麻炭やきを通して、古老から教えてもらうことがたくさんあります。
焼き方はもちろんのこと、炭焼きをしていた背景、暮らしぶり、暮らしを通じて先代から受け継いできたことなど、伝統の技・知恵・暮らし方を古老から直接お聴きできることはとても貴重なことだと思っています。また、実際に技を伝授してもらうことも多く、これらのことは「生きるチカラ」に繋がると感じています。

現代の私たちの暮らしはまさに「消費社会」
わたしは移住するまで、「無いから買う」「壊れたから買う」という、まるで消費行動しか選択肢がないという生活でした。買う以外の選択肢を知らなかったのです。それはまさに「思考停止」だったと実感しています。



古老との暮らしを通じて、「ないものは作る」「あるもので工夫する」「壊れたら修理する」ということをたくさん見聞きし、実体験してきました。
例えば、畑で収穫した大根をしばりたい、でも縛るひもを忘れてきた、という時。「ひもを忘れたから家に帰って持ってきます」という私に古老は「ちょっと待っとれよ」と、となりの草むらから強い草を刈って、わら縄を編むようにサッとひもをなってくれたのです(作ってくれたのです)。古老にしたら当たり前の行動ですが、便利すぎる暮らししか知らない私には衝撃でした。このようなエピソードがたくさんあるのです。
古老たちがもつ「生きる術(すべ)」が本当に素晴らしいのです。

「ないものは作る」「あるもので工夫する」「壊れたら修理する」これらができることは消費社会に屈しない「生きるチカラ」につながると実感しています。

麻炭は真っ黒ではなく、炭黒色
うまく焼けると、カキンと高い音に仕上がる

わたしたちができること

古老から学ぶことをみなさんに全てお伝えすることには限界があります。ワークショップもしていますが、限られた時間内でお伝えすることは難しく、また、うわっつらのことではなく、「生きる」という本質についてお伝えしていきたいと考えています。しかし、私たち自身もまだまだ発展途上であり、古老のような厳しい時代を生きてこられた方々とは重みも体験してきたこともまったく異なります。
そのような中、「麻炭」を通して、私たちが学んでいること、受け継いでいることをひとつでもお伝えすることが、私たちが旧春日村に暮らす意味であり、私たちの使命なんじゃないかなと思っています。



日本人のあり方を伝える

日々、古老たちと暮らす中で、感じていることがあります。
「ありがとう おかげさま おたがいさま」という言葉が日常的に使われています。
わたしたちの暮らしはとても便利です。でも豊かでしょうか?
古老との暮らしから「便利さと豊かさはちがう」と実感しています。
私たちは便利な暮らしに慣れすぎてしまって、でも心はいつも満たされないような感覚ありませんか?
モノにあふれ、情報にあふれ、すべてが便利。なのに、心が満たされていないような、この気持ちってなんでしょう。
言葉にしてしまうと軽々しくてちょっと違う気がしますが「ありがとう おかげさま おたがいさま」という感謝の気持ちで満たされることが「心豊かに暮らせる」ことに通ずるのではないかなって、日々、思います。

私たちが暮らす旧春日村美束(みつか)地区。この奥には一軒も民家がない。
水がとてもきれいで豊かな地域でとても暮らしやすい

日本人は支え合い、助け合い、お互いに感謝しながら生きてきました。わたしたちはいまこそ「感謝する」ことを思い出し、「心豊かな生き方」を取り戻すときなのではないでしょうか。
これからも、旧春日村での暮らしを通じて「心豊かな生き方」をお伝えしていきます。

そして、なにより大切なことは「自分自身の心身が健康であること」
さらに、自分の目の前の人を笑顔にできること、幸せを共有できること、なのではと思います。

その輪(和)が広がって、世界平和につながると信じています。

空を見上げ、「空がきれいだ」って思える心の豊かさと、幸せを実感できる心の美しさと謙虚さを 意識していきたいですね♡



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