見出し画像

こういう楽しみ方はいかが?

クラシック音楽の楽しみ方はいろいろあると思いますが、その1つに「聴き比べ」というのがあります。
1人の作曲家の作品を年代別に聴き比べたり、1人の演奏家の変化を辿って聴き比べたりするのもおもしろいでしょう。
また、オーケストラ演奏の同じ曲を別の指揮者・別のオーケストラで聴いてみるのも興味深いと思います。

今回は、同じ曲を演奏楽器や演奏形態の違いで楽しんでみました。
曲目は、J.S.バッハ作曲の『ゴルトベルク変奏曲』です。

元々は『2段鍵盤付きクラヴィチェンバロのためのアリアとその変奏曲集』(ドイツ語: Clavier Ubung bestehend in einer ARIA mit verschiedenen Veraenderungen vors Clavicimbal mit 2 Manualen)という表題にある通り、チェンバロでの演奏曲ということになります。

バッハに曲を依頼したカイザーリンク伯爵(※1)は、こういう演奏を聴いていたのだろうと想像することができる2段チェンバロでの演奏がありました。

いわき芸術文化交流館アリオス(いわきアリオス)
公式YouTubeチャンネルより
https://www.youtube.com/watch?v=Uq1KNGY2__U
J S バッハ:ゴールトベルク変奏曲/山名敏之 J.S.Bach:Goldberg Variations/ YAMANA Toshiyuki ,cembalo with a 16 feet stop


ピアノでの演奏にも名盤がありました。

J.S.バッハ: ゴールドベルク変奏曲 BWV988 グレン・グールド(ピアノ)
録音:1981年4月、5月 ニューヨーク、30丁目スタジオ

1956年に同作品で鮮烈なアルバムデビューを飾ったグレン・グールドですが、26年を経て再びこの曲を録音。デビュー盤の演奏はネットを探せばすぐに出てくるので、再録音盤と聴き比べてみるのもいいと思います。
どちらも先のチェンバロの演奏とはまるで違う印象で、チェンバロが静か・穏やか・癒しであるとすれば、グールドのピアノ演奏は賑やか・活発・楽しみに満ちていたように感じます。勿論、最初と最後のアリアはゆったりと落ち着いた雰囲気で、心の奥深くにまで響いてきます。

『ゴルトベルク変奏曲』はこの他にも、ギターソロや弦楽三重奏、管楽器アンサンブルでの演奏などがあり、多彩な顔を見せてくれます。

この曲が作られたのは今から約280年前。日本でいえば江戸時代中期、徳川吉宗の時代です。遠い昔のような気もしますが、バッハの曲はまったく色褪せることなく現代にも生き続けています。
オリジナルは勿論よいのですが、バッハの曲はジャズやロックなどさまざまなアレンジも快く受け入れてくれているように感じます。耳にする機会が多いのもそういうところに理由があるのでしょう。


ここで、現代の『ゴルトベルク変奏曲』を1つご紹介します。

J.S.BACH : THE GOLDBERG VARIATIONS   原田陽・佐藤芳明・新倉瞳
Arrangement for trio by 原田 陽 Akira HARADA
Recorded on 6-9 Dec. 2021 at TUPPENCE HOUSE I’S STUDIO
Mixed on 19-21 Jan. 2022 & Mastered on 23 Feb. 2022 at TEMAS

ヴァイオリン・チェロ・アコーディオンのトリオによる演奏です。
ヴァイオリンの原田陽氏が弦楽四重奏用にアレンジしたゴルトベルクがあり、その内声部(2nd ViolinとViola)をアコーディオンの右手と左手で担当するという少し変わった形で録音されたものです。
ヴァイオリンとチェロはガット弦を使い、弓はバロック時代のものを使うという緻密なこだわりを持ちつつも、バッハの時代にはまだ存在しなかったアコーディオンとのアンサンブルを試みる大胆さを併せ持つ、現代ならではの『ゴルトベルク変奏曲』になっています。

そして何より「現代ならでは~」といえる所以は、生演奏を聴けるという点にもあります。このCDは2022年6月15日に発売され、それに伴い発売記念コンサート(※2)も行われました。これが好評だったため、第2弾として近々各地3カ所にてコンサートの予定があります。まさに現在進行形の『ゴルトベルク変奏曲』です。

J.S.バッハ ゴールトベルク変奏曲
全音楽譜出版社

ちなみに我が家にも譜面はあるのですが、弾くためというより、眺めながら聴くためにあるという感じです。全曲弾くのは本当に難しいと思います。
だからこそ、素敵な演奏を届けてくださる演奏者の皆さまには感謝!です。


(※1)カイザーリンク伯爵・・・病気がちで不眠症に悩まされていたため、穏やかで明るい気持ちになれるような曲をバッハに依頼。『ゴルトベルク変奏曲』誕生のキーマンといわれている。
(※2)発売記念コンサート・・・「ゆがんだ真珠の音楽会2022」(札幌・東京)

(2022年10月26日(水) 記)



★以上、ゴルトベルク変奏曲についての記述は、現在学籍のある放送大学教養学部での授業「クラシック音楽鑑賞へのいざない」でのレポートの一部として書きました。
この度、2022年度2学期の成績が確定したので公開設定にいたしました。

本文内でご紹介した「ゆがんだ真珠の音楽会」コンサートは、
2022年11月17日(木) 名古屋・金龍山芳珠寺
         11月18日(金) 大阪・島之内教会
         11月20日(日) 横浜・JIKE STUDIO
で行われました。横浜公演に行ってまいりましたが、演奏は勿論素晴らしく、MCも楽しい素敵なコンサートでした。
(2023年2月17日(金) 記)