2021年大晦日 いみちぇんSS
こんばんは、#いみちぇん のモモです。
みんな、今年はどんな年だった?
わたしは今から、直毘家恒例「年越し書初め」なんだ!
といっても、家族三人で、年をまたぐ瞬間に書道するだけなんだけどね。
わたしは「平穏無事」の四文字にしようかな。
来年も、みんなが何事もなく、穏やかにくらせますようにって。
除夜の鐘が聞こえてきたら、スタンバイの合図!
さあ、筆を持って、いざ――!
ぷるるるる、ぷるるるるっ。
うわっ、こんな時間に電話だっ。
ママが小走りに受話器をとりにいってくれた。
「んふふ~~~。モモ、矢神くんから」
「うぇっ、うわたたたっ」
わたしは渡された受話器も筆もとり落としそうになって、大あわて!
た、匠くんっ!? なんで!?
『――モモ、すまん、こんな時間に』
「う、ううんっ。うううううれしいです!」
『実は年越しのあいさつに、日中に電話したんだが。モモ、買い物で出かけてただろ? それで……、年越しのタイミングで電話していいとおっしゃって……』
ま、まさか、そういうこと言うのって――!
ママを振り向くと、にまにま、悪い笑みを浮かべてる!
「マッ、ママ!?」
「だって~、里帰り中で遠距離の彼氏と、新年になる瞬間にあいさつって、トクベツ感があっていいじゃな~い♡」
「か、か、彼氏な……。アハッ、アハハハッ」
わたしは真っ赤になって、ママとパパに背を向けた。
電話のむこうからは、ハジメさんたちらしき、矢神家の宴会の声が聴こえてくる。
きっと匠くんも、忙しいタイミングだったよね!?
「ごめんね匠くん。ママが変なことたのんで」
『いや。よろしくお伝えしてくれ。おれも、そうしたかったから』
「へ?」
ちょうどその時、除夜の鐘が鳴り終わった。
『――あけましておめでとう、モモ』
「あ、お、おめでとうございますっ!」
受話器のむこうに響く、くすりと笑う音。
『モモに、一番にあいさつできてよかった』
「あっ!? ………………ありがとう。わ、わたしもデス……ッ」
ひさしぶりの匠くんの声は、心臓の破壊力抜群だよ……!
ってゆうか、そっか。
わたし、新しい年をむかえた匠くんの、いちばん最初の声を聞けたってことだよね。
……そっか。
くちびるのハシが、自然とあがってきちゃう。
聞きまちがいじゃなかったら、匠くんも「そうしたかった」って言ってた?
…………すごく図々しいこと考えちゃった。
彼も、わたしの声を最初に聞きたいって思ってくれたのかな、なんて。
匠くんは匠くんらしく、数言の短い会話だけして、「じゃあ、またな」って電話をきる。
わたしは受話器を充電台にもどしたあと、真っ赤にゆであがったタコのまま、ふらふらと和紙のまえにもどった。
ぶるぶる震える手で書きあげた「平穏無事」の四文字は、
…………どう見ても、まったく平穏じゃなさそう。
里帰りからもどってきた匠くんに見られたら、きっと笑われちゃうよね。
わたしは苦笑いして、ゆでダコほっぺたを両手ではさんだ。
~了~
オマケ:
ママの書初め「毎日楽しい」
パパの書初め「人生の冬」
いみちぇん!シリーズ全19巻、
2021年もありがとう! 2022年もよろしくね~☆
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