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星にねがいを! ヒヨ誕生日記念SS①


 3月31日。
 春もうらら~な本日は、わたし、日向ヒヨの誕生日

 なんと今日は、冴ちゃんとハルルンとありあちゃんと南くんと、うさみんに凪さんまで集まって、お祝いしてくれたんだよっ。

 頭の定位置にのっかったビヨスケは、復活したばっかりの頃よりも重々しくふてぶてし……ゴホン、丸々しくな……ゲホン、ええーとつまり、元気いっぱい!

「ヒヨ、今なんかオレさまに失礼なこと考えてたビヨォ?」
「そんなことないってぇ。ただ、ますます首の骨がしんどくなってきたなァって」
「ハーンッ、見てろビヨよ。今度こそオレさまは、すんばらしく美しい白鳥に成長して見せるビヨ」
「またおっさんヒヨコのまま、でっかくなってくだけの気がするけど」

「うっせぇビヨ!」
「痛いぃ! つむじ突かないでよぉ!」

 ココココッとクチバシ攻撃してくるビヨスケを叩き落とそうとして、ビシバシビシッと戦うのも、相変わらずだ。

 そう、相変わらずといえば、「一日一幸せ配達」のおまじないも、引き続き黒のフォーチュンノートで続行中なんだよっ。

 今度は、凪さんに書いてもらった願いごとのために、ずーっとがんばってるんだ。
 ほんとにキセキが起こらなきゃムリなレベルの願いごとだって、分かってはいるんだけどさ。

 でも、ぜっっっったいにキセキは起こるって、信じてる。

 あの二人ね、時々、夢に遊びに来てくれるんだ。
 夢の中では、わたしたちはたいてい、朝焼けの草原にいて。
 彼女達は猫のすがたで丸くなって、気持ちよさそうに眠ってる。
 わたしはやわらかな毛並みをなでて、シロツメクサの花冠を編んでかぶせてあげて、平和だなぁって、しみじみ。

 ……だけど、実はさ。
 最近、あんまり二人の夢を見られなくなっちゃったんだよね。

 もちろん忘れてるわけじゃないんだよ!?

 今だって目を閉じると、二人の顔を、声を、ちゃーんと思い出せる。
 あの日、わたしに全部託してくれた白い子猫の優しい声も、最後に笑顔をのこしていってくれた彼女の、優しい眼差しも。

 忘れたくない。絶対に忘れないよ。

 

 わたしは心にぎゅうっと二人の面影を抱きしめ、力強く顔を上げた。

 道の先、夕暮れの太陽もきらきら輝いてるし、一番星もきらきらだし、わたしたちの毎日も、きらきらしてる。
 だいじょうぶ。胸の星が輝いてるかぎり、願いはきっと叶う!

 わたしはクローバーのネックレスと一緒に、ぴょんっとジャンプ!!
 舌をかんだビヨスケが、ぎょえっと悲鳴をあげる。

「おまっ、いきなり飛び跳ねんのヤメろビヨッ。高校生になっても、ぜーんぜん落ち着かないヤツだビヨねぇっ」
「ビヨスケだって、人のご飯盗み食いすんの、いいかげん落ち着いてくださーい」
 なんてやりあってたら、制服のポケットでスマホが「ぴろりん♪」っと震えた。

「真ちゃんかな!?」
 ズバッとポケットに手を突っこみ、ズバッと取り出す。

 今の時間だと、カリフォルニアは真夜中くらい?
 真ちゃん、朝一でビデオ通話してくれて、もうお祝いはしてもらったんだけどな?
 論文提出まぎわでめっちゃ忙しいらしいから、まだ起きてんのかもしれない。

 ドキドキとタップしてみたら、

  ――ヒヨちゃんへ。ハッピーバースデー。今日行けなくてごめんね。


 まさかの、英一郎さんから、メッセージだ!

 わたしはビックリ目をまたたいて、しばらく経ってから、ぐふふっと笑っちゃう。
 うさみんから凪さん経由でさそってくれたのは、聞いてたんだけど。
 まさか日にちを覚えてくれてたなんて、思ってなかった。

 ――英一郎さん、ありがとー! またあそぼーね!

 すぐさま返事を送ると、間をおかずに返信があった。

 ――忙しいです。

「おりょりょ」
 今度はそっけない返事がもどってきた。

「最近あそんでくんないなー。彼女でもできたのかな」
「ハァ~ン? 恋人がいたら、ヒヨになんて連絡してこねービヨ。相馬真に気ぃつかってるんだビヨ? どいつもこいつも、素直じゃねーし、あきらめわりぃビヨねぇ~」
「は? どゆこと?」

「さーあ。どういうコトだかビヨォ。ヒヨの夕飯ぜんぶよこしたら、教えてやるビヨねっ」
「んな……っ! ビヨスケ、さっきありあちゃんカップルの特製ケーキ、めっちゃ食べまくってたじゃん!」

 またギャンギャンやり合いながら、わたしたちは公園の前にさしかかる。
 と、帰り道の小学生たちが、不審な目で眺めて、ソソッと走りぬけていった。

 …………そっか。わたし、虚空に向かって一人でケンカしてる変なおねーちゃんにしか見えないよね。
 あわててJKらしく(?)咳払いして威儀をただす。
 

 と、静かになった公園のほうから、かすかに、何か小さな声が聴こえてきた。

 ……にぃ……、にぃ~……

 わたしはビヨスケと顔を見合わせた。
 ベンチのうらの、藪のあたりから?
 きのうの雨でぬれた下草をのぞきこみ、消えちゃいそうな声に耳を澄ます。
 
 にぃぁ~……

 まちがいない! いる!!

 全身を駆け巡る、予感
 ビヨスケも全身の羽をボールみたいにふくらませる。
 わたしは勢いつけて、ヤブの中に飛びこんだ!

 
~つづく~

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