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【マンション麻雀】 後ろ見の女 前編
ある日、黒沢から電話がかかってきた。
黒沢 「相談があるんすけど」
私 「なに?」
黒沢 「オーナーの孫のヒトミさんは会ったことありますか?」
私の通うハウスのオーナーは齢70近い。
オーナー本人から聞いた話だが、彼の家族も同じフロアの別室で暮らしており、都内の大学に通うヒトミさんという孫がいるらしい。
私 「まだ会ったことないんだよね。可愛いの?」
黒沢 「いやそういうんじゃなくて・・・最近たまにオーナーが麻雀中に連れてくるんですけど、麻雀の勉強とか言って後ろ見をしてくるんです」
私 「へー、そうなんだ。その後ろ見が嫌なの?」
黒沢 「そこまでではないんですけど、なんというか・・・」
黒沢 「あいつ、人がテンパイすると喘ぐんですよね」
私 「やばいじゃん」
黒沢 「Aさん(初老A)も帰りに同じこと言ってて、まぁ後ろ見自体は良いっちゃいいんですけど、テンパイバレるのはちょっと嫌なんですよね」
私 「会ったことないからなんとも言えんけど、まぁ損だと思わないならいいんじゃない?」
黒沢 「損か得かで言ったら大損ですけど」
私 「そうだよね。明後日行くから、居たら見てみるよ。程度を確認して、あまりにひどかったらオーナーに言うね。」
黒沢 「よろしくおねがいします」
孫は麻雀に不慣れなのかもしれないが、見ている手がテンパイすると喘ぐというのはかなり厳しい。しかも手番で喘ぐらしいので、もう誰の視点からも明らかというわけだ。私は生活のためにここに打ちに来ているので、必ず、かの邪智暴虐の自動テンパイお知らせ機を除かなければならぬと決意した。
*
その2日後、日曜日の朝10時から卓が経った。
メンバーは黒沢、初老A、社長B、私の4人固定だ。
勝負がはじまって少し経ったころ、オーナーが突然部屋を出ていき、少し経ってから女性を連れて戻ってきた。
(あれが例の孫か・・・)
孫は20歳くらいの黒髪ロングで皇族のような雰囲気の女性だった。
顔は・・・女性のご尊顔についての感想は人それぞれなので、ここでは「平安時代ならモテそうな顔」と説明しておこう。
オーナー 「孫のヒトミだよ。麻雀に興味があるみたいで、ここ数日は見学しにきてるんだ。いいかな?」
私 「いいすよ」
ヒトミ 「お邪魔します」
黒沢と社長Bは彼女と面識があるようで、まるで昼夜逆転しているニートが芝刈りの音で眠れずにキレているような不機嫌そうな顔をしていた。
ヒトミはそんな2人にまったく気づいていないようで、そそくさとこちらへ近づくと、初対面の私と初老Aに軽く会釈をして、黒沢と私の間にイスを置いた。
社長Bは安堵の表情を浮かべ、黒沢は下あごがだんだん出てきて明らかにイラついているようだった。
はっきり言ってヒトミの顔はイマイチだが、声はわりと私の好みのタイプであった。私は高校の頃、声豚一軍と呼ばれる声優オタクでもあったので、女性の声には人一倍敏感なのである。
(どうせテンパイしたらほぼリーチだし、この声が後ろで喘ぐんなら差し引き微プラスってとこか)・・・そんな甘いことを考えていた。
→ 【 後ろ見の女 解決編 】
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