「日米同盟」は存在しない(転載)

某ブログで書いた記事を転載しました。備忘録レベルなので、適当に読み飛ばしてください。


トランプ米大統領がしたとされる「日米安保の破棄発言」(ブルームバーグによる報道)で、昨日は、官邸をはじめあちらこちらがハチの巣をつついたような大騒ぎとなりました。


政府は必死に「日米同盟は健在」とアピールしていますが、皮肉なことに、トランプ氏がしたとされる一連の発言は、そもそも「『日米同盟』など存在しない」という事実を日本国民に知らしめました。


外交における「同盟」とは、利害関係が一致する両国が対等な関係に基づいて手を結び、時に意見をぶつけ合いながら、協力して事象に対処する、というものです。戦勝国かつ占領国であるアメリカ合衆国と、敗戦国で旧敵国条項の対象国である日本国は、「対等」でもなければ「協力」もしていません。


「日本国はアメリカ合衆国の保護下にあり、従属している」というのが事実です。その証拠が、①日米安全保障条約および日米地位協定、そして②日本国憲法第9条です。


まずは①日米安全保障条約および日米地位協定について説明します。


昭和26年に締結されたサンフランシスコ講和条約により、GHQの施政下から「独立した」とされる日本国ですが、同時に日米安全保障条約(旧)と日米地位協定をアメリカ合衆国と締結しました。その内容を極めて簡単に書けば、「日本国をアメリカ合衆国の保護下に置く」です。日米安全保障条約は昭和35年に、両国に一定の双務性を持たせる改定を行っているものの、敗戦後は一貫してアメリカ合衆国の保護下にあります。


その分かりやすい例が、日米地位協定に基づいて設定されている「横田空域」です。軍用・民間を問わず、首都圏の飛行空域の管制権を持っているのは、横田基地に本部を置く「アメリカ合衆国空軍総司令部」です。米軍との地位協定に基づき、自国の領空の管制をする権限を委ねている国は日本と韓国だけです。


続いて、②「日本国憲法第9条」について説明します。


日本がポツダム宣言を受諾して全面降伏をした後、占領政策を担当したGHQは、戦前の日本の軍国体制を徹底的に破壊し、自由と民主主義を前面に押し出した政策を実施しました。その一環として「日本国憲法」が制定されました。GHQの民生局が1週間ほどで草案を作り、国会で審議・成立させたものです。故・江藤淳氏が「押しつけ憲法」と評された通り、成立の過程には「GHQによる欽定」がありました。自民党が結党の際に掲げた党是である「自主憲法の制定」には、「日本国民が自主的に定めた憲法に基づき、真の意味での国家の独立を果たす」という意味が込められています。


日本国憲法は70年以上、一度も改正されないまま今に至っています。欧米各国の憲法を寄せ集め(コピペし)て急ごしらえで作られたため、条文に様々な矛盾や問題を抱えています。その最たる条文が第9条です。これは独立国家として、およそあり得ない条文です。護憲派の人々が金科玉条の一つにしている「社会契約説」は、国民が兵役に就き、命をかけて国を守ることを義務付けています。国が独立を守り、国民が安全に生活するには常設の国防軍が必要だとはっきり書いてあるのです。


現在の憲法第9条は、第1項で「国際紛争を解決する手段」としての「国権に基づく戦争」と「武力による威嚇又は武力の行使」を禁じています。「国権に基づく戦争」や「武力による威嚇又は武力の行使」とは、侵略戦争やそれに伴う戦力の行使のことです。侵略戦争はパリ条約で明確に禁止されており、第1項はその内容を確認したに過ぎません。


問題は第2項です。「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と「国の交戦権はこれを認めない」という文章です。ここに出てくる「交戦権」は第1項を受けた言葉で、「国権に基づく戦争」を指す、というのが通説です。「前項の目的を達するため」という言葉は「芦田修正」と呼ばれます。詳細はリンク先の文章を読んでいただければと思いますが、芦田修正は「単なる強調ないし確認」と解するのが通説です。通説に基づけば、第2項では、自衛を含めたあらゆる戦力の保持が禁じられています。


そうなると、「戦力(ないしそれに準ずる実力)を有する自衛隊は、憲法第9条第2項に違反するのではないか?」という疑問が当然、出てきます。かつては「憲法違反」とする学説が多かったですが、現在は政府の公式解釈と通説はほぼ共通して「合憲」と考えています。「政府の公式解釈」は、「日本国は固有の自衛権を有していて、そのために必要な最小限度の実力を持つことは許容される」という根拠で、自衛隊を合憲としています。


解釈そのものもアクロバティックですが、政府解釈の一番の問題は、自衛隊が「国防軍ではない一行政組織である」と明言してしまっていることです。軍隊は戦争を遂行し、業務として殺人やインフラの破壊を行います。当然ですが、一般の国内法とは違う法体系が必要となるため、「軍法」や「軍法会議(戦時裁判所)」が必要になります。自衛隊は「軍隊ではない」ので、軍法や軍法会議が適用されず、一般の裁判が行われます。国際法上も「軍隊でない」ということになると、軍隊に関する様々な条約が適用されないことになり、自衛隊及び隊員に多大な害悪がもたらされます。


自衛隊は、冷戦が勃発し、GHQの占領政策が変化したことにより生まれた組織です。憲法第9条は日本を保護下に置き続けたいGHQ(およびアメリカ)が考え出した条文ですが、ソ連をはじめとする東側諸国に対抗するために国防軍を日本国内に設置する必要に迫られた段階で、2項を全面的に改正していれば、現在に至るまで続く問題は解決されたのです。「日本を保護下に置きつつ、ソ連への防波堤にする」というアメリカの戦略に敢えて乗っかり、自国の安全保障を委ねる、という戦後の日本政府の姿勢こそが「戦後レジーム」です。


その「戦後レジーム」からの「脱却」を謳っていたはずの安倍総理大臣は、憲法解釈を捻じ曲げて集団的自衛権の行使を認めた上で、自衛隊を「軍隊未満の行政組織」のままアメリカ軍と一体となって活動できるようにする「平和安全法制こと安保法制」を成立させました。「保護」と「従属」が固定し、宗主国の意のままに自衛隊が活動をすることになりました。これにて「戦後レジーム」は完成しました。


文章が長くなって、すみません。結論は、「日本国はアメリカ合衆国の保護下にあり、従属関係にある。日米安全保障条約と日米地位協定は『国外規定』、憲法第9条は『国内規定』としてそれぞれ機能している」ということです。「日米同盟」など初めから存在しない虚構です。本当に「同盟」を結びたいのなら、憲法第9条をはじめとする条文の改正を行い、自衛隊法を改正した上で、日米安全保障条約および日米地位協定を改定することが必要なのです。


改憲派も護憲派もコインの表と裏に過ぎません。「『国外規定』をそのままにして、憲法第9条に自衛隊を明記だけする」ことも、「『国内規定』をそのままにして、条約と協定の改定を要求する」ことも、アメリカに「保護」され「従属」することを前提にしているのですから。


今回のトランプ氏の一連の発言は「日本政府に在日米軍の駐留経費の負担を増やさせ、貿易交渉でも譲歩を迫る」ためのブラフだと思われますが、もし日米安全保障条約を破棄するなら、その方が良いのかもしれません。日本国は国防軍を有する真の独立国家として歩めます。

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