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【特殊性癖】四肢欠損(切断)

①背景


イラストのテーマとして扱われる「四肢欠損」とは
「リョナ」に含まれるジャンルのひとつ
四肢のうちどれか(もしくは全部)を欠いた少年や少女を描いたものです。


厳密には「切断」と「欠損」はまた違うらしいのですが
私がなじみがあるのは切断の方です。
もとからそうなっていたとかいうことではなく
明らかに「ああ、誰かにやられたんだな」という感じに描かれます。
切り落とされてすぐであることを示す、
血の滲んだ包帯などが巻かれた姿で描かれていることも多いです。


どちらかというと若い女性の絵描きは包帯をよく好み、
男性は拷問具や拘束具と組み合わせた図を好みます。

包帯やガーゼ、点滴は、何者かに看護を受けていることを意味します。
残酷なだけでなく、やさしくされている時間もありそうで
当分の間は、閉ざされた世界で生き続けそうです。

拘束具も同じく別の人間の存在を示しますが
介抱もそこそこに、徹底的に使い倒されているようです。
たぶんすぐに殺されて用済みにされるでしょう。

生贄となる絵の主人公は少年少女が好まれますが、
腐男子の中には、屈強な大人のマッチョで描く人もいます。


このジャンルは、 pixivやツイッターでたまに見かけるので気付きました。
その前にずっとDeviantARTにいたのですが、 そこではあまり意識した記憶がありません。
ホラーのコミュニティにはいましたが、
そこの人たちは、怪物や猟奇殺人鬼など
あくまでも「主人公が加害者」という絵を描いていて
犠牲者の姿が描かれるとしても、当然モブ扱い
犠牲者自体を主人公として、その姿をエロチックに描くという習慣はほとんど見なかったように思います。


私も最初、意味がよくわからなかったのですが
四肢欠損のファンというのが一定数いるらしいので、調べてみると
あるページが出てきた。
でもURLなくしました。
(記憶ではそのときWikipediaに専用ページがあったのですが、 あらためて検索してみると、私が見たそのページがいくら探しても出てこない)

そのページの説明によると、
「愛する者の手足を切断することで、相手の自由を奪うことが目的」
つまり、SMの拘束の一形態
というか、拘束や監禁をさらに過激に発展させた形である
ということらしいのです。

都市伝説に「だるま女」というのがありますが
それと、ちょっと似ています。


もちろん、ほとんどが架空の話であり、
実際には、ろくな医療設備もないところで手足を切断したらそのまま死亡するし
犠牲者の感覚は、苦痛と恐怖しかないと思いますが
(私はイラストもそういう前提で、完全なホラーとしてしか見ていなかったのですが)

四肢欠損というファンタジーの中では
切断される側にも、倒錯した快楽があることになっているようです。
それでなんとなく、他の人のイラストを見ていて腑に落ちなかった点が理解できた。

また女性の切断絵描きたちが存在することも理解できた。


一時的に自由を奪うよりもっと残酷で
心理的にも大きなショックや絶望などを与えて絶対服従させ
さらに切断された美少年は、その後の生活すべてを
その監禁している者に依存することになり、
性欲の処理も一人ではままならなくなる(頼むしかない)
というヤンデレ妄想の世界が背景にあるわけです。

一枚絵だけパッと見せられちゃうと、
ただグロかホラーにしか見えなかったりするんだけど、
執着や独占欲・依存というのはBLによくあるテーマです。
ただそこまで過激な方向に突き詰めたものは商業作品には少ないです。


②個人的な話


私自身は、欠損というジャンルが特に好きということはないので
あまり語りたいこともありませんが、

小学校低学年くらいのころ見た夢で、衝撃的なものがあります。

私は夢の中で、自分の本来の家ではなく
一階建ての長屋が密集したような場所に住んでいました。

そこの、とある家のせまい裏庭に入っていくと
使われなくなったステンレス製のキッチンカウンターのようなものが置いてあり
そのシンクの部分にどろっと濁った水が溜まっていて
映画「エイリアン2」のクライマックスで出てくる「半分にちぎれたビショップ」みたいなのが漬かっているのです。

それはエイリアン2を観たから夢に出てきたんじゃないのか
と思われるかもしれませんが、 私の記憶では、
テレビで「エイリアン2」を観るよりずっと以前で、
自分の中に「人造人間」という概念もあまり根付いていない頃だったように思います。
容姿もビショップとは違うのですが、ある地域の特徴があり
紛争か地雷かなにかの、海外のニュース番組の影響はあったかもしれません。

それは、自分と同じかちょっと年上くらいの少年で、
両脚はなく、腰から下は溶けたような腐敗したような?
普通に考えれば到底生きているはずもない状態なのですが、
その子はなぜか生きており、意識も鮮明で、
普通に会話することができました。
彼は長屋に住んでいる者の家族で、
「自分の命はもうあまり長くない」というようなことを言うのですが、
特に苦痛や恐怖を感じている風でもなく
淡々と悟ったような穏やかな雰囲気で、
どことなく恍惚とした感じさえありました。


ビジュアルは凄惨なんだけど、怖くはなく
それどころか、夢の中の私は、その子のことが大好きでした。

この夢はものすごいインパクトがあって、長年記憶に残り、
何度も「あれはなんだったんだろう」と考えました。

怖いのはその子じゃなく
そのちぎれたビショップ風の少年を慕っていて
淡い恋のようなエロチックなものさえ感じた、自分自身の心こそが
怖くもあり、不思議でもあります。

それはまだ10歳にもならない頃だったからこそ感じることができたもので、
大人になると、道徳や規範で無意識に自分を規制してしまうので
都合の悪いことや、自分で罪だと思うようなことは
意識に浮上しないようになってゆくのかもしれない。

もちろん良い趣味とは言えないものの、

リョナラーとは、道徳的規範・正義・常識などさまざまな抑圧にもめげず、自分の興味に正直でい続けた人たちなのかもしれません。


③それを尊いと思う女子


四肢切断という空想を好む人は
少年少女を虐待して自分だけの性奴隷にしたいサディストではなく
切断される側に自己投影している可能性もあります。

もし自分が切断されたら・・・とはどういうことか?
これは漠然と頭に浮かんだだけで、憶測にすぎませんが
私はこのように考えました。

通常の社会では、 お金=労働の対価 という概念がありますが、
この図式がときには愛にも適用され、
当人が意識しているとしてもしていないとしても、

愛=努力や労働の対価

という概念が生まれます。

愛されるためには何らかの価値を提供しなければならない

がんばらなければ、尽くさなければ

そう思っている人は意外に多いかもしれません。


たとえばですが
ある女性がフルタイムで働いて、自活しています。
仕事で疲れて帰ってきてさらに家事もして人間らしい暮らしを保ち
休日は泊まりに来る彼氏をおもてなし。
多少無理してでも独身者としての労働をこなして、
めでたく結婚したとすると今度は
仕事と家事の他に子育てなどと
さらに多くの労働が発生してきます。

このように、世間一般に常識的だとか
大人として当たり前と言われる人生を送ろうとすると
それは労働の連続です。
女の子は、周囲の大人たちや、年上の女性を見てそれを知っています。


四肢欠損というファンタジーは、
この「労働の対価としての愛」
という概念をひっくり返します。

四肢を切断された少女もしくは少年は、もう労働できません。
性的な意味で使役されているのではないか
といえばそうなのですが、
四肢がないのでは、自分から積極的に性的な奉仕をすることはできません。
ただひたすら受け身な立場で愛玩されるだけになります。

それは自分を愛する相手が「おまえは何もしなくても良い」と言った
というだけの話ではなく、
もう他の誰からも、期待されることはありません。
彼(彼女)に労働が不可能なことはもはや一目見て明白なので
ただ同情され介護されるだけ
「生きてるだけで偉い」という状態になります。


愛が労働の対価でしかないのなら、
赤ちゃんやお年寄りや病人は愛される価値がないことになってしまう

いや、乳幼児は「将来労働力になるから」高齢者は「かつて優秀な労働力だったから」愛情や世話を受け取ることを許されるのか?

でも、じゃあ、優秀な労働力だった時代がほとんどないような年齢で切断され、今後の可能性も絶たれたら……?


その子は、周囲からの期待や、労働力の交換というこの社会構造から永遠に無関係な別次元へと脱出をとげるのです。


育ち方や、学校や社会の影響で
「労働の対価として愛を得る」
という概念に慣れてしまった(でも疲れた)者にとって
「積極的な労働どころか一人では生活さえままならない状態になってしまったのに、それでもなお熱烈に愛され求められ続ける」
というのは びっくりするほど斬新で、信じられないくらい甘くて
でもちょっと罪・・・

そのままただ甘やかされたりしてたら
もうあまりに羨ましすぎて見ていられないから、
何かの代償を払わせたい・・・
それで、切断された子をさらに拷問するとか罰するといった、過激な表現になる人もいる・・・のか?わかりませんが、

四肢欠損の絵に描かれる少年たちは
切断という大きな代償を払って、
無償の愛を手に入れた(その存在を証明した)勇者であり
勤労賛美という価値観から解き放たれた天使なのかもしれない。


(日記20170514)



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イラストbyありしゅ




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