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映画「ある少年の告白」


薄暗いベッドで語り合っているような男の子たちの写真と、
説明文には「同性愛を治療する施設に入れられてしまった少年・・・」とあったので
あ~舞台は戦前のヨーロッパかなぁ、なんて呑気に見たらビックリ

なんと2000年以降のアメリカ
実話をもとにしたドキュメンタリーです。

牧師であり経営者でもある父のもと
農業地帯のアーカンソーに生まれたジャレッド少年
(アーカンソーは観光地ではないし一般的に有名ではないと思いますが、
ホラー好きの私がしっかり地名を知っているくらいなので
実際に悲劇の土壌になりそうなところがあるのかもしれない)

そこに登場する「同性愛を矯正する」と謳った狂気としか思えない施設

現代に生きている大学生がなぜそんなところに入ることになってしまったのか
合宿に3000ドルも払ってその施設に子どもたちを送り込む親とはどんな人たちなのか
その経緯が順を追って描かれてゆきます。

主人公を取り巻く敬虔なキリスト教徒のコミュニティが想像以上に大規模で、
あの中から一生出ないで生きていく人たちが、今も存在しているみたい。

生涯同じ神を共有する人たちと暮らし、様々な価値観に触れなくてすむのは
「考えなくてもいい」ということでもあるので、楽は楽なのかもしれない


ジャレッドの通う大学もかなり濃いミッション系だし、
父が経営する会社の社員も全員信者で、
朝の業務はまず全員集まってお祈りから始まります(;゚Д゚)

もともと宗教って「下層階級を労働力として効率よく管理する」という目的がありますからね
言い換えれば、それに上手いこと成功した宗教が歴史の中で長く存続できる。

でもそこでは、抑圧され過ぎて歪んだのか単にもともと利己的なのか?
ヘンリーみたいな最低野郎や、サイクス所長のような異形も誕生してしまう。

それに、ああいうコミュニティで似た者同士で家族になり
本は聖書さえ読んでりゃいいくらいに言われ、接する情報も少なく
贅沢しないで勤勉に働き、貯金や寄付をしているのだろう信者たちは
見る人が見れば、そりゃもう美味しいカモでしょう
悩みに付け込んで搾取できてしまうベースが、しっかり出来上がってしまっている。

極秘とされる施設の教材を読んだジャレッドの母が
信者にとって一番重要なはずの「神」のスペルを間違えて「犬」になってるのを見て戦慄するところや
独裁体制の所長
意味不明の強迫的な儀式
じわじわとほころびが見えて不気味さがあらわになってゆくところは
ちょっとサスペンス風味もあるので、
途中ジャレッドが「やっぱりおかしい」と面と向かって反抗しだしたときは
ほんとにホラー展開になるかと思ってドキドキしました。
そもそも原題が「消された少年」となってたのも気になってたし

とりあえず、生きて戻れてよかった・・・。

母親役はニコール・キッドマン
「ずっと男の言うことに従ってきた」という彼女が次第に強くなっていく姿が素敵

あと、施設にいたサラという女の子がどうなったのか気になったけど
これは残念ながら後日談がなかった

父も少しずつだけど変わってゆき
ジャレッドは自分と向き合い、新しい世界に踏み出すという
妙に薄暗い画面と裏腹に、意外と明るい展開でした。


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