あなたたちが

 乃木坂46 3期生 梅澤美波さんが好きです。
 追いかけて約5年、好きな人が乃木坂46のキャプテンになりました。
そうして迎えた真夏の全国ツアー。最終日の神宮で彼女がこう語ったことを知った。

「私たちが 乃木坂46です」

 私はライブに参加していないが、この言葉を見ただけで、梅澤さんの声で再生しただけで、涙が出た。
 彼女がこの言葉を言うまでにどんな葛藤をしてきたのか。口に出すのにどれだけの勇気がいったのか。でもきっとこの言葉は彼女のためのものではなく、他のメンバーのためであったはずだ。

1期生、2期生が全員卒業し、現在の乃木坂46は3〜5期生で構成されている。乃木坂46を作り出したメンバーは、もういない。3期生が加入した頃には既に乃木坂46はそのブランドを確立していたと言って良いだろう。現メンバーたちは後に先輩となる「乃木坂46」を見て、その姿に憧れ、仲間入りした人々だ。「憧れ」とは、自分自身から最も遠い存在である。その対象を見上げることで距離はひらき、対象の輝きと反比例して自分の至らなさを実感する。憧れのグループに加入すること。それは乃木坂46を好きであればあるほど、先輩に追いつこうと思えば思うほど苦しい道だろうと思う。

 そして既に用意された舞台に立つ3期生に良くない印象を持つ人も多くいた。私はいちファンとして「らしくない」という言葉とともに批判される様子を幾度となく見てきた。彼らはきっと1期生2期生が作り上げた乃木坂46が好きで、卒業したメンバーに並々ならぬ思いを抱いていたのだろうし、3期生加入以前からファンだった私にもその気持ちは理解出来る部分もある。しかし(もちろん中傷等の過激な意見は見る必要はないとしても)、メンバーの耳にも少なからず届いてしまうのだろう。3期生が、先輩に及ばない自分に対する悔しい思いや、卒業したメンバーのポジションに立つ難しさやプレッシャーを打ち明ける場面を何度も見てきた。 最近は3期生がグループの顔として立つ姿が多くなり、後輩も増え、先輩としての覚悟を至る所で示してきた。バスラの3期生ライブにて「私たちについてきてください」と力強く言い切った彼女たちにはもうプレッシャーに潰されて苦しそうな表情はなかった。

梅澤美波さんはメンバーのことが大好きなんだと感じる。ライブでは一人一人の顔を見回して、目を合わせて話を聞く。インタビューや番組ではメンバーの名前を出して素敵なところをアピールする。モバメでは写真付きで誰々がかわいかったんだとエピソードを披露する。副キャプテンだった頃から、大好きで大切に思っているからこそ分かる彼女たちの葛藤に寄り添い、姿勢を示していた。キャプテンとして語ったスピーチはそんな姿そのものだろう。「乃木坂46」に憧れ加入した仲間たちの不安をまるっと飲み込み、私たちが乃木坂46なんだと宣言した。それは彼女たちのこれまでの努力を認めることであり、グループの一体感を高めると同時に同じ方向を目指すための言葉であったはずだ。そしてその言葉は私たちファンをも救ってくれた。彼女らの葛藤と努力を見て時にはもどかしい思いをしてきたが、私たちはあなたが思っている以上にあなたに力を貰っているんだ。だからどうか、自分たちを大切にしてステージに立って欲しい。そんなエゴまで抱きとめてくれる人。プライドと覚悟を持ってキャプテンとして立つ梅澤美波さんが、私は好きです。

 あなたたちが、乃木坂46です。憧れは自分から最も遠いものと言ったけれど、外からも内からも乃木坂46を見てきたあなたたちがやることは、全部「乃木坂らしい」はずなんだ。あなたたち「も」じゃない。今を背負うあなたたちが乃木坂46を作り上げていくことを願っています。