「先生、私の隣に座っていただけませんか?」

時間があり余っておりかつ映画記録ブームに突入しているこの上昇気流に則り、面白かった映画について語っていこうと思う。
ちなネタバレはしないよう善処します(善処します)。

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「先生、私の隣に座っていただけませんか?」
黒木華演じる漫画家が描く、夫・柄本佑の不倫に対する腹いせなのかフィクションなのかなんなのか とにかく意味深な漫画に翻弄される物語。
不倫モノが好き、というと語弊があるが まあ不倫モノが好きなのでわくわくしながら見た次第である。ひとつブームともいえるようなサレ妻視点ではあるが、夫を地獄に落とすでも相手の女を恨むでもなくただただ夫を掌の上で転がす、という新しい切り口が良かった。
私の好きな不倫モノというと、嫁と別れて彼女と結婚するんだと意気揚々に語る盲目型ではなく、嫁にも彼女にもいい顔をしてセルフハーレムを楽しんでいるタイプなのである。誰に報われて欲しいとかした側に制裁を与えて欲しいとかそんな高尚な思いは持ち合わせておらず「他人の不倫は蜜の味」ただこれだけだ。その点、柄本佑は浅い。深く考えないまま目の前にいる女に惑わされ、不倫の「先」が見えると焦るという最もダサく、ダルいやつである。じわじわと追求するストーリーで出てこようものなら 信念がねえやつは決められたレールの上を黙って走っとけや、自我なんか出すんじゃねえ💢 と理詰めで説教かますところだが、この映画に関してはこの人間だからこそ効く展開だったので許した。
柄本佑といえば「知らなくていいコト」が至高のため、ここまで "見るからに単純な人間"役は新鮮だった。反対に黒木華は心の奥底を悟らせない演技が上手い。1回疑うともうなにも信じられなくて思考どころか感情が読めないのが中々怖かった。1番役として好きだったのが奈緒演じる黒木華の編集者 兼 柄本佑の不倫相手。完全にエンタメとして不倫を楽しんでいる。この手の人間は不倫に対して一切の悪気がないためサレ側からしたら最も鼻につくタイプである。罪悪感や優越感が一切ないあっけらかんとした役柄が非常に良かった。ただ途中の電話のシーンだけちょっと違うので、脚本修正お願いします(誰)。

入れ子構造、つまり作品の中に作品があるような構造は私の好きな手法の1つであるが、この映画は作品の中の作品 更に漫画と実写の複合と複数の要素が入り交じっていることで境界線が曖昧になっている。その点が最大の魅力であり、エンタメ性に富んだ部分ではないかと考える。

ただ最後にこれだけ言わせてくれ。
謎にコメディチックな音楽だけ本当に差し替えてください。あと新谷不憫すぎる。