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やるときゃやるんだ、田村君は

僕がアルバイトしていたガソリンスタンド。
今回はそこで起こったエピソードをおひとつどうぞ。

(注)この田村君はあの田村君とは一切関係ありません。

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「ざあっしたー!」

夕方の給油ラッシュを終えて僕と中原さん、それから田村君は一息ついていた。

僕「いやぁ、やっと落ち着きましたねぇ。」

中原さん「いつものアレ。いっとくか!」

田村君「おお!いいっスね!!」

3人「最初はグー!ジャンケンポン!」

ジャンケンの敗者がジュースを奢るという例のアレだ。

負けたのは中原さん。

中原さんはジャンケンが弱かった。多分、3回に2回ぐらいの割合で負けてたんじゃないかな。

力こそ正義。いい時代になったものだ。


「いただっきゃーす!」

勝ち取ったコーラを勢いよく飲み始めた僕らは、次の瞬間、二体のマーライオンになった。

「タ、、タスケテェェー!コロサレルヨヲヲヲヲ!!」

入口には血塗れの男が助けを求めて這いつくばっていた。

おいおい、、、、、マジか、、よ、、、、

「タスケテヨォォォ、ワタシ、コロサレルヨ、、」

だが中原さんは落ち着いていた。
いいぞ中原。その調子で頑張れ。

中原さん 「いったい、どうした、、」

言いながら、血塗れの男に近づこうとしたその時。

「オウ!テメェ!!コノヤロォォォ!!!」

「オウ!ソコノオメエ!シバルモンヨコセヤ!!」

怖っ.............

え、、、、、あの倒れてる人、、ジョンなの!?

何?え?ターミネーター?え......怖っ...........

解説

前作で結ばれた、サラ・コナーと未来から来たカイル・リースとの間に出来た息子ジョンこそ、未来での機械との戦争で人類を導く指導者だった。そして、機械たちはジョンの暗殺を目論み、再び1994年ロサンゼルスにターミネーターを送り込んでくる。

閑話休題。

とにかく強面の、今で言うハンシャ的なお人が登場したんだ。

くどいようだけど、ターミネーターはあくまでもイメージですからね。

「オラ!そこのてめぇよ!早く持ってこいよっだらぁぁぁぁ!!」

そう言ってターミネーターが指さす先には

はい。そうですよね。中原さんですよね。

中原さんご指名入りました。

こういう時の中原さんはとても、それはとても素直だ。

「ハイッ!!」と声を裏返しながら、迅速な足どりで倉庫の方へ向かい始めたんだ。

(中原よ。さてはロープとか持ってくるつもりだな。 そいつァ人としてどうなんだい?)

そう思った僕は、慌てて躓いた風を装い

「ナカハラ=サン!!」

そう叫ぶやいなや

を繰り出した。

「ホーワッチャァァァ!!!」

クリティカルヒット!

中原「グワァァァァァァ......サヨナラッ....」

(よし。中原制圧はミッションコンプリート。次はあのターミネーターみたいなサイコ野郎の番だぜ。)

それから、未だマーライオン中であろう、田村君の方へと目を遣った。が、、、




(ぐぬぅぅぅ、田村よ、、、いつの間に、、、、)

田村君がいたであろうその場所には、既に、田の字も残っていなかったんだ。

死んだ.............

それなりに楽しい人生だったな....
Good bye 青春。いい夢みたぜ。





いや、まだだ。
まだ終わっちゃいない。

僕は人知れず、ただひっそりと覚悟を決め、

「キエェェェエェェwwwww!!」

奇声を上げながら、サイコ野郎めがけて突進しようとした。

と、その時。

バックヤード入口のドアが勢いよく開いた。

お巡りさん登場。

続いて、ガソリンスタンドの構内には、4~5台ものパトカーが到着した。

田村君は、僕らの知らないところで警察に電話するという快挙を成し遂げたんだ。(田村君にしてはよくやった。田村君にしては.....)


タミサイコ野郎は慌てて逃げ出そうとしたけど、
うまくいくハズなかった。

QQQQQQQQQQQQQQQQQandAQQQQQQQQQQQ

タミサイコ野郎がパトカーに乗せられるのを黙ってみていた僕の肩に、そっと田村君が手をかけてきて

「な。」

(チッ、、「な。」じゃねえわ、、偉そうにするんじゃねえよ、田村よ、、)

そう思ったけれど、
「でかした!!」
そう言って肩を組んだんだ。
田村君と。






あ、そういや忘れてたよ。中原さんのこと。



「やりやがったな........ある君ヨォォォ....」

僕は微笑みながら、その実ココロの中で

だせぇぞ、中原よ。自業自得だぜよ。

そっと呟いた。

田村君はそんな中原さんを見て

ほくそ笑んでいた。


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これは後で分かったことだけど、

逃げ込んできたのは中国から来た人で、あのサイコ野郎を騙していたらしい。

難しいことはよく分からなかったけれど、
中国の人も大した怪我ではなかったし、
中原さんも悪魔に魂を売らずに済んだので、まあ、よかったんじゃないかなぁ。
その後しばらく、口を聞いてくれなかったけどw


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「らっしゃあせー!」

「ハイオク満タン、入りマース!」

「ざあっしたー!」


あの日僕らは、一つのことを成し遂げたんだ。















中原さんを除いて。



今はもう、ガソリンスタンドは無くなってしまったけれど。

確かにあの日、僕らはあの場所にいた。



あのガソリンスタンド。




なんだかとっても懐かしいや。