天体観測
拝啓
落ち葉が風に舞う頃となりましたが、貴方様におかれましてはいかがお過ごしのことでしょう。
私はといえば、時代の波に呑まれて久しく、今では貴方様の目に止まることも無くなってしまいました。 ですが御安心ください。私は貴方様の側におります。貴方様がお生まれになったその時から今日までずっと。夜空を照らすこともできぬ微かな存在の私にとって、貴方様が元気で、そしてそれを見ていることが何よりも嬉しいことなのでございます。
ただ、ふと思うのです。
「私の光がもっと強ければ」と。
もし宜しければ、今宵夜空をご覧になってください。
貴方様にお目にかかれることを楽しみにしております。
かしこ
僕は手紙で作った宛名のないヒコウキを、そっと夜空に手放した。
【天体観測】
【完】
おまけ
