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【レポート】『Wende2 未来へのアプローチ』上映会(10/20)

10月20日(金)長野市勤労者女性会館しなのき視聴覚室にて『Wende2未来へのアプローチ』の映画上映会が行われました(主催:長野県地球温暖化防止活動推進センター/共催:NPO法人みどりの市民)。昼の部、夜の部と2度上映され、夜の部では上映後に監督の髙垣博也さん、出演者の杉山範子さんによるトークイベントも行われました。



 『Wende2未来へのアプローチ』は地球全体の緊迫した課題である気候変動(地球温暖化)対策として、よく語られるCO2の削減だけではなく、気候変動によってもたらされる様々な自然災害などの影響に備える「適応」策に焦点を当てた映画です。

 メインの出演者は東海学園大学教授、名古屋大学特任教授である杉山範子さん。彼女へのインタビュー映像、大学での講義、高校での出張授業などの映像を軸に気候変動に対する考え方、実際に日本全国の市町村で行われている実践事例などを紹介する内容となっていました。監督がとにかく分かりやすく、一人でも多くの人に気候変動を自分ごととして捉えて行動をとってほしいという願いが伝わってくるような映画だと感じました。

 映画の中で杉山さんが、気候変動対策の基本的な概念として以下の3点を講義しています。

◆バックキャスティングアプローチ◆
理想の姿から逆算して実現手段を考える手法。現状からできる改善策を積み上げていく手法(フォアキャスティング)に対し、現状を前提としないため劇的な変化が必要とされる課題に有効とされる。「2050日本低炭素社会シナリオ」などが代表的な例。

◆緩和策◆
気候変動を起こしている原因を減らす対策のこと。例として、温室効果ガスの排出を抑制する電気自動車の開発や太陽光パネルの促進、CO2の排出量を抑制するための国際ルールづくりなどがある。

◆適応策◆
気候変動による影響に備える対策のこと。例として、暑さ対策のためのクールビズ、自然災害に備えた堤防の設置、気候の変化に適応した作物の開発などがある。(今回の映画はこちらに焦点を当てた内容。)

上映会で配布された資料より(抜粋)



 産業革命以前と比較して2100年までの平均気温の上昇を1.5度までに抑えるのが理想とされていますが、現在までにすでに1.1度上昇しており有余はわずかに0.4度というお話もありました。また現状と同じ生活を続けていけば2100年には平均気温は4度上昇していると予測されているそうです。
 杉山さんは元々気象キャスターをされており、その当時(2000年頃?)は異常気象というのは30年に1度程度の頻度で起こるものと言われていたそうです。それが今では今年の猛暑でも実感している方が多いと思いますが、毎年のように異常気象が起こっています。気候変動とは将来起こることではなくもう今すでに現在進行形で起こっていることなのです。
 物心ついた頃には現在の気候となっていた2000年代生まれの10代〜20代の若者たちは気候変動を実感しにくいそうです。しかしながらこの気候変動のツケを払わなければいけないのは現在の若い世代です…。


 これからの世代のためにもわたしたち一人一人が気候変動による問題を自分ごととして捉え行動していかなくてはなりませんが(今回の映画でわたしが特にはっと胸に落ちたことでもあるのですが)、それは我慢したり貧しい生活をするということではなく、CO2を出さなくても豊かな生活を送れる、そういう方法にシフトチェンジしていくこと。それが脱炭素社会、炭素文明から脱却するということなのだということです。
 
 また映画では、京都府亀岡市、福知山市、三重県鈴鹿市など先進的な取り組みをしている市町村の事例も紹介されました。(政治に関して残念に思うことが多い中、これだけ地域や地球のことを考えて実際に行動を起こしている為政者がいるということに希望を覚えました。)それぞれの市町村の取り組みについてはぜひ映画を見て頂ければと思います。
 

最後に杉山さんが日本事務局長を務める「世界気候エネルギー首長誓約」について紹介します。

◆世界首長誓約とは?◆
「世界気候エネルギー首長誓約」(Global  Govenant of Mayors for Climate & Energy)は、気候変動に取組む自治体の世界最大のネットワークです。世界約12600の自治体が参加しています。
 これは、地方自治体の首長が、持続可能なエネルギーの推進、温室効果ガスの国の目標以上の削減、気候変動の影響への適応に取り組み、持続可能でレジリエント(強靭)な地域づくりをめざすと同時にパリ協定の目標達成に地域から貢献することを誓約する。誓約後は行動計画を策定し、モニタリング報告を行いながら、具体的に取組を進めていく国際的な取組です。
                  (http://covenantofmayors-japan.jp/ 参照)

 日本では42の自治体が「世界首長誓約」に誓約しています。(2023年4月時点)

 髙垣監督は前作『Wende光と水のエネルギー』では自然エネルギーの創生普及に取組む人々に焦点をあてた中で「地域」が大事ということに気づいたことが今回の『Wende2未来へのアプローチ』制作のモチベーションに繋がったとトークイベントで語られていました。
 杉山さんからは、レジ袋を貰わないようにしましょうとかそんなふんわりしたことを言っていても変わらない。ハードルは高いけれども、きちんとルールを作らないといけない、そのためには自治体の首長がリーダーシップを取らなければならないというお話もありました。

 夜の上映会には二十数名ほどの参加者があり、トークイベントでは長野県環境保全研究主任研究員の浜田崇さんの司会のもと、フロアから4名ほど質問者がありました。終始和やかなムードながら、登壇者からも質問者からも気候変動に対する真剣な眼差しが感じられる会だったと思います。

トークイベントの様子

(文:草深友貴)

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