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フォロワーさんリクエスト企業分析 #5 Seagate Technology(STX)企業分析,決算分析,25’1Q以降の見通し見解

フォロワーさんからリクエストをいただいた企業を個人的に分析するこの目論見もはや5社目になりました。
今回はSeagate Technologyという企業を分析していきたいと思います。
Seagateはストレージメディア業界の中で主にHDDドライブ、SSDドライブなどが主力製品ですが、中でも注目製品はデータセンターやクラウドストレージ向けに開発されたEnter Prize Drive(エンタープライズドライブ)という大容量(数十TB規模)のExosシリーズ(HDD)、Nytroシリーズ(SSD)が注目されておりSeagate Technologyの技術の結晶と謳われている次世代HDD(SSD)です。
この次世代HDDがSeagateの収益を牽引しており、2024年度年間EPSは前年比+403%(約5倍)2025年度も年間EPSが2024年比でも+489%(約5.9倍)ととてつもないレベルのEPS成長率が予想されております。
株価は現在52週高値を更新し続けておりますが、問題なのは上記のEPS成長が果たして現在の株価にどこまで織り込まれているのか!?

※ちなみに現在の株価を2024年EPSに当てはめたP/Eは104倍だが2025年EPSを見越したFoward P/Eで見ると僅か17.6倍まで落ちます。恐らく今年分のEPSは既に株価に織り込み済だと思われますが、25年分はまだ織り込まれていない様に思えます。

サーバー企業や熱処理、電気、ソフトウェアと多くの生成AI対象銘柄が買われておりますが、データセンターやクラウドストレージ分野のストレージメディア業界で筆頭格企業のSeagate Technologyをこの後細かく分析をしていきたいと思います。
※個別銘柄に言及する内容が含まれますが筆者の経験と知識を基に見解を述べているもので売買を推奨するものではありません。この先に進まれる方はこの件に同意されたものとみなさせていただきます。


2024年4Qガイダンス(7/26決算発表予定)

24’3Q決算は4/23に発表されて既に織り込まれている為、7月に発表される24’4Q決算から見て行きたいと思います。

Revenue EST 1.82B~1.85B(18億2000万$~18億5000万$)
Consensus 1.87B miss 0.05B Y/Y+13.8%
EPS nonGAAP 0.70$ Consensus 0.72$ miss 0.02$ Y/Y+70%

売上、EPSもアナリストコンセンサスを下回っておりますがEPS成長率にブーストが掛かってきた感が出てきました。

Seagate Technology 24’4Qガイダンス

Seeking Alpha アナリスト分析資料

決算時に開示されている資料が少ない為、Seagate Technologyについて見解を述べているSeeking Alphaのアナリストの分析資料を掲載します。

  • シーゲイトのMozaicプラットフォームおよびHAMR技術は、収益の増加と営業利益率の向上をもたらすと期待されている。

熱アシスト磁気記録(HAMR)技術とは?HAMR技術は、その前身である垂直磁気記録方式(Perpendicular Magnetic Recording+、PMR+)が空中密度の限界に達したため、大容量ストレージの次のパラダイムとなる。
最終的には、HAMRは高温でデータを書き込むため、処理が容易になり、空中密度が向上するため、PMR+を克服することになる。

これに対して私は、シーゲイトが大容量データ・ストレージ市場の最前線にいると見ています。
それは、シーゲイトが32TB HAMRテクノロジーを搭載したストレージ・デバイスと3TB容量のプラッタを最初にリリースしたからです。
シーゲイトがこれらの機能をリリースしたことは、同社のビジネスにとっていくつかの利点がある:

  1. 第一に、シーゲイトの営業利益率が向上します。HAMRテクノロジーは、標準的なPMRテクノロジーとは異なり、より高い空中密度を達成するためにプラッタやヘッドを増やす必要はない。これは、ストレージ・スペース1平方インチ当たりのビット数が高くなることを意味する。そのため、HAMRテクノロジーは、購入する材料が少なくて済み、1ドル当たりの製造テラバイト数の割合が低くなるため、シーゲイトの全体的な売上原価を削減することができます。これにより、シーゲイトの利益率が向上します。

  2. 第二に、HAMRテクノロジーはデータセンターが直面する運用コストに関する主要な懸念に対処するものである。幸いなことに、シーゲイトの解説によれば、HAMR技術はこれらのコスト、電力、スペースを削減する。私は、消費者にとってこのようなコスト削減は、シーゲイトのHAMR技術が最初に市場に投入されたことから、必然的にシーゲイトの収益を増加させると考えている。

  3. 第三に、収益の押し上げはすでに明らかである。シーゲイトは、2024年前半までに32TB HAMR搭載ストレージ・デバイスを100万台出荷し、ドライブの国際認定を受ける予定である。この意味での認定とは、同社のドライブがテストされ、実証され、顧客に好評であることを意味する。バークレイズ・アナリストのウィリアム・レヴィーによれば、最初の販売による収益増加は$300Mと予測されている。

  4. 第四に、人工知能とIoTの社会への圧倒的な統合によるデータストレージ需要の増加である。データ・ストレージ容量は、2023年から2027年までにそれぞれ10.1 ZBから21.0 ZBに成長すると予測され、これは年平均成長率18.5%である。このようなストレージ容量の需要は、シーゲイトに利益をもたらすだろう。

  5. また、シーゲイトは先発者としての優位性を獲得し、需要の高い大容量ストレージ機能で確固たる市場リーダーになると私は考えている。シーゲイトは、早期の市場シェア、高い利益率、強力なブランド認知度、競合他社を凌駕するスケールメリットなどのメリットを享受できるだろう。HAMRに裏打ちされたHDDを発売するシーゲイトの動きは、今後の収益増加の要因となるだろう。

『と、このように既にストレージメディア業界での大容量HDDの需要は旺盛であり、この供給者の筆頭格がSeagate Technology社である事を考えると2024年後半から本格的になる次世代Enter Prize Driveの出荷によって爆発的な利益成長をする可能性が高いという予想も当たっているのかもしれません』

既存ユニットの定期的な交換またはアップグレード

企業向けストレージ・ドライブ業界は循環的であり、消費者が既存技術を買い替えたりアップグレードしたりするサイクルを経験するため、谷とピークにさらされている。
なぜなら、これらの技術は5年から7年で減価償却され、消費者はデータ・ストレージ技術の交換やアップグレードを行わなければならないからである。

これを受けて、私は次の需要サイクルが到来すると考えている。
私の考えは、過去4年間に減少したエンタープライズ・ストレージ・ドライブの総出荷量の分析に基づいている。
2020年から2024年にかけて、エクサバイトの出荷台数は33%減少した。これはグラフ2で明らかである。さらにグラフ2は、2024年から2028年にかけてエクサバイト出荷量が指数関数的に増加することも明らかにしている。

この予測には2つの重要なトレンドがあることがわかった。ひとつは、2018年にデジタル情報を追跡調査したところ、2ごとに倍増していることが明らかになったこと。2つ目は、デジタル情報の成長を受けて、2023年から2027年までの年平均成長率(CAGR)18.5%で成長するデータストレージ容量によって、エクサバイトの出荷予測が促進されると私は考えている。

クラウドおよびビッグ・データに対するこれらの要件は、接続性の向上、コンピュータの高速化、人工知能、およびIoT全体によって実現されており、シーゲイトの売上を強化し、市場をリードする32TB HAMR HDDの出荷を開始したばかりであることから、同社は今後のサイクルを有利に進めることができる。

Exabytes 出荷量グラフ

シーゲイト総利益率の推移と予測

シーゲイトの売上総利益率は2021年以降低下しており、過去の30%の持続可能な水準に戻すために戦っている。
シーゲイトの過去の売上総利益率はグラフ3の通りである。
18.70%という急激な売上総利益率の低下は、過去のデータと比較して正常なものではありません。
過去14年間で、シーゲイトが同様の低い売上総利益率を示したのは2011年のみである。10年にわたる業務上の専門知識と、より強固なサプライヤーとの関係を経て、最近の低い売上総利益率は異常値であると結論づけている。

売上総利益率の低下は、最近のサプライチェーンの混乱やインフレ率の上昇といった外部要因がマージンを圧迫しているためと私は見ている。
しかし、企業はパンデミック(世界的大流行)時の混乱により、10年来の調達・物流サプライチェーンを再構築した。
こうした最適化は、今日のグローバル・サプライ・チェーンを脅かす地政学的な問題に取り組む上で、企業の助けとなっている。さらに、インフレ率は2021年から今日まで7%から3.5%に低下しているため、シーゲイトは正常化し持続可能な30%の粗利益率に達すると私は信じている。

シーゲイトの売上総利益率は、その収益性にとって重要である。
なぜなら、2018年度に売上総利益率が1%低下すると、短期評価において2%のダウンサイドを意味するからである。これは、マージン分析を通じて推定され、売上総利益率の変化に対するシーゲイトの感応度を決定した。
この分析では、売上総利益率が売上総利益にどのような影響を与え、それがEPSに影響を与え、それに対応してバリュエーションに影響を与えるかを決定した。
グラフ4は、粗利益率が1%変化すると、2018年の粗利益が108M減少することを明らかにしている。

したがって、サプライ・チェーンの混乱が減少し、インフレ率が低下するにつれて、シーゲイトは持続可能な30%の売上総利益率水準に回復すると予測されるため、より高い評価に値する。
さらに、2024年以降、シーゲイトの売上総利益率は、HAMRによるコスト削減によって増加する。

Seagate Technology Gross Margin(粗利)推移
Seagate Technology Gross Margin Eliminates(粗利が無くなる)グラフ

リスク

未達成のHAMR HDD資格

シーゲイトは、2024年前半に32TB HAMR HDDを100万台出荷する計画を持っている。すでにグーグル(GOOGGOOGL)が大量発注したという噂もあるが、まだ噂に過ぎない。さらに、HAMRの出荷台数を増やすための次のハードルは、主要消費者からの国際的な認定だろう。この製品が消費者に受け入れられなければならない。

私は、同社の新型HDDが大量に統合されないかもしれないというリスクを認めており、このことが将来の予測に水を差す可能性があることも理解している。しかし、32TB HAMRドライブの開発に向けた研究開発は、シーゲイトの製品横断的なシナジーから生まれたものであり、シーゲイトの実績から、HAMRは市場に受け入れられる製品であると私は考えている。

利上げか、引き延ばされた長期金利上昇政策か

最近では、インフレが予想以上に厳しい状況が続いているため、2024年6月の利下げ確率は20%未満に修正された。
さらに、金利の話題は高金利の長期化と利上げ懸念にシフトし始めている。いずれのシナリオにせよ、私はマクロ経済がもたらすリスクを認識している。シーゲイトは通常、需要が減少し価格統制が弱まるにつれて規模拡大能力が低下し、抑制的な経済では好調な業績を上げていない。

しかし、FRBが金利上昇によって膨れ上がった政府債務をコントロールする責任を負っていること、選挙が近いこと、賃上げがないことは、FRBが非常に慎重であることを示す強い指標だと私は見ている。
FRBは、長期にわたる高金利が持続不可能であることも認識していると思う。したがって、2024年後半から2025年初頭にかけて利下げを実施するためには、ポジティブなデータがいくつか重なるだけでよいと私は考えている。

結論

本レポートの最後に、シーゲイト・テクノロジー・ホールディングスの目標株価123ドル、上昇率44.38%の「買い」を推奨する。
私は、シーゲイトがこの業界のマーケット・リーダーであり、44%の市場シェアを維持していると考えている。
シーゲイトの収益は、同社製品に対する需要を喚起する触媒によって支えられるだろう。
カタリストは、データ・ストレージ・セクター、人工知能セクター、HDD HAMRセクターの成長トレンド、および成長マージンの増加に従うだろう。
従って、シーゲイトが私が予想した本質的価値を失うことはないだろう。

もう一つの見解(反対意見):問題は評価がまだ安くないことだ


Seagate Technology 24~26通期EBITDA成長率

今回のケースでは、FY23のEBITDAの減少幅の方が大きいため、回復幅はFY09-FY12のサイクルと同じようになると思う。同じ4.5倍の回復を4年間(保守的なためFY09-FY12より1年長い)で達成すると仮定すると、STXのFY27のEBITDAは32.7億ドルになると予想する。

ファンダメンタルズは引き続き良好に見えるが、私がSTXに抱いている問題は、依然として割高なバリュエーションである。
フォワードEBITDA倍率は17倍から現在の13.7倍へと低下傾向にあるが、過去の歴史と比較するとまだ非常に割高である。前回と同じ方法で、バリュエーションが過去の平均倍率である9倍まで戻ることを想定してみた。
その結果、短期的な(24/25年度の数字に基づく)アップサイドはまったく魅力的ではないが、市場が26年度の数字に注目し始めると、アップサイドは魅力的になる。

従って、今日の私の見方は、より割安なエントリー・ポイントを待つため、ほぼホールドのままである。バリュエーションが下降トレンドにあることから、間もなく好機が訪れるだろう。

回復の兆しがあるのは確かだが、これはまだ回復傾向にあることを保証するものではない。
これを確認する前に、あと2、3四半期の連続的な改善を見る必要があると思う。
もしSTXが弱気の兆しを見せれば、市場は「業界は依然としてダウンサイクルにある」といったネガティブなシナリオに転換する可能性がある。この高い倍率では、STXの株価は大きな圧力を受けるだろう。

最終的な感想

私の推奨はホールドである。同社は、財務状況の改善や明るい将来見通しなど、前向きな回復の兆しを見せているが、フォワードEBITDAの14倍という現在のバリュエーションは、買いの評価を下すにはまだ十分魅力的とは言えない。バリュエーションが下がり続け、近い将来、より良いエントリー・ポイントが提示される可能性は十分にある。

まとめ

高度な技術を駆使した新製品(32TB HAMR HDDドライブ)を開発し、ストレージメディア業界での主力企業であるSeagate Technology。今年後半から来年後半の1年間での需要の相当量を確保していると見られ、これが2025年度、2026年度の爆発的なEPS成長予測に繋がっているのだと思います。

現在予想されている25’1Q決算(おそらく10月下旬に発表される)のアナリスト予想数字を見て見ると・・・
25’1Q Consensus 予想
Revenue 2.06B(20億6000万$) Y/Y+41.82%
EPS nonGAAP 1.12$ Y/Y+112%
という今までの決算では考えられない成長予測が出ております。

冒頭でも書きましたが問題はこの成長予測の信ぴょう性と、現在の価格織り込み度合いをどう判断するかだと思います。6/12現在の株価は既に101$という52週高値付近を付けており2024年分は完全に織り込み済です。
2025年分のEPSを本気で織り込みに行けばまだまだ株価は上昇の余地があると思いますが、同時にリスクもかなり高くなって行ってしまいます(FEDの金利政策にはかなり敏感に反応すると思われますし、6/13早朝のドットプロットを見て判断するのもありかと思います)

狭い業界内ではありますがトップシェアを取っている企業であることは大きな強みだと思いますし、トレンドにも乗っているので保有しておきたい銘柄であることは間違いありません・・・ただ先ほどから申しております通りリスク度合いが相対的に高い企業だと思いますので、この辺が私に二の足を踏ませております。

いかがでしたでしょうか?
少し長くなってしまいましたが読者様の購入判断の参考になれば幸いです。
意見、コメントなどいただけますと大変励みになります。
最後までお読みいただきありがとうございました。

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