いのちの味
ある日なみだがとめどなく流れ出た
目から頬へ 頬から唇へ
あ、しょっぱい
自分の目からこんなものが
流れ出てくるふしぎ
私の中の細胞
みんないっせいに泣いていた
海でぷかぷか浮かんだ日のことを思いだす
高くなった波が 身体をさらい
穴という穴にしみ込む海水
おお、しょっぱい
わたしたちの祖先は太古、
海から生まれ出たというふしぎ
今も海の中で暮らす
無数のいのちのことを想った
しょっぱいは、
いつもいのちの傍らにある味だ
喜びも悲しみも 生も死も
しょっぱさの中に滲んでいる
涙にくれる夜
わたしはとてつもなく生きている
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