踊り場

いつのことだっただろう
「人生には踊り場が必要だ」
というフレーズを目にして、ほっとした

これまで
目の前にはいつだって
登っていくべき階段があった

それは逃げることすら
考えないような
当たり前の道であり、
上に向かって歩むことが
可能性を広げることだと思っていた
当時の安心の道だった

登って来た階段は
ある日、とうとつに平らになった
次に登るべき階段が
どこにも見当たらない
登りたくても見えない場所に
足を踏み出す勇気は、ない

登るべき階段ではなくて、
登りたい階段を探せばいいのだ、
と目の前の階段がなくなって
ようやく気づいた

階段を登ることができないのは
人生の踊り場にいるからなんだ、
と思えば絶望はしない

踊り場では踊っていればいい
踊りつかれたころ、
次の階段が 
心から登りたいと思える階段が、
見えているかもしれないから

カーテンから透ける光
窓からは舞いこむ木の葉
目を閉じれば
心地よいメロディが包む

この踊り場でまだ夢をみてたい
誰のものでもない
自分だけの夢を履いて


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