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【日記】ウマ娘のネオユニヴァースの育成シナリオに感傷を刺激された話


前置き

 こんにちは、Twitter等で弓川と名乗っている者です。もうTwitterって言わないんですってね、2か月近くnoteを書いていなかったので時代に取り残されてます。おのれイーロン。
 本題は【ネオユニヴァースの育成シナリオについて】からなので、前置き等興味無い方は上の目次から飛んでください。尚、該当ウマ娘の育成シナリオのネタバレを多分に含むことを充分にご承知ください。

 さて。久々に書いている理由なんですが、このような通知が来ていることに昨日気が付きまして。

 自分は遅筆だなんだと言いつつ、なんだかんだ月に1回はなにかしらを書いていたらしいです。いや遅筆ですけど。んで、通知に気付きさえしなければ連続投稿にはなんの執着も無いのですが、気付いた以上は「この継続は続けるのが自然か、無視するのは不自然か」と考える必要が出てきまして。
 いやでもあと1日でなんか書くものあるか?って考えた時に、そういえば直近でプレイした某スマホゲームのシナリオが琴線に触れたことを思い出し、ほなせっかくやから書くかとなった次第です。ここまで前置き。


ウマ娘の話

 『ウマ娘 プリティーダービー』(ウマむすめ プリティーダービー)は、Cygamesによるスマートフォン向けゲームアプリ[1]PCゲーム、およびそれを中心としたメディアミックスコンテンツ。略称は『ウマ娘』。ジャンルは基本プレイ無料の育成シミュレーションゲームで、競走馬擬人化したキャラクターである「ウマ娘」を育成し、「トゥインクル・シリーズ」と呼ばれるレースでの勝利を目指すという内容[6]

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%9E%E5%A8%98_%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%BC

 そういうゲームだそうです。知らない人でもっと詳しく知りたい人はググってください。最近は売上低迷だのKONMAIからの訴訟だので色々言われていますが、先日アプリリリースから2.5周年を迎え、プレイしている分にはたのしい気分なので良いでしょう。
 この手のスマホゲームには、アニバーサリーな時期に「これまで出たガチャキャラの中から一人選んで獲得できるチケットを売るよ」という悪しき喜ばしき文化がありまして。ウマ娘も例に漏れず、半年毎にそういうものを売っています。今回は3,000円分と10,000円分のガチャ石課金にそれぞれ1回ずつ付属してくるもののうち、弓川は前者を買いました。
 ウマ娘自体大してやってないゲームだったこともあり、周年祝いのお布施感覚で買いまして。このキャラと引き換えようという具体的なビジョンが無かったので、性能で見て自分のプレイ環境で活かせそうなキャラをお呼びしました。それが記事タイトルの《ネオユニヴァース》さんです。


ウマ娘公式サイト キャラクター紹介欄《ネオユニヴァース》より

 声優様には詳しくないので雑にググったところ、アニメ『干物妹!うまるちゃん』の切絵ちゃんや『ゴールデンカムイ』のアシリパさん、直近だと『水星の魔女』のニカ姉を演じている方だそうです。弓川的には『シャニマス』のちょこ先や『VALORANT』のネオンに目が止まりました。普通に興味がないのでこの辺にしておきましょう。
 前述の通り、弓川はウマ娘の熱心なユーザーというわけではありません。アニバーサリー期間とかにフラっと帰ってきて新要素をちょっとやるくらいです。ネオユニヴァースさんについてはキャラクタービジュアルと「なんかクールな電波系らしい」という情報しか持っておらず、史実のお馬さんについても全然知らないので本当に性能で選びました。
(分かる人向け:凱旋門で走れる中距離差し特化が欲しかった)

 ウマ娘は単純な育成シミュレーションゲームというわけではなく、プレイヤーであるトレーナー(マネージャー兼トレーニング管理者)と彼女達とが出会い、誰と出会いどのようにレースに出走し、自己実現を叶えるのかという物語を読むことが出来るゲームです。
 そういうわけで、そんな動機ですがせっかくなので育成シナリオをゆっくり読んでから周回しようとしました。弓川は物語を摂取する生き物なので。
 ――甘かったァ。囚われてしまった。史実まで調べて楽しくなったし、なんならこういう記事を書こうと思うほど彼と彼女が気に入ってしまった。はいここから本題です。ここまでも前置き。


ネオユニヴァースの育成シナリオについて

(再度警告:シナリオのネタバレを多く含みます。個人的には、この記事を読むよりもなんやかんやして育成シナリオをその目で読んで欲しいです。ウマをやってない人でも!!)


 ネオユニヴァース(以下、ネオユニ)とはどういったキャラクターであるか。ざっくり書くと「話す言葉が難解過ぎる」「容姿や雰囲気が妙に神秘性を感じさせる」「全てを見透かしているかのように常に落ち着き払っている」といった要素が与えられています。ゲーム内の描写に即して記述すると「彼女の行うコミュニケーションには、知性が高すぎるが故に本人には理解できるが他者には理解できない圧縮言語が多用される」というキャラです。
 総じて「電波」や「理解し難く近寄り難いミステリアスビューティー」という印象をネオユニは持たれていますが、本質的には好奇心旺盛かつぽやっとしてるだけの普通の少女だったりします。……超自然的な能力を使っている描写がいくつかありましたが、普通のウマ娘です。

 好奇心旺盛ということもあり、他者との交流はむしろ好む傾向にあるキャラクターです。トレーナーとの出会いを描いたシナリオでは、自分と他者との間に「断絶」があることを承知し、その上で「対話」を求めたり「共に並び走れば想いは共有できる」と考えたりと、とにかくその断絶を埋めることに前向きな心根を持っています。そして「ネオユニがなにを言おうとしてるのか全部は分からないけど、それでも出来る限り分かりたい」といった意思を持つ、トレーナーという理解者を得たことで、彼女の解釈し難い高位の精神性は他者に受け入れられるように変化していくのです。


ネオユニの用いる圧縮言語の一例。通称ネオユニ語

↑ちなみにこの場面は「クラスメイトから『こいつ運動しても全然体温上がんなくて心配だから上げる方法模索するわ』と実験台にされている」というシーン。訳としては【アファーマティブ=肯定や同意のニュアンス】で【"LIDAR"=指示や指導に相当する名詞】みたいな意味合いなので「うん。どんな指示でも受け入れるよ」みたいなことを言っている。

 それはそれとして、(普通であることを念押しした後でアレなんですが)実はネオユニは「未来」を知ることが出来ます。正確には「自分の基となった"競走馬ネオユニヴァース号が生きた世界"や、それと同じ運命を辿る自分がいる並行世界"を見ることが出来る」という、第三の壁突破案件な特殊能力を持っています。これは現状ではネオユニだけに見られる特徴です。
 ネオユニを含むウマ娘達は「基となった競走馬が辿った、出場レースや怪我や出会いなどをある程度追走する」という設定を持ちますが、それを知っているのは我々三次元の存在だけであり、物語の中の彼らは自分達の元々の運命なんて知りませんし、その世界に現在進行形で生きているだけです。

 そして、そういった超能力?はネオユニに悪い影響をもたらします。史実の競走馬ネオユニヴァース号は「天皇賞(春)」という大きなレースの後、骨折が発覚してそのまま引退という半生を辿ります。それが反映されてか、ウマ娘ネオユニは「並行世界で、天皇賞春に出た後に"世界から自分だけが消える”」という光景を見てしまい、それに怯えることとなります。
 これが彼女の妄想の域を出ないのであればまだよいのですが、シナリオが進む中で彼女は未来予知でもしないと当てられないような未来を次々当てていくのです。当てられた理由はもちろん「並行世界で同じことが起きたのを見たから」です。よって、並行世界の天皇賞の後に自分だけが世界から消え、自分のいない世界が続いていく光景もこのままだと現実になってしまうと考えるようになります。

 彼女の走りを支えキャリアを創り上げていく役目を持つトレーナーは、この恐怖をネオユニから打ち明けられて以来、その未来の回避や「なぜネオユニだけが消えたのか」という原因の模索に腐心します。
 でまあ色々ありまして、並行世界のネオユニが消えたのは「怪我によってもう走れなくなった自分を見るのが辛すぎて、視点主である基底世界のネオユニ自身が無意識のうちに視界から消していた」ことが判明します。

 ここで、ネオユニの「断絶を埋めることに前向きである」という性格に説明が為されます。史実に於いて、ネオユニヴァース号の骨折は天皇賞の次のレースへ調整していた時に発覚したものでした。見つかった時にはもう遅く引退を余儀なくされるものでしたが、それは「ネオユニヴァース号は人の言葉をしゃべることが出来なかった」し「並行世界のネオユニは基底世界のトレーナーような理解者を得られなかったため、他者との断絶が埋まらなかった」から発見が遅れたのではないかというのです。
 要するに「骨折や状態の変化に周囲が早期に気付けさえすれば運命を乗り越えられるかもしれない」という希望が提示され、基底世界のトレーナーと出会ったネオユニであればそれが可能であるという話になるのです。
 果たしてネオユニとトレーナーは天皇賞を終え、その後に体調の聞き取りや身体検査を幾度も慎重に重ねたことで骨折の早期発見に成功し、史実のネオユニヴァース号や並行世界の彼女が辿り着けなかった未来を切り拓いたのです。
ちゃんちゃん。ほな凱旋門育成行こか!


ネオユニヴァース号を最も愛した男

 それだけでは終わらないんですよこのシナリオは!天皇賞を乗り越えてライバル達と切磋琢磨したり青春したりしていく中で、ネオユニはある問いを得ます。
私はなぜ、この宇宙に生まれたのだろう」
 三次元に生きる私の視点であれば「そのように物語が書かれたから」と言ってしまえます。それでも、繰り返しになりますが物語に生きる彼女にはそんな回答は何の意味も持ちません。そして、この問いは更に発展します。
「なぜこの宇宙は生まれたのだろう」

 ネオユニのこの問いが行き着いた答えを書く前に、我々の現実世界に生きるとある男性について触れる必要があります。男性の名前は《ミルコ・デムーロ》といって、今日も日本で競走馬に跨っているイタリア人騎手です。
 今から20年ほど前、デムーロ騎手は日本競馬協会の正式なジョッキーではなく、3ヶ月だけ有効な短期免許によって騎乗を許されていました。その3ヶ月の間に乗った競走馬こそネオユニヴァース号であり、デムーロ騎手がG1(最も格の高いレース区分)を初めて獲得しただけではなく、G1レースの中でも更に格の高い【日本ダービー】に外国人騎手として初めて優勝したという栄誉まで授かった、ベストパートナーといえるペアだったそうです。
 3ヶ月の期限が終了し別離を迎えても、デムーロ騎手はこの時の経験を忘れませんでした。2015年には日本での正式な免許を取得し、今も活躍なさっています。ネオユニヴァース号が亡くなった年に行われたインタビューでは「ネオユニヴァースに出会えなかったら僕の人生はどうなっていたかわからない」といった発言もあったようで。

 ウマ娘に戻りましょう。ネオユニは先の問いの答えを考えて考えて考えた結果「あなたと過ごしたかっただけ」という解を得ます。ネオユニが見た別世界……つまり我々の世界にいるある男は、世界で一番ネオユニヴァース号を愛していました。今だってきっとそうです。
 そして、彼に似た情熱と献身を自身に捧げたトレーナーが彼女の隣にはいます。ネオユニヴァース号の運命がネオユニに宿るのであれば、デムーロ騎手の想いがトレーナーに託されるのも然りでしょう。
 その熱が次元の壁程度を越えられないわけがない。燃えるような3ヶ月の後の失われた時間を取り戻す。たとえ走れなくともずっと隣にいたかった。そんな願いが、もしかしたら「喋れない彼」にもあったのかもしれない。

 すると、どこぞのゲーム会社にその願いを叶えようと立ち上がった者がいました。あなたが彼を一番愛しているように、彼もあなたを愛していたはずだという物語を作るために、この宇宙を生み出しました。
 ネオユニヴァースの現役時代、彼の欠点を尋ねられたデムーロ騎手は「賢すぎて(唯一挙げるなら)人間の言葉を喋れないことぐらいだ」と語ったそうです。ウマ娘のネオユニヴァースにはその要素が「意思疎通に難がある」と変換されて与えられ、このような物語が書かれたと。ほーん。

 弓川は常日頃より「人は根源的に理解し合えない。我々が他者の完成を知る日は決して来ない」とかいうすげーネガティブなことを考えてます。ここでいう「完成」とは「その人が思ったことや感じたことを100%表す言葉」だと思ってください。
 ネオユニの場合それは顕著と言えます。彼女は、自分の気持ちを自分にとっては出来る限り伝えられている表現で対話します。しかし他者にはそれが意味不明に聞こえてしまう。これこそ彼女の言う「断絶」だと私は思います。
 トレーナーと出会い人に伝わるような言葉の遣い方を模索してはいますが、それはネオユニの「完成」からどんどん内容を削って削って具体化していく作業をしているとも言えて、私はそれが悲しい。

 ただ、そんなネガティブがあったとしてもです。そうしてでも他者と繋がることや交流を深めることに価値があることも私は知っています。たとえ決して伝わることは無いと分かっていても、それでもそれを伝えようとしたり、伝えたいと思ったりしたことに必ず意味はある。そして、ひどく抽象的なその意味を人は愛と呼ぶのだと狂信もしています。
 そんな思考を持ってる者がこんな物語を読もうものなら、noteの1枚や2枚は書きたくなるでしょう!!いや凄いですよこの物語。私ネオユニのシナリオ読み終えて「畜生なんだよこれは!!!」って調べるまで史実のこと本当に何も知らなかったのに、それでも強烈なを感じられたんです。


おわり

ネオユニヴァースの育成シナリオ、本当に良かったです。
これまでリアルのお馬さんのことはなにも知りませんでしたが、これを機にデムーロ騎手のファンになろうと思います。
あと映画『インターステラー』が原典にあるそうなので視聴してみます。

そういうわけで、ここまでお読みいただきありがとうございました。

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