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エスパルスユースvs柏レイソルU18

こんにちは、今回は2021年5月1日に行われたエスパルスユースと柏レイソルU-18の試合から、昨年のエスパルスユースがどんな事をしていたかを見ていきます。

これまでエスパルスユースの試合を見た事はなかったのですが、数年前からエスパルスのアカデミーがヘッドオブコーチングの森岡さんを中心に新たな取り組みをスタートさせた事、そして昨年のエリートリーグの横浜Fマリノスとの試合でユース(トップの選手も数名混じって)の戦いぶりを見て興味を持ちました。

ここでは試合全体ではなくエスパルスユースがどんなサッカーをしているか見ていきます。
では両チームのフォーメーションです。

エスパルスが442、レイソルが532になります。くしくも先日行われたトップの試合と同じ形です。
ここではエスパルスがどのようにレイソルゴールを目指していたか解説していきます。

エスパルスはGKからロングボールを蹴ることはあまりなく、まずはCBに渡して攻撃を組み立てます。CBにボールが出た時の形が上の図のようになります。
レイソルの1列目(FW)の守備は2枚。ここからエスパルスは

GKもしくは片側のSB(特に右SB)が最終ラインに入ります。これでレイソルの1列目の守備に対して優位な形をとります。
ここから逆のサイドまでパスを繋ぎます。

こうすることによりフリーのCBにボールが渡ります。レイソルの中盤は3人でスライドして守るので、ボールを逆サイドにもっていかれるとどうしても対応が遅れます。これでレイソルの左のCHに対して余裕を持った状態で2対1の状況を作ることができます。
この相手が前からボールを奪いにきている中でフリーで前を向いた状態を、森岡さんはYou Tubeでアカデミーではこれをオープンな状態と呼んでいると説明しています。ここから狙うのは

相手の裏のスペースになります。
ここで考え方として大事なのは、ただ裏のスペースを狙うではなく、サッカーをいうゲームの上で高い位置からボールを奪いにいく場合、最終ラインと前線の間はコンパクトにしなければならず、11人で守っている以上必ずこここにスペースができるからそこを狙うという事です。

森岡さんはエスパルスアカデミーの原則として、このような形でオープンな状態になったらまずそこを狙うと述べています。つまりそれはチーム全体の共通認識もしくは判断基準と呼べるもので、この状況になったら前線の選手もまずは裏を狙います。
この試合でも

前線の選手がそのまま裏のスペースに走り込んだり、タイミングを合わせてSHが相手WBを引き出して、その裏にFWが走り込むなどして一気にレイソル陣内に入っていく事が繰り返されていました。
ここで重要なのは先程述べたように、チーム全体がこの狙いを持っていることです。なので(ここではSBが)ボールを持って前を向いた瞬間に前線の選手が同じ意図を持って動き出します。そしてこの試合でもマリノスとの試合でもそれはとてもスムーズに行われていました。
(マリノスはもっとサイドに圧縮してくるので、その試合では逆サイドのフリーの選手までサイドチェンジを行う事が多かったです)

次に先制点のシーンです。
上で説明したようにエスパルスはGKからボールを繋ぎますが、レイソルの守備を見てフリーの選手を作り、無理にパスを繋ぐのではなくレイソルの最終ラインの裏に必然的にできるスペースを効果的に使った攻めをしていました。
そして先制点もサッカーで必然的にできるスペースとチーム全体の判断基準から生まれます。

相手の選手がフリーであればDFは高い位置をキープして守備をする事は当然できません(してはいけない)。エスパルスのSBがフリーで前を向いたなら裏にボールを送られるので、レイソルのCBはエスパルスのFWより先にボールに触るためにラインを下げます。そうすると今度は

このように前から行っているレイソルの中盤との間にスペースができます。サッカーはこの大きさのフィールドに対して11人でゴールを守らなくてはなりません。そうすると必ずどこかにスペースが生まれます。
そしてこの状態になるという事をチームで共有しているので、エスパルスユースはチームの判断基準を元に選手が状況判断をしてこのスペースを使います。

先程と同じようにボールを回してフリーの選手を作って、そこでレイソルの最終ラインが下がったと見ると

裏ではなく中央にパスを出して、そこから逆サイドでフリーになっている左SBに展開します。
レイソルの守備は今度はエスパルスから見て右にスライドしていたので、このSBは余裕(時間)を持ってクロスを上げる事ができます。

あとはフリーで上げられた良いクロスに対して中で勝負。ここでは今シーズントップ昇格した千葉寛太が相手CBの前に入ってヘディングしてゴールを奪いました。
この先制点の少し前にも逆サイドから似たような形を作っていて、これがチームとして狙いがあってのゴールだった事が分かります。

まとめ

このように、実に理にかなった形でエスパルスユースは攻撃を行っていました。
ちなみにエスパルスユースの3点目は、ゴールを奪わなければならなくて前掛かりになったレイソルの裏のスペースを使ったものでした。

ここで書いたようにこの試合のエスパルスユースは決して難しい事はしていません。最終ラインで数的優位を作って相手の陣形を見てフリーの選手を生み出し、そこから相手の守備からできるスペースを使ってゴールに迫る。非常にシンプルですが効果的でした。
シンプルですが

サッカーゲームの原理→チームの判断基準→選手の判断・技術・アイデア

と必要なものが完璧に積み重なったチームになっていました。

そしてこの試合だけでなくマリノスとのエリートリーグでの試合でも同じようなサッカーがされていて、アカデミー全体の取り組みが良い方向に向かっている事をはっきりと認識できるチームだったと思います。

では今回はこの辺で。最後まで読んで頂き有難うございました。



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