見出し画像

半径5メートルの世界

例えば誰とも比較せずに生きることが出来たなら、今よりずっと楽に生きられるんじゃないかって気がしたりする。自分にしか自分の人生のハンドルは握れないし握らせたくもないが、誰のことも傷つけず誰にも傷つけられずに生きるということは他者との関係を無にする以外に方法はない。だけど誰とも関わらずにこの世界を生きていくことは不可能だ。チームではなく個人でやる仕事であっても、必ずそこに関わる人というのが存在する。最近誰と話していても相手の話に興味が持てず一体どうしたもんかと思っているのだが、生理前でイライラしているからだろうと無理やり結論づけることにした。相変わらず本は読んでいるし世の中の全てに対して興味を失ったわけではない。これは昔からであるが人でもモノでも興味のある場合とない場合の差が激しい。「大人になれば丸くなる」とか「角が取れる」なんていう話を聞いて30歳を過ぎれば自分もそうなっていくのかもしれないとまだ見ぬ未来をぼんやりと空想したこともあったが、大人になるにつれ濃淡はむしろくっきりと分かれるようになった。人間関係はよりシンプルになったし一人でいることに前ほど寂しさを感じなくなった。ただ、これは誰と一緒にいたとしても結局孤独であることに変わりないのだということを悟ってしまったからなのか、単に一人の時間が長すぎて慣れてしまったからなのか理由は定かではない。好きな人や彼氏ができればまた寂しいという気持ちが沸き上がるようになるのだろうか。例えば街ですれ違う恋人たちを羨ましいと思ったりすることがなくなった。あんな風に幸せそうに一緒に歩いていても必ずしも二人の心がつながっているとは限らないことを身をもって知ってしまったからである。女は見栄っ張りな生き物で、死にたいほどの悩みを抱えていても絶対に他人にバレないように笑顔を取り繕って幸せなふりをして生きている。インスタは基本的にそういった幸せ(のふり)自慢の場所でしかないしいかに自分が幸せで恵まれているかということを他人に認めさせイイネの数を競い合い他人より自分が上であることを証明してもらわなければ安心することができないといういわば病理の巣窟だ。本来であれば幸せというのは一人で、もしくはその場に一緒にいる人とのみ分かち合えればいいもの。美味しい料理も美しい景色も二人で誓い合う愛も、他人にイイネをしてもらう必要なんてどこにもない。「昭和生まれのババアが古い考え語ってるよ」と言われてしまえばその通りであるしそう思ってもらって構わない。ただSNSに振り回されて誰かにイイネをもらえないと自分の価値を感じることができなくなるという状態にはならない方が身のためだとだけ言っておきたい。究極を言ってしまえば自分と自分が生活するうえで実際に関わる人以外、どうでもいい存在だ。セレブのゴシップも芸能人の熱愛も不倫も薬物使用も所詮、会ったことのない他人の出来事である。半径5メートル以内にいる人たちを大切にできればそれでいい、それがいい。
ー完ー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?