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「ラッパーだったら異世界に行っても魔導士で通用する説」本編

・MCバトル会場
2,000人位入る大きな会場にお客さんがパンパンに入っている。
カリオストロのモノローグ「俺の名前はカリオストロ、かつて相方のライムニルスと共にギリギリブラザーズというラップデュオで活躍していた。が、人気絶頂の頃、ライムニルスが謎の失踪を遂げ人気は低迷。俺は細々とラッパー稼業を営んでいる。現在妻とは別居中、39歳の中年ラッパーが今MCバトル会場にいる」

・同・楽屋
オーガナイザー・中島「何しけた顔してんのよ。かつて一世を風靡したカリオストロがMCバトルに参戦。みんな、あんたに注目してんのよ」
カリオストロ「中島さん、すみません。MCバトルなんてもう15年ぶりでちょっと緊張してます」
中島「何言ってんの。ギャラも弾んでいるんだから仕事はしてよね。それに今は空前のMCバトルブーム。ここで結果を出せれば、また次もあるから。そうすればほら、あんたが抱えている借金も返せるし、奥さんも戻って来るかもよ」
カリオストロ「あぁ中島さん、その話はちょっと。いや中島さんには敵わないな」
中島「とにかくあんた頑張んなさいよ」
中島が楽屋を出て行くのと入れ替わりでリルヤマトが入って来る
リルヤマト「うす!一回戦でカリオストロさんとバトルさせてもらいますリルヤマトです。よろしくお願いします!」
カリオストロ「お、おう。よろしく」
リルヤマト「自分、中学ん時ギリギリブラザーズの曲聞いて育ったんで、今日スッゲー楽しみにして来たんすよ。実はアルバムも今持ってきてて、サインとかいいっすか?」
カリオストロ「中学の時か、若いな君。(サインをしながら)好きな曲とかる?」
リルヤマト「あれっす。カリオストロさんのリリックで、マイクでサバイブ 切れ味ナイフ 死ぬ直前まで吐き出すライム 一片の悔いなし…」
カリオストロ・リルヤマト「It's my life〜♪」
リルヤマト「うっわーマジ最高!マジでリスペクトです。(CDを受け取って)あざっした!」
リルヤマトが楽屋を出て行く。
カリオストロ「なんか昔のMCバトルとは雰囲気違うな。礼儀正しいし、すごく良い子そうだし、あんなんでバトル出来んのかな」

・同・ステージ
リルヤマト「一発屋のおっさんラッパー あんたの居場所はここにはないぜ」
カリオストロが口をポカンと開け、驚いた表情をしている。
リルヤマト「お客さんが一番見たいもの カリオストロの首刈り落とすところ ア〜イ」
湧き上がる会場

・同・楽屋
中島「ちょっとあんた、なに負けてんのよ」
カリオストロ「いや最近の若い子は上手いなぁ、はは」
中島「上手いのは当たり前よ。フロウで若い子に敵う訳ないでしょ。あんたは韻踏むのは上手いんだから、あとはバイブスよ。なのに今日のあんた、一発デカいの喰らった後に、極端にバイブス落ちたわね。顔に負けが出てたわよ。やられてから、どうやり返すかがラッパーの腕の見せ所でしょ」
カリオストロ「いやなんせ15年ぶりのMCバトルで」
中島「また言い訳する。ライムニルスが失踪した時もそう、奥さんが逃げた時もそう、あんたの悪い所が出てる。ここが踏ん張り時ってところで諦める」
カリオストロ「(逆ギレしながら)中島さん、もう勘弁してくださいよ!」
中島「何よ!こっちはアドバイスしてんのよ」
無視して会場を飛び出すカリオストロ

・公道
カリオストロ「くっそー、そんなの俺が一番よく分かってるつーの」
その時、カリオストロがトラックに跳ねられる。
血だらけで倒れているカリオストロ
カリオストロ「(目を閉じながら)ここでTHE ENDかよ」

・異世界・お花畑(昼)
カリオストロ「…ん、ここは?俺、トラックに轢かれて(周りを見渡し)そうか死んだのか。死んだらお花畑が見えるって本当だったんだな」
ヒップホップの衣装のまま歩き出すカリオストロ。

・同・森の中(夜)
カリオストロ「おかしい?夜になったし、腹も減ってきた。やばい寒い」
その時、女性の叫び声が響き渡る
イオリーヌ「きゃーーー!!!」
咄嗟に駆けつけるカリオストロ
カリオストロ「なんじゃこりゃーー?」
そこにはスライムたちに囲まれた金髪美女がいた。
イオリーヌ「そこの奇抜なお召し物をしている殿方、助けてください」
カリオストロ「奇抜な…ってsupreme知らないのかよ」
近くの棒切れを持ってスライムに突進していくカリオストロ
だが、スライムに避けられ、逆に体当たりを受けてしまう
カリオストロ「いってー!めちゃくちゃ痛えじゃねぇかよ」
イオリーヌ「あぁどうか神様どうか我々をお助けください」
カリオストロ「くっそー!マジかよ!(小声で自分を鼓舞するように)マイクでサバイブ 切れ味ナイフ 死ぬ直前まで吐き出すライム 一片の悔いなしIt's my life」
その時、一体のスライムがダメージを受け飛散する。
カリオストロ「え?何が起きた」
イオリーヌ「あなた様は魔導士だんたんですね。確かによく見れば魔法使い特有の帽子を被ってらっしゃる」
カリオストロ「あ、いやこれNEW ERAキャップです」
カリオストロ心の声「(にしても、なんでスライムがぶっ飛んだ?まさかラップが攻撃になるのか?)」
カリオストロ「Yo Yo Yo スライム相手に繰り出すライム 千枚切りだぜ速攻スライス 腹が減ってまじ辛いっす 勝って打ち上げ 食うオムライス」
何匹ものスライムがダメージを受け死んでいく。それを見た他のスライムは一目散に逃げ出していく。

イオリーヌ「私の名前はイオリーヌ。ハージマーリの村で巫女をしております。村の者が病で倒れ、特別な薬草を採りにこの森に。帰り道、まさかスライムの大群と出くわすとは。助けて頂き感謝申し上げます」
カリオストロ「俺はカリオストロ、正直この世界のことはよう分からん。もしかしたら異世界に迷い込んじまったのかな」
イオリーヌ「あ、旅のお方でしたか。どうりで天使の翼が生えたブーツを履いてらっしゃる。さすが魔導士」
カリオストロ「これNIKEな。天使の翼じゃないから」
その時、カリオストロの腹の虫が鳴る。
イオリーヌ「(微笑んで)どうぞ村へ案内します。歓待いたしますわ」

・ハージマーリの村・教会(夜)
特別な薬草を切り刻むイオリーヌ
そこにカリオストロが現れる。
カリオストロ「さっきは飯ありがとうな。コカトリスのトマト煮、意外と美味かったよ。(イオリーヌが草を切り刻んでるのを見て)手伝おうか。こう見えてクサの取り扱いには慣れてるんだ」
イオリーヌ「ありがとうございます。ではジョイントを巻いてくださいますか?」
カリオストロ「ジョイントってまるで大麻みたいな…(薬草をよく見て)…ってこれ大麻だな!」
イオリーヌ「大麻?なにを言ってるんですか?これはマリファナですよ」
カリオストロ「一緒だよ!異世界すげーな」

・同・宿屋(朝)
イオリーヌ「カリオストロ様、起きてください」
カリオストロ「おはよう、イオリーヌ」
イオリーヌ「実は昨夜のことを村長に話したら、すぐにカリオストロ様を連れて来るようにと仰るのです」
カリオストロ「あぁ分かった、行くよ」

・同・村長の家
村長「カリオストロよ、そなたを魔導士と見込んで話がある」
カリオストロ「(複雑な表情で)魔導士?はい、魔導士です」
村長「実はイオリーヌからそなたの話を聞き、思い出したのじゃ。先祖代々伝承された話を。世界に混沌が訪れ、村に禍が降り注ぐ時、魔法の言葉を紡ぐ者が現れる。その者に魔法の杖を渡せよ。さすれば世界は平穏を取り戻すであろう」
カリオストロ「魔法の言葉…ラップのことか」
村長「今世界は闇の勢力が力をつけ始めている。大魔王サグバーンが現れてから、光と闇のバランスが崩れたのじゃ。最近では村の近くまでモンスターが現れるようになってしまった。伝承が本当ならそなたにこの世界の未来を託したい」
村長、丁重に包まれた木箱を取り出す。
村長「これが魔法の杖じゃ。今まで誰一人としてこの魔法の杖を使いこなせた者はいない」
木箱を開け、杖をカリオストロに渡す
カリオストロ「(魔法の杖をよく観察し)これマイクですね。素材は魔法石ぽいのを使ってるみたいですけど、形状はマイクです」
村長「さすがは魔導士様。お見それいたしました。どうですか?使いこなせますか?」
カリオストロ「そうですね〜(マイクの頭部分を握り口に持ってくる)」
村長・イオリーヌ「えぇぇ?!」
カリオストロ「な、な、何ですか」
イオリーヌ「危なくないですか。その丸い部分、握って大丈夫なんですか」
カリオストロ「大丈夫ですよ。その方がラップするのに…あ、いや魔法を詠唱するのに声が通りやすいんですよ」
村長「さすがは魔導士様」
カリオストロ「ちょっと試しに声出してみますね。(マイクを口に近づけ)マイクチェックワンツー」
すると机の上に置いてあった食器類が全部吹き飛んだ。

モノローグ「その後、カリオストロはイオリーヌを連れてモンスター退治の旅に出る」

・ジョーバン山脈
ガーゴイルとのバトル
カリオストロ「俺のスキルで速攻キル 今日の相手はガーゴイル お前を閉じ込めるカゴがいる 飛べない鳥ならほらボイル」
倒れるガーゴイル。喜ぶイオリーヌ。
イオリーヌ「すごいですね。私にも魔法を教えてください」
カリオストロ「だったら初めて会った時の魔法なんてどうだ?マイクでサバイブ 切れ味ナイフ〜♪」
イオリーヌ「あ、それいいですね」

・大魔海
クラーケンとの戦い。船がクラーケンの触手でぐるぐる巻きにされてる。
船上からラップを繰り出す。
カリオストロ「クラーケンお前の足は10本 俺は正々堂々マイク一本 ここから逆転するのがHIP HOP  海上戦デビュー はじめの一歩 お前はなってる顔面蒼白 イカしたライムと刺身醤油 残さず喰らうぜ俺はジパング 魔導士としても進化中」
次のシーンではイカ刺しを食べているカリオストロとイオリーヌ

・テンカーンの廃墟(夜)
ここに巣食う亡霊たちを退治した直後のカリオストロとイオリーヌ。
イオリーヌ「最近ますます魔法の詠唱スピード、威力が増していますわね」
カリオストロ「そうだろ。自分でも魔法スキルが上がってるのを感じるよ」

そこに突如として黒づくめの騎士が現れる
サグナイト「お前が噂の魔導士か。サグバーン様の命によりお前を殺す。魔法詠唱・倍速ラップ」
カリオストロ「え?ラップだと…」
サグナイト「どこの魔導士 決める魔法陣 袋小路で消えなbullshit 土(アース)風(ウインド)火(ファイヤー)水(ウォーター) マナから得た四属性ライマー ブリンブリン素材はオリハルコン アモンよりも俺は利口 異世界ラッパー奪う希望 サグナイトがカマす一歩リード」
カリオストロ心の声「(ヤバい。上手い。ファンタジー、ヒップホップ2つの世界のスラングを使い完全オリジナルのラップをカマしてきたぜ)」
連続攻撃による衝撃でぶっ飛ぶカリオストロ。
カリオストロ「あんなの勝てる訳ねぇ。あーあ、こっちの世界でもダメだったか。ここでTHE ENDかよ」

・カリオストロの薄れゆく意識の中
回想シーン
中島「やられてから、どうやり返すかがラッパーの腕の見せ所でしょ。あんたの悪い所が出てる。ここが踏ん張り時ってところで諦める」

カリオストロ覚醒「うぉぉぉ!」
サグナイト「バカな、もう動けるはず…」
カリオストロ「(バイブス全開で)異世界うるせぇ そんなもんは知らねぇ チートもビートも何にもいらねぇ どの世界行こうが俺は俺 Ready to die だぜ 覚悟は出来てる 死に体引きずり生きてやる マイクでサバイブ 切れ味ナイフ」
イオリーヌ・カリオストロ「死ぬ直前まで吐き出すライム 一片の悔いなしIt's my life」
吹っ飛ばされるサグナイト

・テンカーンの廃墟(朝)
カリオストロ「サグナイト、一つだけ教えてくれ。お前ラップをどこで覚えた?」
サグナイト「サグバーン様から直々に教えて頂いた。(写真を取り出し見つめながら)サグバーン様申し訳ありません。ここでTHE ENDです」
絶命したサグナイト。手から写真が落ちる。それを拾い驚くカリオストロ。
カリオストロ「おい嘘だろ。サグバーンってライムニルス、俺の元相方だよ。まさかお前も異世界に来てたなんて」

モノローグ「かくしてカリオストロ一行は大魔王サグバーンことライムニルスを探す為、冒険の旅を続けるのであった」

<完>


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