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無敵のそるじゃ~

先の大戦の勇者たち列伝を書いてみよう。 先の大戦。言わずとして大東亜戦争である。大東亜戦争で輝かしい戦歴を誇るお歴々たちのお話である。
3人のそるぢゃーがおられた。


一人は階級が何と中尉殿である。下手したら、東京裁判で裁かれていたかもしれない戦人(いくさびと)である。一人は軍曹殿、一人は完全無欠の二等兵さまである。


みなさん平成に入り、80を越した立派な年齢となっておられました。
軍曹殿はちょっとした大きな会社の会長さんです。戦争が終わり焼け野原だった日本の復興に尽力された立派なご仁である。 戦争でよほど嫌なことがあったのだろう。階級は教えてくれたが、それ以外戦争の話は一切されなかった。 


一人は完全無欠の二等兵殿。この方は、80代男子ではとても珍しい、とにかく素直な方。そしていつもニコニコと笑顔で「いいよ」と私の出したオーダーに答えてくれる人間味あふれるご仁だった。人の良さが全身からにじみ出ているような人だ。


この二等兵殿、半側空間失認と言う世にも奇妙な症状の方である。まぁ、簡単に説明すると。左半分の世界がなくなっちゃう症状ですね。右しか世界がない。左側が見えてないというのとはちょっと違う。左側の世界がなくなるのである。 なので、少し歩いただけで、ぼっかんぼっかん、柱や机に体当たりしていってしまうのである。


ゆえに、二等兵殿はいつも傷だらけのボクサーの様に顔を腫らしておられました。
(半年後、私の鬼のリハビリで柱にあたらなくなりましたけどね(笑)) 


サー最後の大トリでございます。


我らが中尉殿。この方は凄い、私が数多知りあってきた、ソルジャーの中でも群を抜いて階級が高い人である。 口癖は「もう少し戦争が長引いていたら、わしは大尉になるはずだったのだ」である。とにかく偉い方である。 


お三人の紹介が終わったところで、物語を進めてみましょう。 


軍曹殿は戦争が終わって会社を興して偉くなった人である。つまり、戦争自慢をするご仁が大嫌いなのである。まぁ、階級が少しでも上の人は戦争が終わって何十年たっても偉そうにしたがる節がある。軍曹殿が毛嫌いするのも理解ができる。


嫌いなら関わらなきゃいい。しかし、軍曹殿と中尉殿そして二等兵殿。この三人。どーーしても、関わらなきゃいけないのっぴきならない事情があったのである。 


それは・・・・・。 


私が作った将棋クラブに所属している、たった三人しかいない部員だったからである。 将棋はしたい。でも中尉殿はそこはかとなく偉そうなので、軍曹殿は関わりたくない。そんな軍曹殿の気持ちなんて知ってか知らずか、中尉殿はごーいんぐまいうえー。


「そうか、貴様も将棋を指すのか、ならば相手をしてやってもいいぞよ」


と、どこまでもふわーーっと上から目線。 


そんな中尉殿の態度に腹を立てる軍曹殿。そんな中、私が頼みの綱にしていたのが、二等兵殿である。この方は素晴らしい。誰に対しても分け隔てなくニコニコ。そして二等兵殿は凄い特技を持っておられた。


それは・・・・・。


二等兵殿は将棋がめちゃんこ弱いのである。普通将棋が弱い人は将棋を指したがらない。なのに二等兵殿は気ぃ良く、将棋を指し続けてくれる。スゴイ!!


まぁ、そんなんだから、二等兵殿は勝ちたい症候群の軍曹殿や中尉殿から絶大なる人気があった。 


二等兵殿はとにかく負ける。コテンパンに負けたおす。そりゃそうである。思い出していただきたい。二等兵殿は左半分の世界がないひとである。左側から角や飛車が飛んできてはひとたまりもない。


だけど、ニコニコと楽しそうに将棋を指している。 大概の男子は将棋で負けると、くさくさして二度と将棋を指さなくなるのが常だが、二等辺殿は「将棋をしよう」と誘われると、どれだけ負けていても、「いいよ」と二つ返事で答えてくれる。天使のハートの持ち主。 


ある日、二等兵殿を巡って、軍曹殿と中尉殿のバトルが勃発した。「俺と将棋を差すのだ。」「いや、俺だ!!!」てな感じ。 


「けんかをやめて♪二人を止めて♪私のために争わないで♪もうこれ以上♪」
と、竹内まりや張りに二等兵殿が懇願しても二人の喧嘩は収まらない。


二等兵殿は困った顔で「それなら、みんなで将棋をしよう!!!」と提案。

 
な、なんて平和的解決!!!全身全霊前向きなご意見。三人で将棋!新しい。私みたいな凡人では思いもよらない発想です。ブラボー!!素敵ですぞ二等兵殿!!!二等兵殿の神対応に涙が零れそうだ。 


てんやわんや、いがみ合ったり、どなりあったり、大笑いしたり、とにかく盤上の戦人たちは今日も楽しそうに将棋を指すのだった。 めでたし、めでたし。

中尉殿、軍曹殿、二等兵殿。お一人お一人のエピソードもかなり濃いのでいつか書きますね~。(笑)

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