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え~話したるわ~。

男は大阪環状線のとある駅で電車を降りた。仕事で人に合わなければならなかったからだ。


駅からその人のいる事務所まで徒歩で約5分とグーグル先生が教えてくれていた。しかし、グーグル先生の言う通り道を進むがなかなか目的地にたどり着くことができない。 


徒歩約5分の道のりをどうにかこうにか30分かけて目的地にたどり着くことができた。 


事務所に入り、挨拶を済ませるといよいよ商談開始である。商談に入った直後、かる~くだが下半身に尿意を覚えた。 


だがしかし、今の今商談に入ったばかりでいきなり。トイレに行かせてください。とは言いずらい。 


男は少し我慢してからでいいだろうと商談を進めた。 


商談時間は約1時間半かかった。 ありがとうございました。と頭を下げて事務所を後にした。 


公道に出たとたん。我慢に我慢を重ねていた尿意が猛烈に襲ってきた。 


とりあえず、喫茶店か何かを探そう。そこですりゃいいか。 と高をくくって駅へと足を向かわせたがそういう時に限って、喫茶店どころか入れそうな店らしき店がなかなか出てこない。 


いよいいよ、尿意マックス。膀胱破裂寸前。歩く振動でさえ、冷や汗をかき立たせる。


もうダメだ。そう思った瞬間、コンビニの看板が目に入った。


これは、渡りに船と足早にコンビニに飛び込んだ。 トイレ、トイレ、トイレ。 コンビニの中を見渡しトイレを探す。コンビニの一番奥にトイレを発見。男は小走りにトイレへと駆け込んだ。


あーもうダメだ!!と最後の力を振り絞ってゆるもうとする尿道括約筋に力を込めてトイレのドアを開けた。 


すると和式トイレに年の頃なら小学4年生ぐらいの少年がケツを出して座っていた。 


即座に他のトイレがないか見渡したが、トイレは一つしかないようだ。 脂汗が滝のように零れる。 


「お前何やってんねん」 トイレでケツを出している少年に「何やってんねん」もおかしな質問だが、尿意マックスのいら立ちから、口から零れた言葉だった。


「お前何やってんねん」と男の問いかけに対して、少年は首だけ振り返らせて、「おっちゃん、うんこでーへんねん」と泣き顔で答えるのだった。


「便所に鍵ぐらいせい!!」 と男はいら立ちをドアに乗せバタンと乱暴にドアを閉めた。 


ドアを閉めて30秒ほどで、我慢の限界がすぐに来た。 再び男はトイレのドアを開け「おいまだか!!!!」と少年に言い放った。


「おっちゃん。ごめ~ん。まだウンコで~へんねん」 と少年は眉根を下げて申し訳なさそうな表情を浮かべるのだった。


ほなしゃーないな。という気持ちと早よーしてくれや。という複雑な気持ちをトイレのドアに込めて、ドバン!!!とドアを閉めた。


しかし、この状況を何とかしなければならない。後ろを振り返ると掃除道具入れが目に入った。もうここでするしかないか? そう考えているとちろっと尿がちん〇んの先から漏れてしまった。


やばい、これは決壊の前触れ、やばい、やばい、やばいですよ。とあたりを見渡すと、ちょうどちん〇ん。の高さに手洗い場があった。 男は一物を急いで手洗い場に投げ出し。勢いよく尿を放出! 


九死に一生の瞬間である。 しかし、運が良かったのか悪かったのかそこは手洗い場である。当然のように大きな鏡が目の前にドカンと設置されていた。
ジョンジョロ、ジョンジョロと男のシンボルを投げ出して排尿している自分の姿が鏡越しに店内に丸見えになっていた。 


やばい、やばいですよこれは!! と焦った。しかし、溜めにため込んだ「おしっこ」である。そう簡単にやすやすとは終わらない。 誰かが後ろに立ったら、変態決定。店員を呼ばれて、もしかしたら、警察まで呼ばれてしまうかも。


と最悪の事態を想定しながら終わらない尿を手洗い場に流し込む。すると便所の中から、少年が 「おっちゃん、お腹痛いねんけど、うんこでーへんねん。どないしょーー」 と泣き声で叫んでいる。 


しらんがな、こっちも犯罪者になるかどうかの瀬戸際やねん。と焦りながら、「そうか、腹痛いんか、とにかく腹さすって、はようウンコ出せ!!」 とだけ、助言して、己の排尿に全神経を集中させた。


どうにか、誰にも発見されずに無事排尿を終えた男は急いでちん〇ん。をズボンにしまって。いましたが排泄した手洗い場で手を洗い。事なきを得た。
ほっと、胸をなでおろした男は帰り際トイレのドアを開けて、 「少年よ成せばなるや、ガンバレ」 とエールを投げかけてトイレのドアをそっと閉めた。

 
そう、武勇伝(?)を話す実父。病室で、母と妹、そして私の笑い声が病室内にこだまする。家族全員で親父の話を聞いて腹がよじれんばかりに大笑いした。 


「〇〇さん。いまから手術室に行きますので、ストレッチャーに移ってください」 と看護師から指示を受けて、私はストレッチャーに乗り、オペ場へと向かった。 


実の息子が生きるか死ぬかの大手術をする直前に「え~話したるわ」と聞かせる会話がこれか!!!! と思いながらも、家族全員の笑い声に包まれながら私は手術室へと入っていった。

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