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信心

印象に残っている患者さんシリーズで書いてみよう。


94歳のお誕生日を迎えたばかりの〇〇さん。両足は全く動かず寝たきり状態を強いられて、はや6年。両目も見えず足も動かない状態で6年間入院生活を続けておられる。


そんな彼女が言うには「先生、私はずっと若いころから信心をしてきたが、こんなに何にもできなくなって、ただの厄介者になってしまって、それでもお迎えが来てくれない。やっぱり、信心がまだ足りないって事かね〜」悲しみと落胆をないまぜにした顔で、視線を空に投げる彼女に返す言葉が見つからなかった。


「その問は今の私にはお答えする事ができません。若輩ですみません」
私が頭を下げると、「先生でも分からんことがあるんやね〜」と、彼女は二カッ笑って、「しょうがないか」というような、あきらめを含ませた短いため息をついた。


彼女は尿道バルンを宝物のように抱きかかえ、看護師に車いすを押されて居室へと帰っていった。


信心が足りないから短命。というなら、いざ知らず…


信心が足りないからお迎えが来ない。


胸に杭を打たれたような衝撃を受けた。


私の2倍以上人生を生き抜いてこられた方の言葉は、重みが違うなぁ〜。

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