恋愛日記、最終章

感情は、いつか消えてしまう。その人に対して、私が恋愛感情を抱くのはきっともうこれが最後で、今日を最後に思い出せなくなる気がしたから、書き留めておこうと思う。

思い返せば、全ての瞬間が愛おしかった。その人の視点フィルターを通して見る世界はいつも私が見る鮮度の高い、でもノイズの多いリアリティとは大きく違っていて、本当に繊細で美しかった。

一緒に、いろんな景色を見た。そのどの瞬間も、特別で二人だけのもののように感じてしまった。そう思いたくなるほど、ノイズのない、涙の溢れてしまうような美しい景色だった。

一緒に、雪を見た。雪山に、二人きりだったような気がした。ただの食事は、忘れたくないくらいに暖かくて、一人じゃないと強く思うほどにそばにいた。私からみるその人の持つ視点、景色は、いつも不安になるくらい繊細で儚いものだった。解釈が美しくて、温かかった。言葉は少し強い時のほうが多かった。だけど、曇りなき一点を見据えるようなその視点、その対象が美しいと信じて疑わないようなそのアティチュードにいつも魅了させられていた。こんな思い、伝わるはずもない。

誰にも理解のされない物事の捉え方だともわかってはいる。だからこそ、そんな、ただ一人で本当に美しいそれを見つめ続ける姿に強く感情移入してしまったのだろう。

本当に恋をしていたと、確信して少し安堵した。待ち合わせに少し遅れてくる身体とか、わざと感情を煽るような視線とか、そういう肉体に何も期待していないということと、そういうものがなければと強く願うその心に恋という名を私がつけているから。

憧れだった。私はそうなれないこともわかっていた。
最後に一緒にみた景色の、視点を、最後に、少しだけ知れた。
たった3文字の、その言葉選びに、ドキッとさせられて、確実にまだ恋がいた。
最後に。たくさん美しい景色をお裾分けしてもらって、私には絶対に見れない景色で、逆にみんなだってその人だって、私の景色は見れないけれど、でも私はその人のそれがあまりに好きで、でもきっと苦しいはずで、だからこそそばにいたくて、しかし私は無力なので。

異性以前に、人として、本気で尊敬していて、
一度「アイデアは絶対に変えるな」と強くいってくれたその言葉を、
もう、きっと覚えていないかも知れないけれど、
私は一生抱えて生きていく。

あなたの見る世界の中で、私の視界が美しくないことは、
もうずっとずっとわかっていた。それでも、なにかエネルギーを割いて、
私の心に向き合って寄り添ってくれたことや、
私がそれらをどれだけコンプレックスとして見えないように引きずっても、
フラットな言葉を投げかけてくれるその人間性に魅せられ続けていた。

私がもっと、私ではない何かであれば、きっといくらでもそばにいられた。
時に、愛は、マジで伝わらないということがもう存分にわかった。
それに、自分が耐えきれないということも。
伝わらない人には、愛を伝えない。
ちがう歯車で生きているから本当に仕方がない。
時間はかかったけれど諦めはついた。

最後に、伝えようと思はなければこんなにも簡単にラブレターは書けた。
伝えたいと思っていた時は書けなかった。
どのみち伝わらなくても、これじゃ絶対に伝わらないことだけはわかる。
肝、冷えること言うけれど、いつか、こんな文章をラブレターとして、
受け取ってくれる人に出会えますように。

儚い恋の終わりには、あっけんからん未来の恋への祈願を添えて。

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