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音の無い世界(5の1)

秘書の智子@は朝のタイムカードを打刻して、憤慨を抑えながら言った。
「今日は土曜日で休日だったはずですが、突然、休日出勤なのはどうしてなのでしょうか。(パワハラかしらん。怒)
ちなみに、今日は大阪で、プレジデント(社長)が主催した特別講演会の予定の日でしたね。」

社長の穴田魔絵は言った。
「じつは今日は、アリさんの一大イベントの日なのです。
遠隔催眠にて、アリさんに私の存在をすっぱり忘れるよう暗示をかけていたのですが、どこからともなく、また、YouTubeか何かで、私を見つけて恋焦がれてしまい、私の特別講演会に来場される運びとなったのです。仕方ないので、今日は一日、アリさんの密着ドキュメンタリーに付き合って頂きたいのです。」

穴田さんの背後で、何やらゴソゴソしていた最高技術責任者兼パイロットの深剃りジョンソンは、超ハイテクのオフィスビル型飛行船を、アリさんの自宅上空に瞬時に移動させた。

智子@は、壁を透過して360°クローズアップして見える超ハイテクのカメラで、アリさんのつま先から頭頂までを嘗めるように見て、呆れて言った。
「アリさんったらもう、こうして毎日、ありとあらゆる恥ずかしい姿を、これでもかというほどに見られているのに、ほんと、アリさんの人生ってピエロですね。」

穴田さんは、超ハイテクの映写機で空間に映し出されたアリさんの寝姿を見ながら言った。
「アリさんは今、布団を頭までかぶって、おねむ中ですが、もうすぐ航空機※の飛行音(騒音)で起こされます。」
(※この読み物では、航空機という言葉は、公僕による防犯パトロールの航空機を示す。)

穴田さんの予言どおり、航空機が、アリさんの自宅上空の、アリさんの頭上を目掛けて飛来して来た。

『ゴオッーォォォォォォォォゴオッーォォォォォー』

智子@は慌てて、悲鳴を挙げた。
「きゃあ゛っ。うち(オフィスビル型飛行船)とぶつかりますっ。」

穴田さんは平静に言った。
「大丈夫です。この飛行船は特殊なホログラムで覆われていて、どのような機器でも見えませんし、何かと接触しても量子分解して、透き抜けます。弊社のテクノロジー技術を舐めてはいけません。」

智子@は納得して言った。
「日本でイルミナティに潰されずに存続できているIT新興企業は弊社だけですものね。」


【アリさんはいつものように、脳髄に響くような、とても不快な航空機の騒音で目が覚めた。】


穴田さんは言った。
「アリさんの休日はたいてい、航空機の飛行音(騒音)で起こされます。
アリさんは望んでもいないのに、勝手に起こしに来る、この航空機をアリさん専用の【巨大な目覚まし時計】と自ら、よんでいます。」

智子@は言った。
「これまた莫大な血税で成り立つ、巨大な目覚まし時計ですね。
アリさんのおうちは、田んぼと溜め池が広がる郊外の住宅地にあります。車が行き交う量は非常に多いのですが、空港はかなり遠く離れた場所にあり、なぜ、車の騒音ではなく、航空機の騒音で目を覚まさなければいけないのでしょうか。」

穴田さんは言った。
「アリさんは自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)の傾向が僅かにあると思われるものの、感覚過敏すぎて、コウモリのように聴覚が鋭敏なわけでもありません。
航空機は本当に、アリさんを起こすためだけに飛来して来るのです。」

智子@は言った。
「近隣住民も巻き添えで、大変迷惑な話ですね。地理的に近い場所に住んでいるというだけで、強制的に航空機の騒音を聞かされるのですから。」

アリさんは、自室で講演会に着て行くお洋服選びをいそいそとした後、ショルダーバッグに財布とスマホを詰め、外出準備が完了した。

穴田さんは言った。
「あ、外出準備が終わりましたね。また、航空機が飛来して来ます。玄関を出て、駅に向かう原付に乗るタイミングにも、また航空機が飛来して来ます。」

穴田さんの予言どおり、航空機が、アリさんの自宅上空の、アリさんの頭上を目掛けて飛来して来た。

『ゴオッーォォォォォォォゴオッーォォォォォー』


『ガチャンっ』(玄関のドアを開ける音)
『ゴオッーォォォォォォォゴオッーォォォォォー』


智子@は言った。
「本当に、自室内で外出準備が終わった直後と、玄関から出た直後の2回、航空機が飛来して来ましたね。」

穴田さんは言った。
「アリさんがこのような状況になっているのに、はっきりと自覚するようになったのは、もう10数年前からのことです。」

智子@は言った。
「航空機は、窓・カーテン・雨戸を完全に締め切っている屋内でも、アリさんの【身体の動きに合わせて飛来して来る】ということでしたね。」

穴田さんは言った。
「アリさんは、プライベートな屋内の自室で、ベッドから上半身を起こしただけのタイミングや、机の引き出しを開けたタイミングなど、ほかにも色んなシチュエーションで、航空機が不快な騒音を立てて頭上を飛来して来ます。日によって、その回数は違いますが。」

智子@は気の毒そうに言った。
「気が休まる暇がありませんね。」

穴田さんは言った。
「よく大空を眺めていて、旅客機でもないと思われる、よく分からない航空機がひんぱんに飛んでいるでしょう。迂回したりして同じ所をグルグル、ゆっくりと飛んでいる、あれです。夜間だと赤いランプが点滅していたりして、分かりやすいです。

それらは色々な機体がありますが、一般市民を監視する『防犯パトロール』をしている航空機です。監視しているのは屋外の人間だけではありません。
じつは【屋内の人間】もなのです。建物内に居る人間も、壁を透過して見えるレーダーであるとか、電磁波を応用したテクノロジー※なのか、なんらかのテクノロジー※で、生体反応(脳波も含む)をキャッチし、監視しているのです。」

(※どのようなテクノロジーなのか、具体的には、はっきり言って、書き手にも分かりません。インターネットでいくら検索しても、これといった情報を得ることは出来ません。軍事技術なので、民間には表立っては公開されていないのでしょう。)


智子@は素朴な疑問を呈した。
「なぜ、こんなにも、騒音を出して飛来して来るのでしょう。わりと遠くの上空を飛行していると思われる航空機でも、そこそこ鬱陶しい飛行音を出しながら飛んでいることがありますね。監視が目的であるのでしたら、飛行音をけたたましく立てて飛来する必要があるのでしょうか。」

穴田さんは言った。
「じつは航空機は機体にもよるかもしれませんが、わりとかなり低空の飛行であっても、ほとんど飛行音を出さずに飛べるのです。飛行音はサイレンサーで調整が可能です。
住宅街の上空で、さまざまな周波数の音(騒音)を出して飛行しているのは、監視しているターゲットの人物に対しての『威嚇』(犯罪抑止)と、『監視しているぞ』というメッセージ、そして、近隣住民に対しての、『危険人物が居ます』という『注意喚起』が目的だと思われます。」

智子@は納得して言った。
「航空機の飛行音(騒音)は、いわゆる【防犯サイレン】の一種ということですね。」

穴田さんは言った。
「たとえば、蚊が嫌がる高周波の音というのがあるでしょう。蚊が寄り付かないように開発された蚊除け装置は、その高周波を利用します。

人間にも(名目上の)防犯目的として、生理的に不快な周波数の騒音を日常的に延々と浴びせることにより、防犯効果は期待出来ます。」

智子@は気の毒そうに言った。
「アリさんは完全なプライベートな日常空間で、一日中、365日、そのような状況にあるということなのですね。」

穴田さんは言った。
「そうです。アリさんとっては、そのような【攻める防犯】【嫌がらせ防犯】の防犯パトロールの航空機が本当に鬱陶しいのですが、全然、それだけではないのです。
今日は、そのようなアリさんの密着ドキュメンタリーを続けましょう。」

智子@は言った。
「はい、分かりました。長い一日になりそうですね。」




※重要:このシリーズの記事は、ほぼ全ての記事が現在進行形の【書きかけの状態の記事】であり、大幅な書き足しや文章の削除修正は大いにあります。
(幾つもの記事を並行して書いています。公開してありますが、ほとんど、メモ状態の記事さえもあり得ます。)

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