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世界奴隷化計画 第1話

本当に怖いのはウィルスか人間か?


<人物>
三浦理彩(27) 新聞記者
北村尚紀(47) 理彩上司
ベンジャミン・サンダース(55)理紗大学時代恩師
宮崎孝(53) 国立ウィルス研究所教授

〇丸の内周辺全景・夏(夜)
   スーツ姿にマスク姿の人々が
   足早に歩いている。

○帝都新聞・東京本社全景(夜)

○同新聞社・社会部・中
   マスク姿の三浦理彩(27)が
   無人のオフィスでパソコンに向かって
   作業をしている。
   オフィスの壁には、
   ナロコ感染防止のため、
   マスクエチケットと
   ソーシャルディスタンス、東京都と
   書かれてたポスターが貼られている。
   ふと周りを見回し、
   オフィスに誰もいないことを
   確認するとおもむろにマスクを
   荒々しく外す。
   理彩、鼻の下を人差し指で
   荒々しくこすり、
   イライラしたようすで、

理彩「あーーっつたく!」
   と言い、大きなため息をつく。
   作業机においてある、
   テレビのリモコンを取り、
   テレビをつけると、
   都内ナロコ新規感染者200人と
   報道されている。
   理彩、大きくため息をつき、
   すぐにテレビを消す。
   机に戻り、
   パックのアイスカフェラテのストローを   
   荒々しくもぎ取り、
   憎しみを込めたように
   ストローを突き刺す。
   ストローからアイスカフェラテを
   飲みながらパソコン画面を観る。
   画面にはTwitter投稿が映し出され、
   新型ナロコウィスルは茶番
   というアカウント名で
  「ナロコはそもそも存在してい
   ない。ナロコがあるという設定で社会
   全体が動くことによって・・・と書か
   れている。
   理彩、#ナロコは茶番と
   検索欄に入力する。
   そこへ、後ろから北村尚紀(47) が
   理彩に話しかける。

北村「人災だよな、ナロコ」

   理彩、驚いたように

理彩「あ、北村さん!
   いらっしゃったんですか?」

   北村、マグカップを持って
   立っている。マスクはしていない。
   理彩、あわててマスクをする。

理彩「す、すみません、マスクしてなくて」
北村「いや、俺もしてないから」

   北村、片手をポケットに入れながら
   帝都新聞をドサっと理彩の机に置く。
   そこにはマスクによる熱中症死亡者数
   1000人超える。と書いてある。
北村「政府がこの呪縛説かない限り、
   どんどん若い人の死者が増えるぞ」
理彩「ナロコ死者の平均年齢は
   どこの国もその国の平均寿命と
   合致してますしね」
北村「もはやナロコにかからなければ
   死んでもいいみたいな、
   本末転倒な狂った世界になってるよな」
理彩「・・こんなんで、いいんですかね」

   ×××

   誰も居ないオフィス、
   時計は深夜の2時過ぎを示している。
   無人のオフィスに、
   匿名のファックスが送信され、
   吐き出される。
   タイトルには
   「世界奴隷化計画」と、書かれている。

○ごく普通のマンション全景(夜)

○理彩の部屋・中
   パソコンに向かってスカイプで
   ベンジャミン・サンダース(55)と
   喋っている理彩。
理彩「Hi! Professor Sanders! 
   How have you been?」

   ×××

(以下英語で)
理彩「サンダース教授、このままじゃ、
   ナロコ感染以前にマスクによる熱中症で   
   死ぬ人がどんどん増えそうで心配です」
サンダース「正直、ナロコはそこまでの毒性
     はないから、
     そこまでマスクする必要はないと
     僕の友人のウィルス専門家は
     言ってるけど」
理彩「専門家・・。
   日本でも専門家の意見が分かれてて。
   でもここまでマスコミがナロコの恐怖を    
   煽ってきたから今更、
   そんなにナロコが危険じゃないって
   言ってももう誰も聞く耳をもたなくなっ
   てるんですよ」
サンダース「理彩、
      それが奴らの狙いなんだよ」
理彩「奴らって?」
サンダース「いいかい、理彩、
     テレビや君たちマスコミを使って
     恐怖を煽れば
     仮にナロコが存在しなくても
     一国の経済を破壊することが
     出来るんだよ」
理彩「ナロコが存在しない?」
サンダース「仮に、の話だよ。
      理彩、ごめん、こっちは今、
      朝なんだ。
      もうすぐ僕の大学のオンライン
      講義が始まる時間なんだ。
      また、ゆっくり話そう」
理彩「サンダース教授!」
サンダース「いいか、理彩、全てを疑え、
      ただ、気をつけろ。
      君自身の安全も大事だ、
      じゃあhave a nice day!」
理彩「あ、ちょっと!」

   画面からサンダースの姿が消える。
   理彩、深いため息をつく。

○某所駅改札
   改札を出て、
   スマホの地図画面を観ながら
   きょろきょろ見回している理彩。
   駅前のバスロータリーの木々には蝉の
   声が鳴り響く。

○同商店街
   ほとんどの店のシャッターが
   しまっている。
   ラーメン屋のシャッターの貼紙には
   長い間ありがとうございました、店主、      
   と書いてある。
   そこへ土木作業員の格好をした
   汗だくの男性二人が汗を拭きながら
   歩いて来る。

作業員①「ここの親父のラーメン、
     マジうまいから疲れ吹き飛ぶぞ」
作業員②「いやーハラ減って死にそうっす」

   二人、貼紙を見て呆然とする。

作業員①「マジかよ!」
作業員②「閉店!」

   二人とも地面にしゃがみ込み叫ぶ。

作業員①「ふざけんなナロコ!
     俺らと親父、殺す気かよ!」

   その姿を悲しそうに見ている理彩。

回想:サンダースの声
「いいかい、理彩、
テレビや君たちマスコミを使って
恐怖を煽れば、仮にナロコが存在しなくても
 一国の経済を破壊することが出来るんだよ」

   理彩、大きくため息をつき、
   気を取り直したように歩き始める。

○国立ウィルス研究所全景
   木々に囲まれ広々とした敷地に
   デザイナーズ建築のような
   最先端風の建物が立っている。

○同・中・宮崎孝教授・居室前
   部屋の表札を確認している理彩。
   深呼吸して、
   ドアをノックしようとすると、
   ドアが中から勢いよく開き、
   ドアにぶつかり転んで倒れる理彩。
   中から宮崎孝(53)が出てくる。
   転んでいる理彩に気付き、
宮崎「あ、どうもすみません」
理彩「い、いえ」
   自分で起き上がろうとする理彩に
   手をさしのべて、
   すぐに引っ込める宮崎。
宮崎「あ、嫌ですよね、この時期」
理彩「い、いえ、ありがとうございます」

   二人ともマスクをしているが
   目で笑いあう。

宮崎「ところで、僕に何か用でしたか?」
理彩「あ、はい、あの私、帝都新聞の・・」

   宮崎、急に表情が険しくなり、
   理彩の言葉を遮り、

宮崎「悪いけど、マスコミには
   もう話すことはない」

   宮崎、足早に去ろうとする。

理彩「あの、私、変えたいんです。
   こんな狂った世の中」

○同研究所中庭
   木陰のベンチで
   缶コーヒーを飲みながら話している
   理彩と宮崎。

理彩「それじゃあ、やはりナロコは
   人工ウィルスなんですね」
宮崎「人工と言っても
   失敗作と言っていいぐらい
   物凄く弱い毒性なんだ。
   でも世の中にゼロリスクは
   存在しないし、
   ここまで恐怖を煽ったら、
   僕が何を言っても
   じゃあ、高齢者は、
   既往症のある人は
   どうなるんだって…。
   知っての通り僕の殺人予告まで
   ネットに書かれたぐらいだから」

   苦笑いしながら
   缶コーヒーを飲む宮崎。

理彩「私も拝見しました」
宮崎「僕はもう疲れたんだよ。
   マスクによる熱中症のリスクを
   訴えても誰にも響かない。
   過度な自粛による経済の打撃だって
   僕は経済学者ではないからね・・・」
理彩「私たちマスコミにも
   責任はあります・・・。
   先生、本当に、
   私に出来ることあったら・・」
宮崎「それから、もう一つ心配なことは、
   PCR検査の精度の低さなんだ。
   それでも一度ナロコ陽性とされたら、
   感染者隔離の名の下に
   どんな人権侵害も
   出来てしまうんじゃないかって…」

   宮崎の視線の先に
   白衣を着た男性二人が近寄ってくる。

男性①「宮崎孝先生ですね?」
宮崎「そうですが」
男性②「保健所の者です。
    先日、先生が行かれた書店で
    ナロコ陽性者が出ましたので、
    先生も検査させていただきます」
宮崎「僕は何の症状もない。
   それに、検査は任意のはずだろう?
   僕は拒否する」

   男性二人、頷き合うと
   宮崎の両側につき腕を掴み連れ去る。

宮崎「や、やめろ!!」
理彩「せ、先生!」

   白いバンのクルマに押し込まれる宮崎。    
   理彩、慌てながら
   震える手で携帯から
   110番に電話をかける。
理彩「も、もしもし、警察ですか???」
音声ガイドの声「現在、
        ウィルス感染防止のため、
        業務を
        無期限休止しております。
        現在、
        ウィルス感染防止のため、
        業務を
        無期限休止しております…」
   何度も繰り返される音声ガイドが、
   響きわたる。

                 続く

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