短歌(継ぎ足し式)

アラームが鳴り空中に倒れ込む抱き止められぬまま髪を梳く

そばかすに詰まりし熱を逃すためシーツを波のごとく引き寄せり

薄い袋が毎日足に絡みつく 仕入れトラックで目醒めなくなる

大きな犬に抱かれるように布団抱く 冷房に少し鳥肌が立つ

漏れいづる火焔のごとくうすあおいグラスの口にほつりと一味

月経はポストあふれし手紙もて暗き戸口に立つ配達夫

御神輿が月高き坂をのぼりゆく湯殿は蛇口の悲鳴にみちて

充電の穴わずかずつ緩み夏、朝には布団を押し付けあって

柚子漬けの瓶を落として部屋中に満ちる香りのように叫んだ

8を過ぎまだ通番の号令が夢と告げているラジオ体操

車窓舐める木々はひかる砂嵐 その奥に吾が亡霊は立つ

海水に濡れる手で掻く耳涼し 煙の匂いの坂道を行く


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