ユダヤ教神秘主義の流出論と四元素論

ミクロコスモスとか声字と聞くと、やはり弘法大師空海を連想します。

また、井筒俊彦の一連の著作を思い起こします。

四元素論は「ユナニ医学」を通してユーラシア大陸中に広まっていたと思いますので、そのあたりをもう少し調べなければ⋯


1.カッバーラーと四元素の流出

根元としていわば深淵に潜む神の本体から、先ず神名が流出してきて、つづいて数や字母により様々な次元としての宇宙空間が形成され、そこからさらに地水火風の諸元素が流出して次第に世界が創造されていく様子が、章を追う毎に展開していく。p274 五十嵐一[1989]、「イスラームの科学思想-まなざしの精密化と内面の涵養」、『イスラーム思想 岩波講座 東洋思想第3巻』。

2.イサアク・イスラエリ( Isaac Israeli ben Solomon)のユダヤ教的新プラトン主義

イサアク・イスラエリは10世紀の北アフリカのユダヤ人の医師・哲学者で、アラビア語で著述しているということです。

最後に天界は、アリストテレス的な四元素論に従って、物体的世界の生成・
消滅を惹き起こすものとされる。人間は小宇宙として四元素すべてを完全な調和の内に結合させている。そこで人間は、その使命に従うなら、まずは哲学的認識を通じて「創造者の業に類同化」(『定義の書』二)し、さらに世界についてのこの認識によって、物体的世界の境域を超えて、理性的魂の上昇を通じて知性と知の光へと接近する。こうしてそれ自身が霊的で神的となった魂は、神へと向かう憧れに充ちた脱我に至り、自らの至福を見出すのである。神との密着という聖書的概念と新プラトン主義的な精神形而上学をこのように融合することによって、イスラエリはユダヤ神秘主義への道を拓いたのである。p282 クラウス・リーゼンフーバー[2003]、『中世思想史』 (平凡社ライブラリー)、平凡社。


興味深いことに、古代ギリシアでは自然学一般、すなわち地水火風の四元素論や運動論を含む自然のしくみの探究を指していたフュシカが、一度イスラーム世界を通過してラテン的ヨーロッパに移植されたとき、端的に医学を指す言葉に変容した。p260 五十嵐一[1989]、「イスラームの科学思想-まなざしの精密化と内面の涵養」、『イスラーム思想 岩波講座 東洋思想第3巻』。


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