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時が止まった世界のゲームコーナー。(熱海旅行に 16)

部屋に戻って杉くんと合流した。夕飯まではまだあと1時間ほど時間があった。
「時間あるし、アカオの方へ行って散策してみる?」
と杉くんに聞かれて、
「うん!行こう行こう!」
と夕食も踏まえて浴衣から普段着へ着替えた。

「屋外に出なくても、専用通路でロイヤルウイングとアカオは繋がっているんだってよ。」
「らしいね。」
エレベーターを乗り継いで一階へ。
出入り口とは逆方向がアカオへの通路だ。
フロントの前を通り過ぎる時にホテルの人に会釈されて会釈を返した。

階段を下りて一番下まで着くと、婉曲している長い長い殺風景な廊下が続いていた。
窓というか、壁越しに外の寒気が沁みてくるようで寒い。
誰もこの廊下を通る様子もない。誰かに追い抜かれることも、誰かとすれ違うこともなかった。
一人で歩いたらちょっと怖かったかも、と杉くんが言った。

アカオについた。ご飯時で混みあうエレベーターになんとか乗り込み、目指すは下の階だ。
一階には古風なゲームセンターがあった。スペースはすごく広いわけではないけれど、ひと昔前のゲームが充実している。ラウンドワンのようだといえばそんな感じだけど、またそれとは趣が違う。若い人がそれほどいないこのホテルのゲームコーナーはひと昔前で時間が止まっているような。見たことがないような古いゲームがそれほどすり減った様子もなく今日も稼働している。
私も杉くんも100円玉を持っていなくて、両替どこかでできるのかな?と杉くんと話していると、常駐しているらしきホテルのスタッフの人がひょっこりと現れた。
「両替してもらえますか?」
「もちろんです。」
と。
杉くんの1000円札がじゃらじゃらの100円玉に変わった。

二人で遊べる、色んなミニゲームに応じてボタンをタイミング良く押したり連打したりするゲームを1プレイした。
早々に私はスコアが足らずゲームオーバーしてしまい、真剣にボタンを連打する杉くんを後ろから応援していた。
なんだか本当に時が止まった世界にいるような、私達以外誰も泊まっていないホテルで遊んでいるような、時空が歪んだ、異世界のゲームコーナーだった。


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