証券アナリスト2次対策 証券分析とポートフォリオ・マネジメント 用語集

6月5日(日)の証券アナリスト2次試験に向けて勉強をしていますが、記述式の問題に苦戦しております。
なんとなく分かっているけど、文章で説明することは意外と難しいと感じております。
今回は「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」で過去に説明が求められた用語などまとめました。
自分用にまとめたものですが、せっかくなので記事にしました。

パッシブ運用

運用対象ポートフォリオ特性(リスクとリターン)を特定のベンチマークと一致させるようにすることで、ベンチマークと同等のパフォーマンスの実現を目指す運用。

アクティブ運用

ベンチマークとする株式インデックスから意図的な乖離をとりベンチマークを上回るパフォーマンスを狙う運用。

ベンチマーク

・代表性:投資対象の市場に近い特性を有していること
・再現性:実際に投資可能なユニバース(有価証券)から構成されていること
・流動性:構成銘柄の流動性が十分に高いこと
・客観性:ベンチマーク構築ルールに恣意性がないこと(客観性が高いこと)
・透明性:ルールの詳細についてのディスクローズが行われていること
・安定性:銘柄の入れ替え頻度、回転率が過度に高くないこと
・整合性:時価評価基準(時価採用市場など)がポートフォリオと同じであること
・利便性:情報入手が容易で、使いやすいこと(公開性)
・連続性:同一の計算ルールで十分な長さの過去データがあること
・一般性:広く一般に利用されていること
・運営性:インデックス先物、スタイル・規模別サブ・インデックスの存在などポートフォリオの運営上、便利であること

完全法(完全再現法)

ベンチマークに含まれるすべての銘柄をベンチマークと同じウェイトで組み入れ、アクティブ・ウェイトをゼロにする。

長所:組入銘柄の選択が不要、トラッキング・エラーが非常に小さくなる。

短所:ベンチマーク構成銘柄すべてを時価総額に応じたウェイトで購入するため巨額の資金が必要となる。

層化抽出法

ベンチマーク構成銘柄のリターンを特徴づける特性(業種、時価総額、PBRなど)を基準に、いくつかの部分集合に分割する。
次に各部分集合からその集合の動きを代表する銘柄を抽出し、各部分集合の時価総額に応じた額だけポートフォリオに組み入れる。

最適化法

ポートフォリオの銘柄構成比率がベンチマークとは異なるためトラッキング・エラーが生じるが、これをゼロに近づけることによりポートフォリオをインデックスに疑似させる方法。
パラメータの数を絞り込んだファクター・モデルを使って、数理計画法によりトラッキング・エラーを最小化する最適ポートフォリオを導く。

スマートベータ戦略

特定の属性をもつ限られた銘柄を時価総額加重平均以外のウェイトでポートフォリオを構成する。
予め運用ルールが定められており、低い運用コストで効率的にベンチマークを上回ることを目指す。

トップダウン・アプローチ

マクロ経済の現況や動向について調査・分析し、将来動向のシナリオを策定する。
このシナリオに基づいて、業種・セクターなどのウェイト調整の方針を立て、各セクターの組み入れ銘柄を選定する。

問題点:個別銘柄に十分な注意が払われない。

ボトムアップ・アプローチ

個別企業の財務・経営状態、および将来の収益動向を調査・分析し、ファンダメンタルに基づいて投資価値を評価する。
高いアルファが期待できる銘柄でポートフォリオを組成し、業種・セクターなどのウェイトはこの銘柄数で決まる。

問題点:高いアルファが期待できる銘柄を集めることで、ポートフォリオ全体としての調和がとれず、特定の業種やセクターにリスクが偏在する場合がある。

スタイルドリフト

保有銘柄の構成が当初目標としたスタイルから乖離してしまう現象。
適度なリバランスを行わないと、保有銘柄の特性が時間の経過に伴いバリュー株からグロース株に変化、またはその逆の変化が生じることでスタイルドリフトが生じる。
ファンドのスタイルを定期的にチェックし、ファンド特性に基づく運用状況をファンド・マネージャーに確認する必要がある。

投資ユニバース

ポートフォリオに組み入れる銘柄の集まり。

ビルディング・ブロック法

リスクのない安全資産のリターンを起点とし、各資産クラスのリスクに応じてリスクプレミアムを推定し、これを積み上げることにより期待リターンを推計する方法。

サプライサイド法

GDP成長率などから資本の収益率の伸び率を予想し、これが各資産クラスのリターンを規定する要因にどのような影響を与えるかを捉え、各要因の変化を積み上げる方法。

ホーム・バイアス

最適ポートフォリオが示唆するよりも自国資産を多く保有する傾向。

要因①:情報の内外格差
国内株式に比べ外国株式に関する情報入手は相対的に困難な場合が多い。
(情報格差によって外国株式を相対的に期待リターンが低くリスクの高い資産と受け止められてしまう。)

要因②:為替リスク
為替リスクの分だけ外国株式がハイリスクに見える。
(実際には分散効果の観点などから為替ヘッジをしないことを前提に資産配分を決めることがあり、為替リスクが外国株式を相対的にリスクの高い資産と受け止められてしまう。)

要因③:インフレヘッジ
国内株式は自国のインフレに対する連動性が高い。

要因④:行動ファイナンス的要因
自国に対して楽観的になりやすい傾向がある。

フォワード・ディスカウント・バイアス(フォワード・プレミアム・パズル)

実証分析の結果によれば、高金利通貨は金利が示唆するほど減価せず、むしろ増価する傾向が観察される。

シャープのスタイル分析

長所:ファンドとスタイルインデックスの過去のリターンの情報のみで分析を行うことができ、ファンダメンタル分析の必要がなく容易である。

短所:推計期間における平均的なスタイル・エクスポージャーを測定しているため、推計期間中のスタイルの変更や変化を補足できず、分析結果の信頼度が大きく低下する可能性がある。

ヘッジファンド・インデックスのリターンのバイアス

①生き残りバイアス(Survivorship Bias)
消滅したファンド等を計算から除外することによる上方バイアス。
低収益のため報告を行わないファンドや既に消滅したファンド、成功報酬の獲得が困難となったためにマーケティングを停止したファンドなどのデータが勘案されず、結果的にヘッジファンド・ユニバースのリターンが過大評価される傾向。

②遡及バイアス(Backfill Bias)
新規組み入れファンドのリターンを遡及的に参入することによる上方バイアス。
マネージャーが(複数のファンドの中から)過去の収益率が高いファンドのデータのみを選択的に提供することによるバイアス。
都合の良いデータ期間を選ぶことによるバイアスも含まれている。

③自己選択バイアス(Self-Selection Bias)
リターン実績を開示しないファンドが存在することによる上方・下方バイアス。
成功したファンドが(新規顧客開拓の必要がないために)データ提供を停止することによる下方バイアスなど。

ヘッジファンド投資の留意点

①投資タイミングのパラドクス
過去のパフォーマンスが良かったということは、すでに収益機会が減衰している可能性がある。

②粉飾まがいの時価評価
流動性の低い資産ばかりに投資しているため、ポートフォリオの時価評価が難しく恣意的に行われている可能性がある。

③リターンの非正規性(歪度・尖度)
リターンの分布に歪度や尖度が観察される場合、標準偏差だけではテイルリスクを過小評価してしまう可能性がある。
正規分布の場合、歪度は0、尖度は3だが、歪度が負の値、尖度が3を大きく超えるヘッジファンドはファットテイルが顕著。

ヘッジファンドのインセンティブ・フィー

メリット:ファンドマネージャーがインセンティブ・フィーの獲得を目指し、その専門的能力を最大限発揮しファンド運用に注力する。

デメリット:ファンドマネージャーがインセンティブ・フィーの獲得を目指し、過度なリスクを取って運用する。

M&Aアービトラージ戦略

合併・買収プロポーザル、公開買付(TOB)、再編・スピンオフなどの当事者となっている企業に投資し、計画されたM&A等の成立によって利益を得る戦略。

リスク①:一部のディールで買収側の企業の財務悪化や被買収企業の収益低下などによりM&Aが不成立となり、これに伴う損失が他の多くのディールで得られた利益を食いつぶしてしまう。

リスク②:株式市場が低迷する時期にはディールの件数・質が低下する。

人的資本

その人の労働所得の獲得能力であり、将来の労働所得の割引現在価値の合計である。

効率的市場仮説

現実の証券市場は「すべての市場価格が常にその投資価値に等しい」という意味で効率的であるとする仮説。

ウィーク型:過去の証券価格
セミストロング型:すべての公開情報
ストロング型:インサイダー情報

証券市場は効率的ではない要因

・投資家バイアス(投資家の非合理的な行動)
・裁定取引の限界

プロスペクト理論

特徴①:得の状態ではリスク回避的、損の状態ではリスク愛好的に振る舞う。
特徴②:総資産額ではなく参照点からのプラス幅、マイナス幅で評価される。
特徴③:得よりも損の方が傾きが大きく、絶対値ベースでは得の領域での満足度よりも損の領域での苦痛の方が大きい。

裁定取引

相対的に割高な金融資産を売って、これと同一の代替キャッシュフローとリスク構造をもった代替的な金融資産を買い、コストをかけずにリスクを取らずにリターンを獲得する取引。

モメンタム・ファクター

株式の過去1年間のリターンに基づいて銘柄を3つのグループに分割し、最もリターンが高かったグループのリターンから最もリターンが低かったグループのリターンを差し引いた値をファクター値とするもの。

信用劣後構造

発券する証券に付随する債務を複数の階層に分け、支払いの優先順位に差を設けることによって、優先部分に損失が及ぶ可能性を減らした構造。


4/10に模試を受け、大幅に追加・修正しました。
「コーポレート・ファイナンスと企業分析」の用語集もありますので、
良かったら参考にしてください。

「市場と経済の分析」も書きました。


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