設計(者)プロポーザルをリ・デザインする#007:実績をどう証明するのか
そもそも私は設計実績を求めることに、さほど肯定的ではないのはすでにおわかりいただけたでしょう。若い方々にとって、ただの参入障壁でしかないですし、誰にだって初めてがあります。それに建築士の場合、国家資格であるわけでその認可を受けている以上、もう信頼するしかないという気もします。一級建築士の合格率、ご存知でしょうか。10%に満たないのですよ。ぜひ、以下で詳細を確かめてください。
・国土交通省 - 令和4年一級建築士試験「設計製図の試験」の合格者を決定
https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000950.html
とはいえ、実績を求めざるを得ない場合は、すでに述べてきたような諸点に配慮して、いたずらにハードルを高めることは避けましょう。そのうえでの話ですが、では求めたその実績が実在することはどうやって証明すればいいでしょうか。ここで証明が必要なことは2点あります。1つはそもそもその建築が実在するのか、もう1つは実在する当該建築をその設計者が設計したのか、です。
この証明はときとして悪魔の証明のような無理難題になります。公共的な建築であれば実在証明は比較的容易ですが、民間建築の場合は難易度が増します。特に住宅や商店であれば、実在を証明することは意外に難しくはないでしょうか。実際、あなたがいま住んでいるその物件が実在することを証明する書類を提出せよと言われたら、あなたは何を提出するでしょうか。
2つ目の本当に自分の実績なのかという証明も厄介です。『新建築』等の建築専門誌で担当者名もあわせて紹介されたことがあればラッキーですが、そんな幸運に恵まれる物件はごく僅かです。かくしてプロポーザルの現場では何らかの証明になる書類のコピーを提出するよう求めることになります。ですが、経験的にはその書類を用意する側も提出してもらう側も双方たいへんです。どちらの側も本来かけるべき時間を損ないます。証明書類の用意に費やす時間は提案書の作成にかけるべきですし、証明書類の検証にあてる時間は提案書の熟読にあてるべきです。
であれば、解決策は目下これ1つではないでしょうか。「信じる」ことです。証明書類は求めず、提案のなかでの証明を求めませんか。実際に自分で設計した実績でなければ、提案に適切に反映することは難しいはずです。そして万一、実績の申告に虚偽があるならば、失格にすればいいだけです。冒頭でもふれたように、建築士は難易度の高い国家資格です。その資格に信頼を寄せ、実績の申告は求めても実績の証明は求めないようにしませんか。これが大部分においては建設的なやり方です。ごく一部にありうる不心得な事態には個別に厳しく対処するという方法をおすすめします。
なお、上記の論点とは別の議論として、
・公共建築設計者情報システム(PUBDIS)
https://www.pbaweb.jp/pubdis/
のような仕組みの充実と一般開放は期待したいですね。
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