「イレジン Iresine」ってどんな馬?
いよいよ今週末は世紀の一戦第2弾、ジャパンカップです。
Continuousの回避こそ残念ではありますが、それでも出走登録メンバーの中からあいうえお順でGⅠ馬を並べてみても
・イクイノックス
・Iresine イレジン
・ヴェラアズール
・スターズオンアース
・タイトルホルダー
・ドウデュース
・パンサラッサ
・リバティアイランド
とフルゲート18頭中8頭が国内外のGⅠ馬、重賞勝ち馬も合わせると12頭な上に地方競馬所属からの参戦もあって正に「面子が揃った」という感じがします。
武豊騎手の復帰が間に合わず、ドウデュースの鞍上が引き続き戸崎騎手に決定したりトラストケンシンが福島民友Cの抽選除外でまさかのGⅠ挑戦となったりともう既に情報過多な感すらありますが、まぁこれだけの規模の世紀の一戦となればいいんじゃないでしょうか(笑)
さて、その中で今回は海外から参戦する「イレジン Iresineってどんな馬なの?」というのを血統から知ってみようというところで私なりの解説を出来ればなと思います。
回避となった「英セントレジャーを制した日本産ハーツクライ産駒、コンティニュアス Continuous」というところと比較した際、どうしても「…この子誰?」というのは少なからずあると思いますので私の分野である血統から魅力をお伝えし、果たしてこの舞台で通用するのか含めて考える一助となればなと思う次第で本稿を執筆しております。
どうぞお付き合いください。
※手間の都合上血統表は準備しておりません、是非各種媒体で血統表を広げつつお読みいただけたらと思います。
1.イレジン Iresineの概要
父:Manduro 母:Inanga 母父:Oasis Dream
フランス産 P. Joyaux & Bnne M-L. Van Dedem生産
フランス Jean-Pierre Gauvin厩舎所属
馬主 Bertrand Milliere氏
ジャパンカップ出走前全競争成績 19戦13勝(13-2-3-1)
主な競争成績
2021 ラクープ賞 GⅢ 1着
フォワ賞 GⅡ 3着
2022 ルー賞 GⅢ 3着
フォワ賞 GⅡ 1着
ロワイヤルオーク賞 GⅠ 1着
2023 アルクール賞 GⅡ 2着
ガネー賞 GⅠ 1着
フォワ賞 GⅡ 2着
コンセイユドパリ賞 GⅡ 1着
2.イレジン Iresineの血統
ドイツ産馬の父Manduroは仏GⅠイスパーン賞・ジャックルマロワ賞・英GⅠプリンスオブウェールズSのGⅠ3勝を含む重賞8勝馬。
4代母Riverqueenからの枝分かれの先には日本の「薔薇一族」の牝祖ローザネイにあたる牝系の出である。
父ManduroはMonsun・Surumu・Be My GuestにTicinoを4×3、Ticinoの父Athanasiusを5×4・5で持つElektrantといったスタミナ色の強い種牡馬にHyperionを3×3でクロスするMariapolisが4代母に来るととにかくスタミナ色が強い。
5代血統表を飛び出た範囲で見てもBlandford-SwynfordやAthanasiusの父Ferroが満遍なく配される形になっており、「いかにもドイツのスタミナ指向の強い配合」といったところ。
一方で母Inangaは前述のRiverqueenがフランス産ながらもBlandfordを5・5×5、Swynfordを5・6×6・6で持ち、そこにHyperionを内包する分かなりのスタミナ源とはなっているが、Oasis DreamがSir Gaylordを4×5で持ち、キングカメハメハに於ける瞬発力源の1つであるMill Reefを内包しており、そこに「Mr.Prospector×Buckpasser」配合の1頭であるWoodmanを配した上でLyphardをクロスしており、Danzig-Northern Dancer含めてAlmahmoud-Mahoud≒Sun PrincessやMumtaz Mahalを主体とした日本に通づるスピード優位の配合系となっている
誤解を恐れずに言えば「日本で活躍する仔を出す繁殖牝馬として居そう」な配合。許されるのであればキタサンブラックを付けてみたい。
やや脱線をしたが、上記の観点から「Mumtaz Mahal的スピード・瞬発力をスパイスとして加えたBlandford-Swynfordを主体としたスタミナがベースとなった馬」というのがイレジン Iresineの血統的に見た時の解釈といったところだろう。
3.イレジン Iresineはジャパンカップで通用するか
血統的なことを紹介したところでやはり気になるのはここだろう。
率直な感想を述べると「好走ないし勝利してもおかしくないし、大きく負けても不思議無い」というのが本音である。
取捨選択を考えたい側からしたら「そんな反則みたいなことを言うんじゃねえ!」と言われかねない、というか絶対言われるだろうと思うところではあるがこれにはちゃんと理由がある。
最大の理由はパンサラッサとタイトルホルダーの存在。
両者逃げを打ってスピードやスタミナ・底力といったところを武器に押し切る競馬をするのだが、パンサラッサに関してはゲートの1歩目が速くても2歩目3歩目が上手く出ずに無理をしてハナを奪うケースが少なからずある。
それに対してタイトルホルダーは同じく1歩目が出るところから2歩目3歩目も安定している為最初の1Fでは最終的にパンサラッサが上でもゲートを出て50~100mではタイトルホルダーの方が上回るという可能性がある。
特にパンサラッサに関しては長期休養から明けてぶっつけ本番になる為、よりこうなる可能性は高いと考えられる上に鞍上の吉田豊騎手もパンサラッサの良さを存分に活かすべく中間で一切緩めずタイトなラップを刻むと考えられる。
こうなると激化する主導権争いから中間が一切緩まないラップになることが予想されるのだが、問題なのはそうなった際の中盤以降のポジショニングである。
単純明快な話をすると場群全体が前を追いかければ今年の天皇賞・秋の様になるだろうし、逆に中団以下がマイペースを保つのであれば馬群はある程度ばらける形となり、昨年の天皇賞・秋やジャパンカップの様な隊列となるだろう。
もし前者の並びとなればスタミナ・底力比べとなって上位争いに加わる可能性は上がり、後者となるとタイトルホルダーやそれこそイクイノックスの様なスタミナ・底力由来のスピードを隠し持っていない限り上位進出は厳しくなる。
これがどっちつかずとも言える結論の根拠である。
何にしてもパンサラッサ・タイトルホルダー、強いてはイクイノックスの出方1つで大きく着順が変わる1頭というのが私の評価である。
4.終わりに&おまけ
以上がイレジン Iresineの私なりの血統的評価・考察になります。
本稿がジャパンカップにの検討に於ける一助や今回出走するイレジン Iresineに限らず外国馬を見る際の見方のヒントになればと思います。
おまけとしてこの先に有力馬及び個人的な穴馬に於けるポイントを並べておきますのでもしよろしければ覗いていただけたらと思います。
それではお付き合い頂きありがとうございました。
全人馬陣営、是非グッドレースを!
1.イクイノックス
本稿制作時点でnetkeibaで予想オッズ1.3倍と断然の1番人気となっているが、妥当と言わざるを得ないだろう。
昨年のこの時期は自分のペースで追走する形で天皇賞・秋に有馬記念を連勝し、今年の緒戦となったドバイSCも逃げる形にはなったがあくまでもマイペースでの走り、それが変わらず宝塚記念でもというところであったが、秋緒戦の天皇賞・秋では一変。
ジャックドールの刻むハイペースを悠々追走し、そのまま''差し切り''。
前走後は流石に疲れを見せた様で尚且つ今回初めて感覚を詰めてのレースになるが夏場に大きな成長を見せた分、死角無しといったところだろう。
2.ヴェラアズール
昨年のJCの覇者にして唯一連覇の権利を持つ1頭。
エイシンフラッシュは父キングズベストのドイツ血脈ではあるがSure Blade-Kris-Sharpen Upを異系の血として取り入れ、Red Godと合わせて日本ダービー史上最速の末脚を繰り出した馬。
ただしHome Guardの父がForliでこれが父キングズベストのNureyevを強調する形になり、これがスタミナ重視のドイツ血脈と相まって先行して粘る様なタイプの馬を多く輩出するような形に繋がり、結果として自身とは異なるタイプの馬を多く出していると考えられる。
一方で本馬はクロフネの中からBlue LarkspurとHail to Reasonを3代目のサンデーサイレンスに脈絡する形で引き出し、更にNasrullaの5×5をNorthern Dancer及びサンデーサイレンスの持つAlmahmoud-Mahmoud≒Sun PrincessからMumtaz Mahalで絡めることでクロフネが元来持つ突進力なスピードを溜めての末脚の爆発力に変えることで芝で大成した。
一方でクロフネのSeattle Slewの様な大跳びで走る要素も存在し、小回りコースでは苦戦を強いられている。
そういった意味ではドバイWCでテンから飛ばしていく全く違う競馬したり小回りで苦しい宝塚記念というところから前走京都大賞典に続いて広いコースで本領発揮というのは好材料。
後は6歳馬でどれだけ上積みがあるか、ムーア騎手が溜めにかかるか勝負に出るかといったところだろうか。
3.スターズオンアース
ドゥラメンテ×サザンスターズという配合は割とIresineと似通った部分がある。
Hyperion的スタミナの強いドゥラメンテに米国血脈のSmart Strikeを挟んでドイツ血脈のスタセリタ、という区切り方をすると何となく似通ってるという感じは伝わるのではないだろうか。
天皇賞・秋を回避しての参戦というところに懸念点はあるが、3歳時に右前脚第1指骨の剥離骨折からの秋華賞への直行で敗れはしたものの3着(この時の勝ち馬スタニングローズこそ不振に喘いでいる状況だが2着ナミュールはマイルCSを制してGⅠ馬の仲間入り、レベル感は言うまでも無いだろう)、更にレース後左前肢繋靭帯に若干の炎症・両第1指骨剥離骨折が再発というところから大阪杯で直行してジャックドールを僅かに差し切れなかったものの2着・本質的に距離が合わなかったヴィクトリアMで3着というのを考えると勝ち切るかどうかは別問題として好走しても何ら不思議無い。
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