一本
3ミリの、1本の鉄の棒を渡された。
その棒が嬉しかった。
これからこの棒が一生使うものになる。
大事な大事なものになる。
少しずつ形を変えてくる。
叩くと見たことのある形になってくる。
今までいろんなとこで何十回、何百回、何千回と見たあの形。
それなのにそれに合うのは一本しかない。
そこに刻まれたものは自分しか知らない。
こんなにも小さなものがこんなにも大きなものになるなんて。
たぶんこの先もっと大きくなる。
この一本を見るたびに、幸せに包まれる。
この先こんなことが増えていくんだろうな。
増やしていかないとな。
このためなら頑張れる。