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ミナシゴノシゴトの仕事│⑦ミナシゴがおかえりと言う理由

▶妄想を具現化する


そもそもミナシゴというモチーフをチョイスしたのは、以前メディアでも記事にしてもらった通り、僕が長年抱いてきた妄想に起因する。

僕は神秘の世界エルハザード世代で、「異世界転移」という、現在ではメジャーになったジャンルを初めて認識した作品はエルハザードだった。

他にも、あかほりさとる先生の作品や久美沙織先生のドラゴンクエストの小説が大好きで、中学生の時に読みまくった。

広義のファンタジー作品に関わる上では上記の作品は少なからず影響を受けていると思う。

詳細は省くが、そういった土壌から花開いた、僕が長年寝る前に抱いてきた妄想ストーリーがいくつかある。

その中には異世界に行き、その世界で無双できたなら何をするか? という妄想があった。

──人類未踏の塔があり、その頂上には信じられないほどきれいな乳をした女神が白黒2人いて、倒すと仲間になる。

俺のことが好きで仕方ない。それはもう倒したからには無条件だ。

そしてそんな宙を浮遊するラムちゃんみたいな美女を2人従えて砂漠とかなんかそういう感じの町を旅して、強大な敵とか簡単に倒すだろう。

何故なら俺は神と竜の血を引いているからだ。そこにはとてつもない悲しい運命の伝説があるが、決して多くは語らない。

商人が売ってくれと泣いてせがむような伝説級の剣とかめっちゃ持ってるし、よくゴロツキに舐められるが大体結果は水戸黄門だ。

現実世界では手に入らない栄光や虚栄心を満たし、すべてが自分の思うデザインのままに、思い通りの旅が出来る。

じゃあその先に何をする?

その答えが「僕なら孤児を集めて人道支援するな」だった。

そして帰る家を作り、そこを拠点にする。

長旅で疲れた自分を「おかえり」と言ってくれる子や、「旅に連れて行って!」という才気に溢れた子がいる。

その子達の寿命と俺の寿命は違う。だがこの刹那の成長を見守るために、俺は旅先で資金源を稼ぐ……。

なんかそういう方向性の妄想だった。

ちなみに他にもあらゆるジャンルで全200巻くらいのストーリーがある。始末にを得ない。

──わかる人にはわかると思うが、実はここからジャンヌやヒーコ、そしてサンクチュアリ×サンクチュアリ孤児院(サンサン園。主人公たちが帰る拠点)という、ミナシゴの基本設定が生まれた。

また「妄想を作品にするとかきめえ!」みたいな意見も過るかもしれないが、世に出たファンタジー作品の種はクリエイターの妄想で間違いない。

それを世に出すのと引き換えに、個人の妄想は世間に委ねられ、もう妄想することはほとんどなくなる。仕事になるからだ。

▶ミナシゴが「おかえり」と言う理由


ソーシャルゲームではホーム画面を開いた際、ユニットから何かしらボイス付のコメントがあるのは珍しくない。本作においてはこの設定にも特別な意味がある。

本作においてはホーム画面=サンサン園であり、この「家に帰る」という部分は徹底した。

テーマであるミナシゴはややネガティブなワードであり、ダークファンタジーだが、そのマイナス点から生まれる「ホーム」「家に帰る」という稀有にして温かな情緒をユーザーの皆様に届けたいと思ったからだ。

これは以前話した「気持ちよくなってもらう」という課題にも起因する。ミナシゴは愛娘であり家族だ。ミナシゴ同士にも姉妹を始めとした関係性がある。

僕は既婚者で子どももいるが、本作をプレイするユーザーの皆様の、あらゆる方に、家に帰った安心感や家族という疑似体験の一端を感じてもらえる作品にしたかった。

同時に、メインライターのS氏には、

「とにかくミナシゴには『おかえりなさい』と言わせてください、たのんます!」

と何度も頼んだ。申し訳ない。

ホームで「おかえりなさい」というミナシゴは多いのはこれが理由だ。

当然、そこにこだわりを持つからには本編のストーリーにも関わりを持たせないといけない。実は重要なカタルシスを設置する意図がある。

▶主人公に至るまで


企画が通った時点までを基準に、ここまで「雰囲気」「拠点」「与えたい感動」などコンセプト部分の話をした。

しかしストーリー1章までの執筆を100とすると、ここまで5パーセントにも満たない要素である。

物語の構築と魅力は、どこまでもキャラクターで決まる。

もっと掘り下げると「人は人格のファンになる」これが僕の持論の一つだ。この獲得が、書き手を続けるうえで、死活問題になる。

早い段階で主人公は『黒騎士』という人物になっていたのだが、彼には戦神という側面がある。

黒騎士という、そのまま黒い騎士をモチーフにしたのは、より広義のユーザーの方に親しみやすい、ある種好き嫌いのない、それでいてカッコいい、すんなり受け取ってもらえる見た目にしたかったのが一番の理由だ。

そういった意味では白やトリコロールカラーではなく、黒である必要があった。この色にも意味があるがそれは本編を読めばわかると思う。

見た目の年齢においても同様で、始めから10代後半や20代の若い青年にする発想はほぼなかった。

現在の「ダディ感のあるがっしりした見た目」は早い段階で決まっていた。

この辺りは数百名のミナシゴを保護する存在であり、主人公を「パパ(義父)」という位置づけにしたかったのが大きな理由だ。

この他にも様々な課題とその解決があった。

次回はここに至るまでの経緯を述べる。

つづく

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