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ミナシゴノシゴトの仕事│⑩ミナシゴが黒騎士を愛する理由

▶欠点のある最強


中間管理職として設定した主人公。しかしこれは後に軌道修正し、結果として会長扱いという、最強の存在とした。

中間管理職にしようとしたのは、「体裁」が理由だ。

上にも下にも、また横にも敵やライバルがいるなか、ミナシゴを守る葛藤や成長、変化を描こうとした。

しかしゲームシナリオという分野においては、この葛藤や成長、変化、特に体裁や制限は大きな弊害になると考えた。

僕個人の癖として、「何か制限・不自由のある主人公の成長を描きたい」というものがあった。これは過去の作品の「兇器博物館」や「異能メイズ」という作品で強く影響されている。

実はこの設定は小説でこそ一番効果を発揮するが、コミックやゲームシナリオでは時間がかかる。

ダメという訳ではないし手法もあるが、以前述べた通り、カタルシスの部分を提供するのに、それなりの時間を要するのだ。

もっと悪く言うと、これは黒騎士の可能性を箱にしまう行為で、序盤ではどこか窮屈な印象を与えてしまう。

やりたいのはその箱を開けた時の解放感だが、それを知ってるのは書き手だけで、読者としては何故こんなストレスがたまる物語を見ているのかわからない。

なので始めからこの箱をとっぱらい、彼の可能性に制限をかけないことにした。まさに主人公としてより自由で強い存在として描くことにしたのだ。

現に、本作の一章で早くから彼の正体が明かされる。

早く彼の正体を知ってもらいたく、そういう構成にした。この辺りもまた、本編を確認した方ならよくわかると思う。

ただ彼も完璧ではない。S氏が加えてくれた金貨2枚のおこずかいを入り口に、かつて敗北したという過去がある。他にもミナシゴに甘いという欠点もある。

意識した訳ではないが、個人的にはシティハンターの冴羽獠の印象に近いと思う。

ここまでが彼をミナシゴノシゴトの主人公として確立した、大きなスパイスとなったと思う。

▶何故ミナシゴは黒騎士を愛するのか


黒騎士の設定を詰めていくのと同時に、大きな疑問が生まれていた。

「何でミナシゴたちは黒騎士が好きなんだ?」

「ふつう女の子が会って間もない年上の男性、いきなり好きになって一緒に住んだりしないよな?」

「しかも愛し合っちゃうってこれ大丈夫かな、黒騎士」

という、美少女ゲーム作ってるのに、元も子もない疑問だ。

しかし筆者の僕が疑問に思う点を未消化のまま提供して、読み手が納得する訳がない。

この点をクリアする必要があった。

なので、実はここを一章のストーリーそのもののコンセプトにした。

そう、ジャンヌの御聖告である。

ストーリー一章では、メインヒロインのジャンヌが「パパを──せ」という、彼女だけに聞こえる謎の声に悩まされる。これが御聖告だ。

ジャンヌはパパの正体を疑い、葛藤を抱えるが、パパである黒騎士は変わらず彼女に愛情を注いでいく。それがまた彼女を苦しめる。

この模様と結末は物語の中でも重要な要素でもあるが、同時に、上記の疑問である、「何故ミナシゴは黒騎士を愛するのか」という疑問の答えを担っている。

ここが、このミナシゴ世界への入り口であり、ジャンヌの悩みと道筋が、全ミナシゴが彼を愛し、また彼もミナシゴを愛する理由の原初となっている。

また同時に、こういった点においてもライターチームが丁寧な設定やストーリーを補完・設置してくれた。

サンサン園に保護されたミナシゴは面談や短期間の観察をしたり、問題がある場合や危険がある場合は隔離したりと、作中の機関によって段階的に保護されている。

その経緯そのものが感動的なストーリーやミナシゴの魅力に繋がったりもする。

この点もよく工夫して頂き、世界観の説得力とおもしろさに繋がっていると感じ、感謝が絶えない。

つづく


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