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『うたの日』16年8月編

生温い氷結レモン飲みながら きみと見ている月がキレイだ

目の前の蜻蛉飛び立つ数秒後 たぶんあなたとバイバイをする

ウユニ塩湖のポスターに落書きをしたら父親がほめてくれた

幼日の虫採りにいった夏の日の湿気った夜の匂いがしてる

もしきみの運転がうまくなってたら 違う誰かのおかげだろうね

「そういえば…」それからはじまる現実とまた後悔をしている寝起き

あの頃は寄り道さえも楽しくてファンタ飲んでるだけでよかった

戸惑いのキスを手に持つ消えそうな線香花火がじっと見ている

好きだからなぜか納得してしまう 残業手当のカルピスウォーター

草食系だとか肉食系だとかなんでもいいけど魚が好きだ

思い出す価値があるなら途中でもこの恋忘れる覚悟あります

「あの人だけが頼りです」そんなこと言われたらもう忘れるルール

本当はきみといっしょに徹夜して朝マックして帰りたかった

「暑い、暑い」とのぼった二年坂の夏をアイス片手に思い出してる

ケルヒァーのヒャーの部分をおれよりもエロくゆったしきみの勝ちです

もし仮にきみが正しいとしたって このプリン食べていいわけじゃない

「幸せであれ」と願った 手を添えておつりをくれた知らないきみに

沈黙の後はぜったい笑っちゃう あなたのくせの好きだったとこ

人生でピアスをあげた人なんてお前だけだよ(なんて言わない)

助手席のわたしの役目 コーヒーのボトルキャップを開け渡すのは

作るのに3年かかったトンネルを2分で通り抜けてくせつなさ

蝉の鳴き声に包まれこの胸の鼓動が共鳴するのがわかる

気まぐれな天気予報に感謝する 傘はひとつで 君とふたりで

東条湖ランドの流れるプールでは父さんの腕につかまるルール

左から三番目の蛇口から出る水が好きだった きみも好きだった


16年8月の『うたの日』の歌で印象的なのは東条湖ランドやケルヒャーの歌ですね。こうやって並べてみると8月らしく夏っぽい歌が多いなあと思いました。あとなんというか一つ一つの短歌を作った場所とか時間とか気温とかそういうものがぶわあっと思い出されてとてもセンチメンタルな気分になりました。そこがなんとも短歌の素敵なところでもありますね。



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