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新型コロナの「戦中と戦後」(2)~4年間の新聞切り抜き記事に見えたもの

 新聞の切り抜きのなかから、農政の記事の棚卸をしながら新型コロナウイルスの「戦中と戦後」をまとめた2回目です。
■2022年のコロナ共存
 LINEなどを活用するJAの動きがよく報道されていました。22年12月の日本農業新聞には「愛知・JA西三河 LINE登録半月で1万人」のニュースがありました。西尾市を中心に野菜や抹茶など農業が盛んな地域。産直情報を中心に若い世代に地元産農産物に目を向けてもらう役割を果たしています。
■飢えてからでは遅い
 ウクライナへのロシアの侵攻で、農産品やエネルギーコスト上昇が続いていた頃。国産への関心が高まってきたことが記事からわかります。
 22年8月6日の農業新聞は2021年度の食料自給率(カロリーベース)が38%の微増だったと農水省発表を掲載しています。それにしても心もとない水準です。
 終戦の日の8月15日を前に農業新聞は「過去に学ぶ戦争と食糧問題」を連載。京都大学人文科学研究所の藤原辰史准教授の寄稿は、ロシアのウクライナ侵攻による穀物価格高騰を一例に「食と農をおろそかにする国家は、こうして国民の信頼を失っていく」と警鐘を鳴らし続けています。見出しの「餓えてからでは遅い」は衝撃的でした。
 肥料も厳しい状況でした。読売新聞連載「値段の真相」(22年10月6日)で、緑茶飲料の値上げの背景に肥料や容器の値上げについて取材しています。茶葉の栽培に欠かせない肥料のうち、ロシアが尿素と塩化カリウムの主要輸出国であることなど価格上昇の背景をまとめていました。
■自給率はまず種子から
 生産資材の高騰で国産化へ目が向く中、忘れてはならないのは種子の自給率です。農業新聞11月26日社説は「有事に備え国産振興を」と解いています。野菜の種の9割が輸入で、年々増加してきたと聞いて、不安になります。
 若干意味合いがことなりますが、2018年6月に日本の種子を守る有志の会事務局アドバイザーの講演「種子法廃止で食・農はどうなる」という講演を聞いたことを思い出します。公的に守られてきた希少品種が淘汰され、種子の多様性が失われるという懸念が、いまになって実感できます。 
■明治用水漏水事故
 22年5月18日各紙に愛知県豊田市にある明治用水頭首工の漏水が出ています。農業新聞は農業への打撃を詳しく報道していますが、ある意味ショックだったのは、一般紙を中心に「工業用水供給停止の恐れ」(読売新聞5月18日)と工業用水による工場への影響をまず書いていたことでした。詳細は私のnote記事をご覧ください。
■農業女子プロジェクト10年
 職業として農業を選ぶ女性を増やそうという「農業女子プロジェクト」が10年目を迎えた年。22年11月の農業新聞で10年のあゆみが紹介されました。
 2013年の1期生は37人でスタート。女性目線でのトラクター開発に着手し、2015年にお披露目されています。10期生は925人に増えました。
 このプロジェクトの背景には、「女性農業者の意見を発信する場だった生活改善実行グループや婦人会などの高齢化が進んだ」と福島大学の岩崎由美子教授の話しを紹介していました。
■農民作家の死
 農民作家の山下惣一さんが22年7月10日、86歳で死去されました。佐賀県でコメやミカンを栽培しながらエッセーや小説を書き続けた。コメの減反に揺れる農村をテーマにした「減反神社」と「父の寧日」は1981年の直木賞候補に挙がった。
 79歳の時に「小農学会」を設立し、小規模農家のネットワークづくりを進めるなど、規模が小さくても自立できる農家を実践してきた人でした。
 農業新聞22年9月28日の紙面に「コロナ下の省察 日本農民文学会2年で3割増」という記事がありました。新型コロナ感染拡大やウクライナの戦火で農業と向き合う文学への関心が高まっていると書いています。
 アグリカルチャーとカルチャーは同じ土壌にあります。私事ですが、猫の額ほどの菜園を耕す経験から、耕すことは書くことに通じるものがあると実感しています。
(2024年4月2日)

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