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物流改革で伝統の美を守る~西尾鉢物出荷組合の視察から

 これもスマート農業といえるでしょう。愛知県西尾市を中心に80戸からなる西尾鉢物出荷組合の物流改革です。
 和物や洋ラン、観葉、鉢花を栽培する組合は、運送業者を一元化したことで「何でもそろう産地で1ケースからでも対応する」という特色を発揮しています。
■物流の一元化
 2024年2月6日、JA西三河横須賀支店で開かれた記者会に参加しました。西尾鉢物出荷組合が日本農業賞の集団組織の部で大賞を受賞した取材です。
 大塚和義組合長やJA西三河の説明によると、西尾市はなんでもそろう鉢物産地で、北海道から鹿児島まで主要44市場に出荷するほか、130品目を香港など海外に輸出しています。全1980アイテムのラインアップで、年間390万鉢を出荷しているとのこと。
■一元化のメリット
 物流の一元化は2009年に実施。それまでは10社以上の運送会社に依頼していました。
 一元化のメリットは、双方にあります。生産者は前日までに荷物の種類と数量を連絡し、約束の時間までに出荷します。運送会社は前日のうちに配送ルートを決めることができ、各地の市場をめぐってロスを減らすことができます。
 台車を使ってトラックに運び込める効率的な輸送を実施し、運送業者の運転手不足に早くから手を打っていました。
■ブーム過ぎたものも作り続ける
 西尾市巨海町の有限会社三洋園芸に移動。代表取締役の岩瀬全安(まさやす)さんがハウス内で説明してくれました。鉢物の業界では当然、はやり廃りがあるそうです。西尾の産地はトレンドやブームを過ぎたモノでも育成を続けていました。「1ケースから送ります」というのが西尾の強みだと岩瀬さんは言います。全国からマイナーな注文が来てもしっかり対応できているそうです。
 「ブームが去ったからといって育てなくなったら、和物などの伝統が失われてしまう」という思いも強いようです。もちろん、ハーブなど人気商品には独自のカードを添えるなど消費者の気持ちもしっかりつかんでいます。
 西尾に頼めば大丈夫・・・。産地の信頼は、犬塚組合長や岩瀬さんらメンバーの裾野の広さがあればこそです。
■日本農業賞の大賞 
 第53回日本農業賞は歴史ある賞です。NHK、全国農業協同組合中央会、都道府県農業協同組合中央会が共催しています。3月9日に東京・NHKホールで中央表彰式が開催されました。 
 西尾鉢物出荷組合は、これまで紹介した以外にもSNS「LINE」のグループ機能を活用して生産者と買参人が直接やりとりできる仕組みも活用しています。
 既存の物流を見直し、SNSも活用する。スマート農業を実践しているといえるでしょう。
(2024年5月13日)

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