光を与えてくれた君へ(後編)のプロット

尾リパ垢閉じるので、本を買ってくれた人だけ最後に描いてた予告について何も言及無いのもアレなので、予定してたお話のプロットだけアップしておきます。
同人誌「光を与えてくれた君へ」のラストエピソードのすぐあとのフチのお見舞いに行く話からです。
ちなみに…超長いです。

#8


フチのお見舞いに来た尾形と明日子
明日「フチ、腰の具合はどうだ?」
大丈夫だよ、とニコニコしてるフチ
フチ「…そこの人は?」視線を向けられる
明日「ああ、紹介する。えっと……尾形だ!」
尾形「おい情報量無さ過ぎるだろ」ツッコミ

尾形が一から説明することに。

「なるほど…?」みたいな顔してるフチ
尾形「まあ、不審に思われるのも無理は無えな」
明日「そっそんな事ないぞ!尾形はいつも良くしてくれるんだ!
   確かにチンピラみたいな見た目だけど一応ちゃんと会社員やってるし」
尾形「一応とは何だ一応とは」

フチ「もしかして明日子が弁当作ってあげてた相手…?」
尾形「?」
フチ「この子を嫁にもらってくれないかい」
明日「フ、フチ!!」

飲み物買ってくると言ってどっか行く明日子
フチと二人きりになる尾形
アー…と言って肩をおさえるフチ
それに気付いて肩揉んでやる尾形

フチ「明日子はいつも楽しそうにお弁当作ってるんだよ」
尾形「……そうか」ふ、と笑う
フチ「…あの子が大人になったら嫁に貰ってくれるかい?」
尾形「……」(明日子『大切な友人だから』)←回想
  「…そいつは無理な話だ」
フチ「良い女(ひと)がいるのかい?」
尾形「……ああ、100年経っても忘れられない女が」
フチ「?」

その会話をこっそり立ち聞きしてた明日子
ちょっとびっくりした顔してる

帰りの車内
ちょっとぼーっとしながら先ほどの発言を考える明日子
(そうだよな…尾形は大人の男なんだしそりゃそういう女がいてもおかしくないか)

尾形「…明日子、家着いたぞ」
明日「はっ…ね、寝てたのか」
尾形「ああ、涎垂らしてイビキかいてたぜ」
明日「えっ!?な、なんだそれ!起こしてくれれば良かっただろ!!」
尾形「面白ぇ顔してたからな」
くっくっと笑ってからかう
むかつくのに笑ってる尾形の顔がなんか嬉しい明日子

車が去った後、笑顔が消えて先ほどの発言を反芻する
明日(……あまり良く聞こえなかったけど、忘れられない女がいるって言ってたどんな女なんだろう……)
明日(いつか尾形も杉元と同じように
 誰か知らない女と一緒になるんだろうか)
想像してみる
嫌な気分になる

#9


公園
尾形「明日子」
明日「な、何だ?」どきっ
尾形「やっぱり公園で会うのはやめよう」
明日「え!?」
尾形「さすがに…我慢の限界だ…」
   真冬に外で飯はキツいぜ」※12月
明日「た、確かにそうだな…」
尾形「仕事が終わったら俺がお前の家に行く。その方が時間を気にせずゆっくり会えるだろ」
明日「!」ぱぁっと顔をほころばせる
明日「あ…でも…」
尾形「?」
明日「お弁当…作ってやらないと尾形はまたコンビニ弁当漬けに…」
尾形「そうだ!お前の会社に毎日持って行ってやる!」
明日「それはやめろ」社会的な意味で

尾形「……社員食堂にでも行くようにする」
明日「で、でも……」←尾形にご飯を作りたい
尾形「……」
  「…晩飯」
明日「え?」
尾形「毎日カップ麺ってのも飽きてくるぜ」
明日「!」
明日「…んもぉ~~しょうがないなぁ~晩飯は私が作ってやる!本当に尾形は私がいないとダメだなっ」
尾形「ふ…」

尾形「よし、それじゃあ俺は仕事に戻る。
   また帰りに寄るから良い子で待ってな」

頭をぽんぽんと撫でる「こ、子供扱いするな!」「ははっ」

車で会社に帰る途中

(嘘を吐いてみっともなく己を曝け出しても
 杉元の代わりにすらなれなかったのに)
(…何かが欠けた人間の俺でも
 あの娘の心の穴を埋められるのか?)
でも、あの時触れた掌を想う

尾形(…今度はいつまであの娘の瞳に映っていられるかな…)

#10

尾形仕事中
いつの間にやら連絡先を交換している二人。

LINEが来ている
明日【尾形、今日はちゃんと来れそうか?】
尾形【いつも通りだ】
明日【わかった!家で待ってるから早く来いよ】

尾形「……」ちょっと微笑んでる
宇佐「あれ~~何ニヤけてんのキモッ!なになに彼女??」
尾形「…そういうんじゃねえ」
宇佐「あっゴメンキャバ嬢の営業?」
尾形「殺すぞ」
ヴァ「尾形さんに彼女…!?」フンフン←海外から来た凄腕プログラマーのヴァシリくん
尾形「引っ込んでろヴァシリ」違うっつってんだろ

菊田「えっ尾形、彼女いないのか?」
尾形「…」
宇佐「菊田部長~こいつ素人童貞なんですよ~」
尾形「黙ってろ宇佐美」
菊田「お前も良い年なんだしそろそろ彼女作って結婚したらどうだ。紹介するぞ」
尾形「余計なお世話です」
やり取りにハラハラしてる谷垣。

菊田と宇佐美とヴァシリにめちゃくちゃ根掘り葉掘り聞かれまくったが適当にあしらった尾形
尾形「ハァ……疲れた…」

廊下歩いてたら勇作殿とばったり会う。
勇作「…あ、兄さ…尾形さん」
尾形「……花沢さん」
勇作「この間は、その、失礼しました…気に障ってしまったようで…」
尾形「いえ…」
勇作「……あの、それでは失礼します」
気まずそうにすれ違う

尾形「…花沢さん」
勇作「は、はいっ」
尾形「今度飯…にでも行きますか」
勇作「えっ!?あっえっえっと、宜しいのですか!?」(壁に詰め寄る)
尾形「いえ…嫌なら…無理にとは…言いませんが…」(←既に後悔し始めている)
勇作「とととんでもありませんっ!嬉しいです!!兄様の方から誘って頂けるなんて…!」
LINE交換することになった
勇作「それではまた!」
ぶんぶん手を振る勇作さん

尾形「……ハァ。ヤキが回ったかな」

#11


明日「お前、弟がいたのか!全然知らなかったぞ
   話せて良かったじゃないか、いつ食事に行くんだ?」
尾形「……」
明日「どうしたんだ?浮かない顔だな」
尾形「何を話せば良いのかわからん」
明日「何って…兄弟なんだろ?」
尾形「勇作殿と俺は異母兄弟だ。勇作殿は花沢常務の本妻の子。俺は愛人の子だ。勇作殿はこの間まで俺の顔すら知らなかったはずだ」
明日「ならこれから知っていけばいい。
   大丈夫だ。母は違っても血の繋がった兄弟なら、きっとわかりあえる」
尾形「…血が繋がっているというだけで心まで繋がれるのなら
   親殺しなんて世の中で起きないんじゃねえのか」
明日「それは…血の繋がり以前の問題の話だろ。飛躍し過ぎだ」
尾形「飛躍なんてしてねえよ。血の繋がりなんて、その程度のモノだってことさ」
明日「…尾形は、家族が嫌いなのか?」
尾形「……わからない。だが、家族愛なんてものがもしあるのなら
   父は俺たちを捨てなかっただろう」
明日「……尾形」
尾形「…つまらん話をした。忘れろ」

明日(…私は尾形のことを何も知らないんだな)
  (……もっと知りたいな。尾形のこと…)

#12

仕事帰り。明日子の家。

ピンポーン
明日「尾形っ!」
笑顔で出てくる明日子
明日「晩御飯、もう出来てるぞ。一緒に食べよう」

~ご飯食べてちょっとダラダラタイム~
ちらっと時計を見る。22時。
明日子もうつらうつらしている

尾形「明日子、そろそろ帰るが…」
明日「……」
ぎゅっと袖を掴んでくる
尾形「おい。明日も学校だろ。さっさと風呂入って寝ろ」
明日「明日は休みだ」
尾形「…そうか」←土日の概念のバグった社畜
明日「……一人で寝るの嫌だ」
尾形「お前な…」
明日「そうだ!泊まっていけ、尾形」
尾形「ダメだ」
明日「なんで」
尾形「何でって…何するかわからんからな」
明日「…!!!?」
尾形「冗談だ。ガキに手ぇ出さねえよ
   明日も早いんだ」

尾形「それに男を簡単に家に泊めるもんじゃねえぜ」
明日「そうなのか?杉元は昔泊まっていった事があるぞ」
尾形「…」ピクッ
明日「アチャの葬式で、線香の寝ずの番を代わってくれたんだ。杉元は優しい男だからな。」
杉元の名前が出て若干イラッとする
尾形「…一つ教えておいてやる。
   家に男を泊めるってのはお前がどう思おうが相手にそういう意味だと捉えられちまうもんなんだ」
明日「そういう意味?」
尾形「たとえば…」
ぐっと押し倒される

尾形「こういう風に」

殴られるかなと思ってた尾形だが
見上げてくる明日子の頬が染まる
明日「あ…」
思ったのと違う反応で驚き、すぐ身を引く尾形

尾形「…と、いうワケだ。わかったか」 
明日「う、うん…」
尾形「じゃあ俺は帰る。また明日な」
明日「うん…」

ガラガラ…パタン

ちょっと動揺してる尾形。
尾形を見送ったあとの明日子は掴まれた腕をそっと撫でて、顔を赤くしている

#13

会社。尾形仕事帰り。
尾形【今から行く】
明日【了解!スタンプ】
尾形(……いつも通りだな…)

事務の女の子が尾形のデスクに来る
事務「あの…尾形さん」
尾形「はい」
事務「えっと、あのこれ…旅行のお土産なんですけど」
尾形「ああ…どうも」
事務員の女の子はお菓子の袋を渡すとたたーっと走っていってしまう。
尾形「?」

~明日子の家に着いて~

明日「尾形!今日も仕事おつかれさま」

食事中

明日「あれ?お菓子か?」
尾形「ああ、事務員から貰った。食っていいぞ」
明日「やった!クッキーか?うまそうだ!」
カサッ
明日「ん?何か入って…」
紙を拾い上げて読むと明日子の顔色が変わる

尾形「明日子、何の菓子だそれ」
明日「えっ…えっと、クッキーの詰め合わせみたいだ。いるか?」
尾形「いらん。甘いものは好かん」
明日「そ、そっか、なら私が全部貰うな!」
尾形「ああ」
クシャっと紙を握りつぶす

後日。職場

事務「あの、尾形さん…」
   お菓子、いかがでしたか?」
尾形「あ?ああ…旨かったですよ」(明日子にあげたやつか…)
事務「そ、そうですか…」
尾形「…何か?」
事務「えっと、あの…手紙…は読んでいただけましたか…?」
尾形「…手紙?」
事務「はい。一緒に入れていたんですが…」
尾形「…?」

尾形「身に覚えが無いですね。用なら今聞きますが」
事務「あっ…い…いえ!す、すみませんでした…っ」泣きながら去っていく
尾形「…?…??」流石に困惑尾形。

宇佐「あれ~?フっちゃったのぉ?かわいそ~結構顔良かったのにもったいな~い」
尾形「何の話だ」
宇佐「あの子お前のこと明らかに好きだったじゃん」童貞喪失のチャンスだったのにね
尾形「は?」童貞じゃねえ
宇佐「えー!お前気付いて無かったのぉ!?」
尾形「そんな事一言も言われてねえぞ。何ならこの前初めて喋ったし。」
宇佐「いやいや…顔見りゃわかるでしょ」
尾形「顔なんぞ見とらん」
宇佐「ウワー…」ドン引き
   ちゃんと謝っときなよ。ヘンなウワサ流されちゃうかもよ~」
尾形「……」めんどくせえ…という顔

#14

明日(そう…か 尾形ってやっぱりモテるのか…
明日(なんとなく尾形は…私だけに優しいんじゃないかって…自惚れてた…)
同い年の女と並んで手をつないで歩いている、女にキスしようとする尾形を想像する
胸がズキッと痛む
くしゃっと紙を丸める

明日「………いやだ」
明日「誰にも…とられたくない……」

はっとする
明日(そうか…私は…)

尾形「明日子、この前の菓子袋の中に手紙入ってなかったか」
明日「……知らない」ぷい
尾形「わかりやすいなおい」

尾形「ほらさっさと出せ」
明日「……」しぶしぶ出す
カサ、と広げて読む。
「尾形主任のことが前から気になっていて…良かったらお食事に行きませんか?」と書かれていて
返事はこちらまでお願いします、とLINEの連絡先が書いてあった。

尾形「ハァ…」
明日「お前、その女と食事に行くのか?
   …付き合うのか?」
尾形「付き合わねえよ面倒くせえ。そもそもこの前初めて喋ったような女だぞ」
明日「…そうか」ほっ
尾形「……」←何だその反応…それじゃまるで…って感じの顔
明日「…手紙、隠しててすまない。その…何か言われたか?」
尾形「…気にするような事じゃねえよ」

尾形「それより…何で隠したりなんてしたんだ」
明日「…尾形が誰か知らない女と付き合うかもって思った時すごく嫌だった」

明日「その時気付いたんだ。おまえのこと、誰にも取られなくないって…
   私は…たぶん…お前のことが好きだ…」

明日「…尾形は…私の事、好きか…?」
尾形「……ああ」

明日「!じゃあ…」
尾形「でも一応世間体ってのがあるからな。周りには秘密にしとけよ」捕まっちまう
明日「そ、それくらいわかってる!」
尾形「ふ…」

尾形「それじゃ、今日はもう帰るぜ」
明日「あ…尾形…」
ふ…と笑って、おでこにキスする

尾形「じゃあな」
明日「…~~~っ」
真っ赤な顔を抑えてわ~~っとなっている明日子

尾形(……こんな、奇跡みたいな事もあるのか)
ちょっと現実を受け止めて切れて無い尾形

#15

日曜日。

ピンポーン
尾形「ん…?んん…」
寝ぼけている尾形

尾形「何だ?荷物頼んだっけか…?」それか茨城のバアチャンからか…?

尾形「はい…」ガチャリ
明日「おはよう、尾形!」

アシㇼパの姿を空目する
尾形「…ア、」
だが私服姿の明日子だった。
尾形「…明日子、お前その恰好…」
明日「え?ああ…えっと、似合わないか?」
尾形「……いや…似合ってる」
珍しく素直に褒められてへへ…と照れる明日子
ぐう…(腹の音)
明日「今起きたのか?しょうがないな。朝ご飯食べたか?」
寝起きで自分の家の前に明日子がいて完全に混乱している尾形
明日「よしキッチン借りるぞ。朝ご飯作ってやる」
尾形「おいちょっと待て」がしっと肩を掴む

尾形「何で当たり前みたいに俺の家知ってるんだ」
明日「何でって…何かあった時の為にって住所教えてくれてただろ」
尾形(そういえばそうだった…)
明日「それに…こ、恋人同士なんだから…急に来たっていいだろ…」

尾形「…それにしたって一言言ってから来いよ」すごいグッときてる尾形
明日「何度もLINEしたけど全然反応無かったから直接来てしまったんだ
 …迷惑だったか?」
不安そうに見上げてくる明日子の顔を見ると、何も言えなくて
くしゃくしゃと明日子の頭を撫でる「……はぁ」
尾形「……飯、作ってくれるんだろ」
明日「…ああ!」
嬉しそうに笑う明日子を見てると何もかもどうでもよくなってしまう。

~朝ごはん後~

明日「今日はこの後何か予定あるのか?」
尾形「ん…いや、特には」
明日「そうか」
尾形「…明日子は?何か予定あるのか」
明日「うん…その、フチのお見舞いに…」
尾形「……悪いのか」
明日「いや、ちょっと腰を痛めただけで全然大した事無いって。2週間くらいで退院出来るそうだ」
尾形「そうか」
明日「でも…いずれは介護とか…施設も考えた方がいいって、病院の人から…」
尾形「……」
尾形(……お前は、ここでも一人で背負ってるのか)
尾形「…俺も行く」
明日「えっ…良いのか?」
尾形「どうせバスか電車だろ?車出してやる」
明日「それは助かるけど…でもせっかくの休日に…」
尾形「変な気ぃ遣ってんじゃねえよ。彼氏には素直に甘えとけ」
明日「…!」
明日「そ、そっか…じゃあお言葉に甘えようかな」

車移動。病院到着。
フチの病室。ガララ…
明日「フチ!また来たぞ…あ、杉元!お見舞いに来てくれたのか」
杉元「明日子さん!言ってくれれば迎えに行った…のに…」
明日子の後ろに尾形の姿を見て絶句する杉元。

杉元「尾形…!?」
尾形(杉元…!!)

#16

ガッと思いっきり尾形のシャツ首を掴む
杉元「何でテメエがここにいるんだ!!」
「杉元お前…覚えてるのか」

明日「杉元!?何してるんだ!」

明日「大丈夫か?尾形」
尾形「ああ…大丈夫だ」
尾形に駆け寄って心配してる明日子を見て、尾形に対しスゴイ形相の杉元

ナース「ちょっと!病室で騒がないで下さい!」
杉元「あー…尾形、さん。ちょっと付き合ってくれないか」(目配せ)
尾形「…わかった」
明日「あ…っ私も…!」
尾形「お前はそこにいろ」
明日「でも…」
杉元「ごめん明日子さん、すぐ戻るから」
心配そうに見送る明日子

場所変わり。病院外。

杉元「…まさかお前と現代で再会するとはな」
尾形「そりゃこっちの台詞だ。前世の記憶がある奴が俺以外にいるとは…」
杉元、ガッと思いっきり尾形のシャツを掴む
杉元「…お前は、網走監獄でウイルクを撃ち殺し、
   アシㇼパさんを連れ去り、樺太では…殺そうとした」
  「今のアシㇼパさんはこのことを何も覚えちゃいない。だけど…俺だけはお前の罪を絶対に忘れねえ。」
  「今度はあの娘をどうするつもりだ 返答によっちゃ…」
尾形「何だよ、こっちでも保護者ヅラか?明日子の親でも恋人でもねえクセに」
杉元「テメエ…」
尾形「惚れた女と現世ではめでたく結ばれたんだろ?これ以上何が欲しいってんだ」
杉元「現代のアシㇼパさんも梅ちゃんも俺にとっては同じ位大事な人だ
 二人共こっちでは幸せになって欲しいんだ。それを…お前がまたブチ壊そうってんなら容赦しねえ」
尾形「同じくらい大事な人…ねえ」
杉元「あぁ?」
尾形「…俺には、あの娘しか無いのに」
杉元「…!」

向こうで聴いている明日子
明日「前世…網走監獄…ウイルク…アシㇼパ…」
網走の記憶が頭を掠める

カシャン、とスマホを落とす
明日「あっ…!」その鏡のヒビを見て樺太、流氷の記憶が頭を掠める

杉元・尾形「!」
明日子に聞かれていたことに気付く。
杉元「明日子さん…!いつからそこに…」
明日「あ……!」

明らかに狼狽した様子の明日子に歩み寄る尾形
尾形「明日子『アシリパ』…」(落ち着け、アシリパのシーンとダブる)
明日「…っあ、尾形…右目…私…」動揺した様子で尾形を見つめる明日子その表情を見て
全てを察する尾形。
明日子へ伸ばした手が空を切る
尾形「あーあ…」

尾形(……時間切れかな…)

#17

明日『杉元、尾形と二人にしてくれないか』
杉元『アシリパさん、でも…!』
明日『頼む。杉元…』
杉元『……わかった。でもせめて近くで待機してていいかな。何かあったら…すぐに呼んで』

無言で立ち尽くす二人。
尾形「……」
明日「……」

先に話し始めたのは明日子
明日「……尾形…久しぶりだな」
尾形「ああ…百年振りだな、"アシㇼパ"…」
明日「……お前は父を殺し、杉元も手に掛けようとした。
   私を騙して、銃口を向けた。
   お前のやった事は…絶対に許せない」
尾形「……」
明日「だけど…その罪は前世のお前のものだ。そして…あの時私が
   お前を……殺した事で全て終わった。
   もう…過去の事だ。今の私たちとは関係が無い」
尾形「…本当にそう思うか?
   前世の俺と今の俺は地続きの存在だ
   今でもその時の人格を保ち、同じ価値観のまま
   お前を殺す事に罪悪感も微塵も感じない人間だとして…
   それでもお前は…俺を赦せるのか?」
明日「…今のお前と、あの頃のお前は違う…
   だって、もう金塊なんて関係ない今の私に
   優しくする理由なんて無いじゃないか。
   なのに…お前は私の傍にいてくれた。
   どこにも行かないって…私を抱きしめてくれた」
尾形「……それは…」
明日「それにあの時も、お前は…私を殺せなかったじゃないか
   それどころか…自分で…!
   …ずっと忘れられなかった
   あの時の悲しげなお前の顔を…」
明日「ずっと話がしたかったんだ。
   お前があの時優しい言葉を掛けてくれた事は…
   全部、金塊の為だったのか
   本当に、ただそれだけだったのか…!」

尾形「……お前に優しくしていたのは全て金塊の暗号を聞き出す為だ。
   それだけだ。本当にただ、それだけの…筈、だった」
尾形「俺はいつの間にか…本当に…
   お前の心が欲しいと思うようになっていた」
尾形「……だが結局俺は杉元にはなれなかった。
   お前に拒絶されて…矢を突き付けられた瞬間、
   全部どうでも良くなっちまった」

尾形「手に入らないのなら…お前の心を罪で穢し、
   永遠に俺を刻み込みたかった」
尾形「そうして矢をつがえる度に、冬が来る度に、
   己の罪と共に俺を想ってくれるなら…
   お前の手に掛かっても良かった」
尾形「頭がおかしくなってたんだ…はは、全く、血は争えん…」
尾形「なあ、アシㇼパ…」

尾形「金塊も、アイヌの未来も、何もかも捨てて俺と逃げてくれと」
尾形「俺を愛してくれと」
尾形「ただ一言、言葉にしていれば何かが変わっていたか…?」

明日「…私は、愛する人たちの暮らす生活を、文化を、私達のカムイを守りたかった。
 だから…お前の想いを受け入れることは出来なかったと思う」

明日「だけど、今の私は…小蝶辺明日子だ
   "アシㇼパ"はアイヌとして生き、アイヌとしてあの時代で死んだ。
   産まれた時から和人として現代を生きてきた明日子(わたし)とは…
   もう、どうしようもなく別の人間の記憶だ」

明日「尾形…私たちは今を生きているんだ。
   その右目は…これからも過去の私を見つめ続けるのか?」

明日「私たちはもう流氷の先でもどこへでも行ける。
   私は…お前と行きたい。ただの明日子(わたし)として
   今度はお前の手を取って…未来を生きていきたい」

尾形「…もうどこにでも行けるってのに、よりにもよって俺を選ぶのか」
明日「そうだ。
   私はお前が良い。今ここにいる尾形百之助の傍にいたい」

尾形(…もしこの手を離さないでいてくれるなら…
   そんな未来があるのなら)

明日「行こう…尾形」

尾形(……もう二度と、この手を離してやれない)

明日子の手を取る尾形。

明日「私たちはいつも本当に欲しいものを選べずにいたな」
  「お前は自分の願いの為に、私はアイヌの未来の為に」
  「私たちはずっと…愛してくれ、と叫びたかっただけなのに…」

右眼の向こう側にいたアシㇼパが吹雪の中消えてゆく。
もう右眼にあの娘が映る事は無い。

明日「尾形…"アシㇼパ"はまだ…そこにいるのか?」
右眼に触れる。

尾形「いや…」
尾形「今は両眼とも、お前だけを見ている」

#18

時は飛んで、中学校の卒業式。

杉元、尾形を見ても普通にしてたが去り際に
杉元「おい!…明日子さん泣かせたら許さねえからな」
被っていない帽子をクイッと下ろす動作をする。
それだけですべてを察する尾形。
一瞬驚いた表情をするが、ふっと笑って自分も髪をかきあげる動作をする。
お互いそれだけで、もうすべてを理解して
振り返らずにお互いの人生には干渉しないという事で去ってゆく

卒業式後、桜の散る道をフチと明日子と尾形の勇作の4人で歩きながら
フチの車いすを尾形が押してる

明日「今日は卒業式、来てくれてありがとうな。フチも連れて来てくれて…
   二人共よく仕事休めたな」
勇作「明日子さんの一度きりの晴れ舞台ですから」

尾形「それにしてもまさか勇作殿があれ程までに涙もろいとは…」号泣してる勇作さん
勇作「す、すみません感動してしまって…」
勇作「でも兄様もちょっと涙ぐんでらっしゃいましたよね」
明日「え!そうなのか?」
尾形「ンなワケあるか」

明日「あ!蝶々だ!」
尾形「おい明日子!あまり遠くへ行くんじゃねえ」
勇作「兄様、変わりましょうか?」
尾形「ああ、ちょっと頼む」

フチ「尾形ニシパ」
尾形「ん?」
フチ「【あの子を嫁にもらってあげて】」
尾形「………」

尾形「おい明日子…」
追いかけた先、桜並木の下で佇んでる明日子。
その姿があまりにも美しく、あの時自分が観れなかった
大人になったのだとわかって胸が締め付けられる

尾形「明日子」
明日「尾形」
尾形「……時々、ふと思う。
 本当は全て夢で、本当の俺は今も線路の傍に横たわっているんじゃないか…と」
明日「ここにいるお前が全てだ。たとえ全てが夢だったとしても。」
明日「どうして前世の記憶が蘇ったんだろうって考えてたんだ。
 この世に意味の無い事なんてない。尾形が現代に降ろされたのには何か意味があるんだって」
明日「きっと尾形は私に会いにきてくれたんだ。そして…
   お前は幸せになるために、産まれてきたんだ」

明日「行こう、尾形」
尾形「…──ああ、行こう。明日子。」

あの時とは違い、桜の中で明日子と尾形は手を取って並んで歩く。
その時、あの冬から先に進めないと思っていた時間が動き出す。

そして、4人は並んで家路へと帰る。

end


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