最新戦法の事情【振り飛車編】 2023年まとめ 豪華版
どうも、あらきっぺです。久々に、このシリーズを再開したいと思います。
2023年は、あまり note が更新できませんでした。しかし、当然ながらプロ棋界の定跡はどんどん進歩しています。そこで今回の記事では、2023年において、プロ棋界の振り飛車はどういった情勢だったのか、ということをテーマにして、解説したいと思います。
なお、当記事の注意事項は、こちらをご覧くださいませ。
最新戦法の事情 振り飛車編 2023年まとめ
(2023.1/1~12/31)
調査対象局は728局。なお、それぞれの戦型の対局数や出現率は、下記の表の通りです。
それでは、戦型ごとに掘り下げて行きましょう。
◆先手中飛車◆
~全ての根源は後手超速~
71局出現。出現率は9.8%。なお、上半期が8.8%、下半期が10.5%です。
10局に一回指されるかどうかといった数字なので、盛んに指されているとは言い難いですね。3~4年前までは先手振り飛車における絶対的なエースでしたが、現環境では凋落の気配が漂う戦法でもあります。
先手中飛車の支持が下がった理由を端的に述べると、後手超速が手強いからです。この戦型の前提を、簡単にまとめておきましょう。
★前提1 桂跳ね優先型問題
後手超速には、☗6六銀型で対抗するのが一般的です。ただし、この形に組むと桂跳ね優先型にどう戦うのかという課題があります。
なお、桂跳ね優先型とは上図のように6一の金の移動よりも、右桂の活用を先に進める構想を指します。これは非常にアグレッシブな指し方であり、この局面になると先手中飛車は不本意な戦いを強いられます。なので、振り飛車側はこの局面を避けるケースが多いですね。
なお、桂跳ね優先型の優秀性については、以下の記事をご参照くださいませ。
なお、桂跳ね優先型が最も厄介たる部分は、ここで☗5四歩と突く手を強要されることにあります。先手中飛車にとって、この位はなるべく盤上に維持する方が望ましい(位が安定すれば、相手に速攻されにくくなるから)のですが、上図の局面になるとそれを許してもらえません。
これを踏まえると、振り飛車はもっと手厚く中央の位を固めれば良いのでは? という案が上がります。例えば、下図のような構想は一理ありますね。(第1図)
こうして☖7三桂に☗5六銀と上がれるようにしておけば、振り飛車は5筋の位が安定します。この局面になれば、先手中飛車は満足に戦うことが出来るでしょう。
ただし、この構想を実行するとなると、早めに☗4八銀と上がる必要が出てきます。すると、別の問題が生じるのですね。
★前提2 雁木穴熊問題
後手超速は、基本的には急戦志向の作戦です……が、場合によっては持久戦策にシフトチェンジできる柔軟性も併せ持っています。(第2図)
桂跳ね優先型では、囲いの銀を☖3三銀→☖4四銀と活用して攻撃力を高めていました。しかし、相手の作戦によっては、上図のように☖4四歩→☖4三銀と組む指し方が有力になるケースもあります。
このあと居飛車は、☖3三角→☖2二玉→☖3二金→☖1二香という要領で、囲いをどんどん強化します。そして、最終的には雁木穴熊を完成させることが狙いになります。(第3図)
これは駒組みの一例ですが、こうした状況になってしまうと、振り飛車は囲いの薄さがかなり際立ちます。加えて、効果的な仕掛けも難しいので、これは明らかに作戦負けと言えるでしょう。
この結果を招いた背景には、早期に☗4八銀と上がり、堅固な囲いを作りにくくなったことが一番の要因です。なので、桂跳ね優先型だけを回避すれば問題が解決される訳ではありません。
つまり話をまとめると、先手中飛車は後手超速に対して、
この二つを両立することが、現環境における前提となっています。
以上を踏まえて、本題に入りましょう。
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