CIRCUSプロデューサー紹介(島津智之氏)

上乃裏CIRCUSには、コンセプトに合わせた多彩なイベントやコンテンツを共につくってくれるプロデューサーたちがいます。メンバーの想いをご紹介します。

穂っぷ こども在宅&心身クリニック 院長
認定NPO法人NEXTEP 理事長・小児科医
島津 智之さん

自己紹介と現在の活動を教えて下さい。

小児科医師として2022年に開院し、重い障がいを抱えるお子さんに看護師やヘルパー、リハビリスタッフを派遣する訪問事業や通所事業所を運営しています。

私が医学部在学中の2000年に立ち上げた「NEXTEP」は当初、異業種交流的にいろんな人と出会うことがメインでした。しかし医療現場に出てみて、子どもたちのさまざまな困りごとに直面。子どもたちの問題は、病院の診察だけでは解決できないことがたくさんあります。貧困や虐待、不登校、最近では自殺やネット依存、ご家族が重い病気を患っているなど多岐にわたります。そうした子どもたちを支えるためには多方面からのサポートが必要です。それを「仕方ない」と諦めるのではなく、アイデアを出し合えば解決の糸口が見つかるんじゃないか? そう思いたち2009年にNPOとして法人化し。障がいや問題を抱える子どもたちに特化したネットワークを作り、医師や病院としてはできないことも含めてチームで取り組んできました。

私も含めたNEXTEP設立メンバーがようやく40代となり、県庁や市役所で役職についている者もいれば、会社を立ち上げた人もいて。一緒にできること、叶えられる範囲が広がってきました。

障がいや不登校のお子さんたちの就労支援としてチョコレートを製造・販売する「久遠チョコレート」を運営したり、病院からの受託で職員さん向けのお弁当作りや配達などを行ったり。また、農作物を一緒に育てて販売していますが、農園でとれたブルーベリーを使ったクラフトビールが賞をいただき、彼らのやり甲斐にも繋がっています。

ほかにも児童養護施設を出た若者たちを対象にしたシェハウス(男性専用)を運営し、社会的な自立に向けてサポートしています。彼らにとっては、いずれ私たちが必要なくなることが一番良い。そんな思いから、私たちにできることをやっています。

上乃裏CIRCUSに関わっている理由を教えてください

当時、医学部6年生だったときに「NEXTEP」の活動が新聞で取り上げられたとき、翌週の同じページに「南関町でまちづくりを頑張っている高校生がいる」掲載されていたのが荒木くんでした。

最初にメールで繋がり、実際に会ったのは彼が大学生になってから。当時「NEXTEP」では若い人たちがやりたいことをプレゼンし、仲間を集めて新たな取り組みを展開することを応援していました。荒木くんもプレゼンターの一人として積極的に登壇しては色々と仕掛けてくれましたし、一緒に実現させた取り組みもあります。

荒木くんと同じように、私も「アップフィールド」を通じて繋がりが生まれ、成長することができました。「アップフィールド」は同じ方向性を持った人やエネルギーの高い人同士が出会う場として機能し、そこから新しい動きが生まれていました。私も参加者として出向くこともあれば、異業種交流会や講演会を主催したこともあります。荒木くんとはお互いに忙しくなってしばらく疎遠でしたが、「アップフィールド」で久しぶりに再会し、その頃から交流を深めています。

「クリスマスマーケット熊本」の役員メンバーとなり、荒木くんを含めてメンバー5人は私より5歳ほど年下ですが、彼らと関わり始めて価値観が変わりました。たとえば物事を決めるとき、「多数決はナンセンス」だと。反対も含めて意見を出し合い、どうしてもやりたい人がいれば、残りの5人は全力で応援するという方法が斬新で。こんな考え方ができるってすごい。世間の常識にとらわれず、こうした価値観の方が世の中は幸せになるのではないかと感じました。自分とは異なる世代と一緒に何かをやることで、こうした気づきが生まれます。同じ職種や年代だと価値観が似ていたり、違う価値観を受け入れられなかったりしますが、まったく異なる人同士だとお互いにすんなり受け入れられたりします。


上乃裏CIRCUSから広がる可能性/期待すること、やりたいことは?

「上乃裏CIRCUS」は、垣根を超えた出会いを通じて新しいことが生まれる場所になるだろうと期待しています。私自身は次世代のチャレンジを一歩引いたところから応援し、彼らが困ったときに協力するスタンスです。

「上乃裏CIRCUS」を通じて若い人たちとの接点が生まれ、今すぐ何かできなくても5年後、10年後、成長した彼らと一緒にできることがあるかもしれません。とくに医療や福祉を目指す学生たちは人の役に立ちたいとの思いが強いでしょうから、私で役に立てることがあれば協力しますし、応援できることは結構あると思います。また、私の活動に興味がある若者と繋いでもらえれば、刺激にもなりますし。

これは私が学生時代、まわりの大人たちからしてもらっていたことでもあり、「自分がもらった恩は次の世代に返しなさい」とよく言われていました。当時はピンときませんでしたが、今になると分かります。次世代の若者たちに手を差し伸べることで、自分自身もチャージできることがあるでしょう。


上乃裏CIRCUS開業に向けてメッセージ

1回限りのイベントは打ち上げ花火のようなものですが、「上乃裏CIRCUS」のようにイベントを継続できる場所が誕生するのは、すごいこと。ここに来れば新たな出会いが生まれ、誰かに会えたり話を聞いてもらえたりしますから。これから10年、20年とこの場所が続くためにも、みんなが無理せずサポートしていくことが大切だと思います。

私自身、熊本地震の際に「NEXTEP」で行った被災者支援を高く評価され、全国で講演をしてきましたが、当時の活動が功を奏したのも、長年にわたり積み重ねてきた繋がりがあったから。地道な活動を続けていくことが大切です。

一人でやれることには限界があり、いずれはAIに取って代わられるでしょう。AIにできないことがあるとすれば、チームプレーを発揮してお互いの苦手分野を補い合うこと。人と人との繋がりが、より大事になっていくと思います。この「上乃裏CIRCUS」がワンチームとなって緩やかに繋がり、いくつものネットワークが広がっていく場所になればと願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?