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セコリグだなんて蔑まずに、もっとみんなマイクロワームを活用していこうよって話

少しでもブラックバス釣りの経験がある方なら「セコリグ」という言葉に耳覚えがあるハズです! だいたい全長3インチ以下の小さなワームを使ったリグ(仕掛け)のことですね。皆がみんなそうだとは申しませんが、多くのバサーの間には「ワームよりプラグで釣る方がエライ」「サイズが大きくて動きが派手なルアーで釣るほどエライ」「ボトムより水面で釣る方がエライ」という価値観が浸透しています。すなわち、同じサイズのバスであっても2インチヤマセンコーのドロップショットリグをズル引きして釣るより、オリジナルザラスプークのドッグウォークで釣る方が価値が高いと判断されるんですね。

▲このバスは33cmしかないけれど、ビッグバドで釣れた時点でエラい……はず。

でもそれって、冷静に考えたらかなりおかしい判断基準ですよ。そもそもルアーフィッシングのリグ(仕掛け)は魚を騙して釣ろうとするものである以上、何であれ本来的にセコいものじゃないでしょうか。それに、狙う魚が常に小さいベイトばかりを捕食しているという蓋然性が担保されない以上、マイクロワーム=生き餌にそっくりだから釣れて当たり前、なんて考え方は論理的でないはずです。もちろん、実際の餌とかけ離れた外見・アクションのルアーで魚が釣れてしまう、ということが面白いのは間違いありませんが……そればかりがルアーフィッシングの楽しみではありませんぜ!

なんだか感情的になってしまいましたが、筆者が本稿で主張したいのは表題の通り「マイクロワームを適切に使用できれば、ルアーフィッシングはもっと楽しくなるよ」ということなんです。具体的にいうと、一定以上釣りの経験がある人であればボウズ率を大幅に下げられるハズです。

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▲筆者愛用のマイクロワームいろいろ。最上段の「2インチヤマセンコー」と、下から2番目の「スクリューテールグラブ」の2種は特にお気に入り。この記事を書いていて今さら思ったけれど、スクリューテールグラブはいったいどこが"グラブ"なんだ……?

さて、メバルやアジなどマイクロワームの使用が前提となっている釣りはともかくとして、日本ではブラックバスやトラウト族を狙うのにマイクロワームを使用することに対して、なぜネガティブな印象を持たれるのでしょうか? それは単純にマイクロワームが「釣れすぎる」=「ゲーム性が低い」ルアーだと捉えられているからではないかと推察できます。

▲大分県某所で釣れたシマイサキ。ライトソルトゲームはマイクロワームの使用が定番の釣りだ。

事実、ほとんどのフィールドにおいてマイクロワームはその場に魚が居さえすれば、圧倒的な釣果を得られます。ブラックバスであれば河口湖や霞ヶ浦水系など、極端に強いフィッシングプレッシャーにさらされている場所を除いてほとんどの場所で(そのような水系においてさえ、〜20cm程度のまだあまり釣り人の悪意にさらされていない個体は果敢にアタックしてきますが)ルアーを目にした魚に「とりあえず口を使わせる」ことが可能です。アピール力は低く釣りのテンポも遅いため、魚を探す釣りには向かないものの、いると分かっている魚を狙うのには非常に高い効果を発揮します。


▲埼玉県幸手市で営業していた管理釣り場「吉羽園」にて、2インチヤマセンコーで釣れたバス。

ただし、釣れるサイズを選ぶことはほとんど不可能です。その場に魚が「いれば食ってくる」ということは、すなわちもっとも警戒心の低い若魚が先に釣れてしまい、老練なビッグフィッシュは他の魚が釣られる様子を見て逃げ出してしまうということでもあります。大きい魚が一匹だけ居着いている場所を特定できるのならば話は別ですが、それは至難の技でしょう。

じゃあ狙う魚のサイズが初めからわかっているサイトフィッシングにおいてはマイクロワームが最強なのか? というと、必ずしもそうとはいえません。トレブルフックを装着したプラグよりも、フッキング率は下がるからです。明らかに釣り人の存在に気づいていない魚が相手であれば、サスペンドミノーやマイクロクランクベイトなど、ミスバイトの少ないルアーを選ぶ方がランディングできる確率は高いと思います。見切られにくいトップウォータープラグなんかもアリですね。

▲ブラックバスの外道で釣れたチャネルキャットフィッシュ。これはこれで嬉しい!

すなわち、マイクロワームが真価を発揮するのは以下のような状況の釣り場です。

・魚影が濃い
・警戒心が強い、もしくは食い気に乏しい魚が多い
・魚が居着いている場所が分かりやすい

一般的なサイズのプラグや、大きなグラブなどアピール力の高いルアーだけを持ち込んでいたら高確率でボウズになってしまうような釣り場からも、とりあえずの一匹をひねり出すことができる。それがマイクロワームの魅力なのです! 

ここで筆者がマイクロワームの食わせ力に救われたエピソードをお話ししたいと思います。コロナ禍が世界を包み込む直前の2019年〜2020年、私は年越しをマレーシアのクアラルンプールで迎えました。2018年末に生まれて初めてのアマゾン釣行を経験して以来、ツクナレ(ピーコックバス)への欲求が高まり続けていた私は、渡航前からクアラルンプール近郊の釣り場を案内するフィッシングガイドに連絡を取り「ぜひマレーシアのツクナレを釣りたい」と伝えていました(ツクナレは年間を通じて気温が高い国の多くに移殖されています)。その際にオススメルアーやフライも聞いていたのですが、ガイドに勧められたルアーは意外にも小さなサイズのものが多く、フィッシングプレッシャーの高さが予感されました。

朝焼けに煙るマレーシアはセランゴール州の人造湖・プチョンプリマ湖。

現地に渡航する前は、なんだかんだいっても生物資源豊かな南国だし豪快なトップウォーターフィッシングが楽しめるのだろう……などと考えていました。が、実際に竿を出してみると、ほどなくしてその見通しが甘かったことに気がつかされます。見える範囲にたくさんのツクナレがライズしているにも関わらず、みんな私の投げるルアーをことごとくガン無視するのですから! 一度だけ、50mm強のリップレスジャークベイトにバイトはありましたが乗せられず、なんの結果も得られないまま午前中の釣りを終えるのか――などとマイナス思考に陥っていたそのとき。2.5inスクリューテールグラブのジグヘッドリグに確かなバイトがありました! 上がってきたのはわずか20cm強のおチビさんでしたが、初めて訪れたフィールド、それも滅多に行けない異国での一匹は値千金です。その後も昼食休憩を挟みつつ夕方になるまで釣りを続けて合計4匹、最大魚は34cmという厳しい結果でしたが、釣果の全てはスクリューテールグラブによるものでした。トップウォーター、クランクベイト、果てはトーマン狙いのフロッグまで様々なルアーを投げ続けていたのに……。夕マズメ、ガイド氏にオススメされたのは重めのキャロライナリグをボトムまで沈めてゆっくりズル引きし、アタリがあったら即アワセ(しないと一瞬で口を離されるので)という非常に繊細な釣りでしたので、ツクナレ釣りの派手なイメージに惑わされて大型プラグばかりを持ち込んでいたらボウズも十分にあり得たでしょう。2in台のワームとジグヘッド、小さくて太軸のシングルフック、いく種類かのオモリ。全て合わせて70gにも満たないそれらを荷物の片隅に放り込んでおいたことで、遠方での貴重な時間がキャスティング練習から「魚釣り」になったのです!

▲プチョンプリマ湖のツクナレ・ボーボレータ。日本の有名レイク並みのスレっぷりだったが、陽気なガイド氏のおかげで楽しく釣りができた。

それに、プラグをグリグリ巻いたりジャーキングしたりすることに"動"の豪快な楽しさがあるなら、指先の感覚を研ぎ澄まし、糸の動きを注視してワームをコントロールするのは"静"の繊細な面白みがあります。前者ばかりではルアーフィッシングの魅力を100%味わっているとは言い切れないでしょう。

シンプルなメッセージを伝えるのにずいぶんと長く書き連ねてしまいましたが、本記事をご覧の読者諸兄姉におかれましては、ぜひ「私の必釣マイクロワーム」をみつけて頂きたいです! 世界中の、とりわけ日本とアメリカのルアーメーカーからは創意工夫に満ちたマイクロワームが多数発売されていますから。まずはおなじみ、ゲーリーヤマモトの「2インチヤマセンコー」や、エコギア「グラスミノーSS」あたりを試してみてはいかがでしょうか? きっと新たな釣りの楽しみを見つけられるハズですよ!

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