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【徹底比較】用途別・レンズ保護フィルターの選び方【2021年最新版】

レンズを買ったときにお勧めされ、セットでレンズ保護フィルターを買った人も多いのではないでしょうか。人によっては逆光耐性などを気にされて敢えて保護フィルターを付けていない人もいるはずです。

保護フィルターとはレンズの前面に付けるガラスの板のことで、これを付けることにより「フィルター前面を傷や汚れから守って」くれます。

その実、ただのガラスの板ではありますが、意外とこの分野の商品は進化が激しく、2~3年おきには各社から競うように改良新型が発表され、その度に「最高峰」が入れ替わる激戦地帯だったりします。

現在では海外のメーカーも参戦してさらに競争が激しくなっていますが、その分、「一体どのフィルターを買えばいいの?」と悩める人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、これまでさまざまなフィルターを使ってきた私の独断と偏見で保護フィルターの選び方やお勧めのフィルターを紹介していきたいと思います。


1.保護フィルターの選び方

最高峰対決の前に、まずは保護フィルターについて色々と基礎的なこと含めてまとめてみたいと思います。まず、保護フィルターを選ぶにあたり、重要な性能(スペック)とはなんでしょうか?

保護フィルターは単にレンズを保護することだけが仕事ではもちろんありません。私個人のこだわりとして、

光路上を通る製品は信頼できる物を選ぶ

というのがあります。光路とはその字のごとく、「光が通る道」です。最終的にはその光はセンサーやフィルムに到着し、そこで画像となって私たちの目の前に現れてくるわけです。つまり、光路上に何か余計な障害物があれば、その分ダイレクトに画質の劣化として現れてきてしまうということになります。そのため、私は上記のようなポリシーでカメラグッズを選んでいる、というわけです。

保護フィルターを選ぶ際の公式は以下の通りです。

保護フィルターの性能
=コーティング性能+ガラスの質+防汚コーティング(清掃の容易さ)

1つずつ見ていきましょう。

(1)コーティング性能

これはスペック表で言うところの「反射率」と置き換えることもできるかもしれません。現行の低反射率のフィルタートップ3は下記の通りです。

1位:ニコン ARCREST / ケンコー ZXII : 0.1%
3位:マルミ EXUS Lens Protect Mark II : 0.2%

反射率が低いほど、「余計な物がないのと同じ」ということなので、もちろん有利であり、具体的にはゴーストやフレアが生じにくくなるメリットがあります。

ただ、後述しますが反射率はもちろん重要なものの、実はそれ以上に「フィルターの持つ低い反射率をきちんと活かせる状態にあるか」が重要だったりしますので、購入後のメンテナンスはしっかり行いましょう。


(2)ガラスの質

では上記トップ3ではガラスについてどのように述べているのでしょうか?

■ニコン ARCREST

・ARCRESTは、素材選びから光学性能を追求し、NIKKORレンズにも採用している高品質な光学ガラスを採用しています。優れた透明性・均質性を持つ光学ガラスです。
・新たに開発した高精度な研磨技術により、干渉縞が1本以下という極めて高い平面精度を実現。ガラス面の高精度な平面性により入射光の波面乱れを極限まで抑えており、レンズ本来の描写力を損ないません。
・ニコンが独自に開発した新たなマウント技術「フラットプレーンシステム」では、ガラスとフレームの間に特殊なエラストマ-を挿入してマウント。ガラスにかかる応力を大幅に軽減し、マウントによる歪みを最小限に抑えています。
(出所:https://www.nikon-image.com/sp/arcrest/

■ケンコー ZXII

・透明度の高い光学ガラスを使用。高純度の原料を溶解してつくられており、可視域から赤外域に至る広い波長域で高い透過率を持っています。
・ZX[ゼクロス]シリーズはガラスに負荷を与えない画期的な構造の「フローティングフレームシステム」を世界で初めて採用しました。
・新たに発売するZXⅡプロテクターは高精度研磨によりガラス単体で干渉縞(ニュートンリング)1本以下という高い平面精度を実現。またフローティングフレームシステムに使用している特殊弾性緩衝剤と枠の構造を見直し、さらなるガラスの平面性と超高解像を実現しました。
(出所:https://www.kenko-tokina.co.jp/imaging/filter/protect/zxii_protector.html

■マルミ EXUS Lens Protect Mark II

・マルミはハイグレードなEXUSやSOLIDにも光学ガラスを使っていないという点が気になったが、透過率測定の機材とデータを見せてもらって認識が改まった。
・光学ガラス(BK7)もEXUSに使われているガラス(B270)も、マルミでコーティングした後はほとんど透過率に差が出ていなかった。厳密に見ると光学ガラスのほうが脈理(内部の不均質)が少ないなどの強みはあるが、コストまで考えるとB270がとてもよい選択なのだという。
(出所:https://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/special/1088916.html


つまり、ニコンとケンコーは光学ガラスを採用するも、実はマルミは光学ガラスではないようです。ただ、その違いはかなり厳密に見ても分からないくらいの違いとのことで、あまり神経質にならなくてもよさそうです。実際に使用している実感としても、最高峰同士の比較で言えば認識できるほどの差は見受けられません。


(3)防汚コーティング(清掃の容易さ)

最後に、防汚コーティングですが、これがなぜ必要かというと、意外と単純です。せっかく反射率が低い商品を買ったとしても、「フィルターの表面が汚れていたら全く意味がない」ということになります。

誤解を承知で言いきってしまえば、保護フィルターだからといってフィルター表面が汚れたままの状態で使っていたら、そこら辺の安物フィルターと大して性能の違いはありません

つまり、防汚コーティングは単に清掃の容易さのためにあるのではなく、フィルターを理想的な状態に保ち、反射防止性能を低下させないためにある、ということです。

では上記トップ3のフィルターの防汚コーティング対応状況はどうなっているのでしょうか?

・ニコン ARCREST:撥水+撥油
・ケンコー ZXII:撥水+撥油
・マルミ EXUS Lens Protect Mark II:撥水+防汚+帯電防止

ちなみに各社で用語が統一されていなくて分かりづらいですが、
撥油コーティング=防汚コーティング
と思って問題ありません。

マルミだけが帯電防止コーティングが付いており、埃等が付きづらくなっているのが他との違いでしょうか。いずれにせよ全てのフィルターが「清掃の容易さ」についてきちんと考慮されているようで、どれを選んでも大きな問題はなさそうです。


2.その他の考慮すべきポイント

(1)強化ガラスの採用有無

「強化ガラス」とはなんぞや?という方は下記の映像を見ると良くわかりますが、まぁ漢字そのままで、「めっちゃ割れにくいガラス」を使った保護フィルターになります。

ぶっちゃけこれほどの強い衝撃がフィルターだけを狙ってくることはなく、あるとすればレンズと一緒に強い衝撃がかかるでしょうから、フィルターが無事でもレンズは無事ではなさそうな気がしますが、それでも保険としては良いこともあるかもしれません。

よく落としたりぶつけたりしがちな方は検討してみましょう。


(2)コーティング強度について

私の場合、フィルターの清掃において、普段や旅行先では主にハクバの「レンズペン」を使っています。

それで落ちない汚れや、旅先から帰ってきたタイミング(=とても汚れている状態)ではCURAのクリーナーとペーパーを使って大掃除しています。

先日もいつものようにフィルターに汚れが付いていたのでレンズペンで綺麗にしようと思ったら…

コーティング剥がれ

まさかのコーティング剥がれ…
最近の保護フィルターは反射率を極限まで良くするために特殊コーティング等も使っているはずで、以前の単純なマルチコーティングほどの耐久性ではなくなっている=乱暴な扱いができない、という感覚を持っています。それが現実となってしまったのが上記の悲しみ…

これもせっかくなので人柱になって実験してみよう、と思って色々レンズペンで拭いてみたのですが、ニコンARCREST、マルミEXUS(I型)共にコーティング剥がれに見舞われました。そしてZXIIについても、コーティング剥がれまではいかないまでも落ちないレベルの拭きムラ(?)が残る事態に。。

さらに、同じレンズペンでもコーティングが剥がれるものとそうでないものがあるようで、もしかしたらレンズペンの使い過ぎによる寿命が来ていたのかも?という可能性も。ある程度使ったらカーボン部分は新品に交換したほうが良いかもしれませんね。

ただ、新品であってもZXIIのように拭きムラは残る可能性が高く、やはり最近のフィルターはかなり繊細な取り扱いが要求されるようです。。ここまで気を遣わなければならないとなると、もはや保護フィルターなんて要らない…という方向に私の気持ちも少し傾きかかっているところです(笑)

ちなみにニコンARCRESTは具体的な数字でコーティングの耐久性を謳っていたりもします。しかし今回、レンズペンではそんなハードにこすっていないので、この辺りは私もまだ正確なところはなんとも言えない状態です。。

優れた撥水・撥油コートを採用
試験荷重200gで1000回以上の拭き取りテスト※に合格した高い耐久性も備えています。


3.保護フィルターの歴史をざっと振り返る

2017年6月にニコンからARCRESTが発売されるまでは2大フィルターメーカーだったKenkoとMarumiが最高峰の座を競い、新商品を出してはその座を奪い、奪い返しの大忙しでしたが、ニコンによってその対決に終止符が打たれました。

というのも、これまでの保護フィルターは反射率が各社とも0.3%で留まっており、それ以外の付加価値である「撥水・撥油コーティング」、「帯電防止コーティング」、「強化ガラス」…等々、それ以外の価値を追求し始めたからです。

そんな中登場したのがニコンARCREST。

NIKKORレンズにも採用している高品質な光学ガラスを採用

と大々的に謳いつつ、反射率は驚異の「0.1%」を実現して登場してきました。なお、ARCRESTには帯電防止コーティングが施されていませんが、化学的なコーティングは反射率に影響を与えるとのことで敢えて採用しなかったようです。

そして遅れること約4年。

ついにケンコーでも前作ZX(ゼクロス)をさらに進化させたZXIIにより「反射率0.1%」を達成。ARCRESTと並ぶ2大巨頭に躍り出たのです。

なお、これまでの2大巨頭であったもう一方のマルミはというと、「帯電防止コーティング」は維持したまま、こちらも0.3%の壁を破り、反射率を0.2%に改善させた商品「EXUS Lens Protect Mark II」を2019年10月に販売開始しています。


4.結局どのフィルターを選べばいいのか?

色々書いてきましたが、結局どのフィルターを選べばいいのでしょうか?

最終的には、

厳しい環境で撮影しない一般のカメラマンは、あまり難しく考えずに予算の範囲内で購入してください

としか言いようがない訳ですが、それでは何の役にも立たないnoteになってしまうので、独断と偏見により4パターンに分けて、それぞれのカテゴリーでお勧めの商品を厳選して2つだけ取り上げてみたいと思います。

値段感の比較にもなるよう、全て77mmのフィルターをAmazonから探してみたので、ご活用ください!


(1)厳しい環境で使い、画質に妥協したくない方

上記で紹介した通り、反射率が最高峰のトップ3の中から選びましょう。


その中でもやはりお勧めの2点を挙げるとしたら、反射率が0.1%のARCRESTとZXII。ただ、これらの最高級フィルターであっても細かく見れば多少画質は劣化します。それも、超広角レンズであればその影響はなおさらです。

このあたりの詳細、そしてARCRESTとZXIIの比較記事については次の記事でまとめてみたいと思います。

そんなわけで、レンズの描写力を最大限に発揮したい方や強烈な逆光といった過酷な環境でばかり撮るような方は「保護フィルターを付けない」ことを選ぶことをおすすめします。

そもそもよく考えてみると、上記でも書いた通り「フィルターが汚れていたら本来のフィルターの性能を発揮できない」のであり、そうだとすると「保護フィルターなのに繊細な取り扱いを要求される」という一見矛盾した状態になってしまうのです。

それであれば最初から保護フィルターなど付けず、レンズの前面をきちんとメンテナンスしてあげたほうが二度手間にならなくてよいじゃん、と。しかも上記のような高級フィルターは1枚1万円くらいします。それを定期的に買い換えるくらいなら、レンズ前面のガラスをもう少し長いスパンで、レンズのオーバーホールのタイミング等で必要に応じて交換したほうが結局安上がりという可能性もあるわけです。


(2)レンズを落としたりぶつけたりしがちなおっちょこちょいな方

低反射率+防汚コーティングに加え、強化ガラスを使った商品にしましょう。そうなるとマルミEXUS Solid」ケンコー「Zeta Quint」の二択になります。
違いは、EXUS Solidは反射率0.2%ですが、Zeta Quintは0.3%なので、より画質を重視される方はEXUS Solidがお勧めです。

そして、強化ガラス製品はやはり高い…!
まさかのARCRESTよりも高い値段にびっくり仰天です。

ただ、ガラスの強度でいえば7倍の強度のある強化ガラスを採用しており、ハンマーで叩いても割れないほどの強力さを兼ね備えています。それでいて反射率も0.2%と限りなく低く、もちろんマルミならではの撥水・防汚・帯電防止コーティングも施されているので、まさにフルスペックの保護フィルターとなります。


(3)それほど厳しい環境で使わない or 画質よりコスパ重視の方

ここまでくると一気にお財布にも優しくなり、商品の選択肢も増えます。
そして、価格が半分近くになったからと言って性能が半分になるということは勿論なく、たかだか反射率が0.1%とか0.2%違うくらいで、ほとんどの方にはその影響を体験することは難しいレベルかと思われます。

ここで最も重要なのは「撥水・撥油コーティング」の有無です。

上記で書いたとおり、反射率よりも何よりも、コスパを求める人であればなおさら防汚性能については重視して選択しましょう。


■コスパ重視の中でも高い質を求めたい方

▽ケンコー:PRO1D LotusII
【反射率0.2%+撥水・撥油コーティング】
Lotusの他、MarkIIに生まれ変わったzxのI型もまだ併売されています。LotusIIとの違いですが、zxではフローティングフレームシステムが採用されています。これによりガラスの面精度(どれだけ平らか)が変わってきており、ZXでは特に周辺画質への悪影響を最小限に抑えることが可能となっております。一方でコーティングについては旧世代のZRコートのため、LotusIIの方が反射率が良いという逆転現象が起きています。

もちろんどちらも撥水・撥油コーティングありです。


▽ハクバ:ULTIMA WR
【反射率0.3%+撥水・防汚コーティング】
→末尾に「WR」が付いているAmazon限定品です。それ以外のノーマルな「ULTIMA」は撥水・防汚コーティングが付いていないのでご注意ください。


■よりコストパフォーマンスを優先されたい方

▽マルミ:EXUSレンズプロテクト
【反射率0.3%+撥水・防汚・帯電防止コーティング】

こちら、マルミのEXUSの旧製品(1型)です。旧製品もまだ併売されており、その分コストパフォーマンスが非常に高くなっております。それでいて撥水・防汚・帯電防止とフルコーティングがされている優れもの!


▽ハクバ:XC-PRO
【反射率0.3%+撥水・防汚コーティング】

ULTIMA WRとの違いですが、ULTIMAがコーニング社製の光学ガラスを使っているのに対し、XC-PROではCarl Zeissで有名なショット社のB270iウルトラホワイトガラスを使用しています。これは厳密な意味での光学ガラスではありません。ただ、実際に使用してみるとその差はほとんどなさそうなので、単に気分の問題かもしれません。
一方で、実用して見るとガラスの材質以上に気になるのが、清掃のしやすさです。防汚コーティングの割にとても拭きづらいので、細かい点できちんと(?)差別化されているようです。
もちろんその分他を凌駕する安さなので、厳しい天候に晒されるような撮影をされない方でコスパ重視の方にはとても良い商品かもしれません。


え、もっと安いフィルター見つけちゃったけど?

という方もいるかと思います。実際、これ以下の本当にびっくりするくらい安く売っているフィルターもたくさんあります。ただ、もしそこそこ良いレンズを使っていて、写真を趣味として楽しんでいる方であれば、そういう激安フィルターは使わないほうが良いです。それなら何も付けないで撮りましょう。百害あって一利なしです。。

もちろん、単に記録ができればいいんだ!でも売却時のことを考えて出来るだけ綺麗にしておきたいんだ!という方はなるべく安いレンズに安いフィルターを付けて使うのが良さそうです。


5.終わりに

いかがでしたでしょうか?
自分にピッタリのフィルターは見つかりそうでしょうか?

ここまでまとめてみたものの、結局「最強の保護フィルターはどれなの?」といったとき、ニコンARCRESTなのかケンコーZXIIなのかがわかりづらいかと思いますし、私自身もこの比較に最も関心があります。しかしケンコーのフラッグシップモデルZX(ゼクロス)の進化版(Mark II)は、2021年の3月に発売したばかりということもあってきちんと比較している記事を見つけることができませんでした。。

これは私自身が人柱になるしかない!

ということで、次回の記事では「レンズ保護フィルターの頂上決戦!」をテーマに、現在最高峰のニコンARCRESTとケンコーZXIIを比較してみようと思います。

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