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極貧詩 66            よみがえる光景-母の教え4

「母ちゃん、俺ん家何でこんなに貧乏なん?」
「貧乏イヤか?」
「うん、イヤだ」
「何でだい?」
「うんめえモノ食えねえし、いいモノ着れねえし」
「そんなことかい?」

「上ん家のショーちゃん知ってるだんべ?」
「うん知ってる、金持ちん家の人だ」
「うん、うんめえモノ食ってたんべなあ」
「そうだな」
「いいモノ着てたよなあ」
「うん、みんなに見せびらかしてたよ」

「ショーちゃんはなあ、警察に捕まったんだって」
「ええ!何で?」
「人ん家の金盗んだんだって」
「何で?」
「持ってる人はもっともっと欲しがるんだよ」
「そうか、わかんねえなあ」

母、俺の顔ジッと見る
いつになく厳しい顔
静かに話し出す

「人はな、お天道様の通り道を歩かなきゃダメだ」
「あれが欲しい、これが欲しいはダメだ」
「道を外れたら戻ってこれねえ」
「金がうんとありゃあいいってもんじゃねえ」
「食いモノがうんとありゃあいいってわけじゃねえ」
「着るモノなんか関係ねえ」

生き方を背中で教える母
苦労を厭わず重労働
人の陰口一切言わず
陰口言われても笑い飛ばす
「そんななあ、せやあねえよ」

お天道様の通り道歩け
いつも頭をよぎる言葉だ


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